2018年9月18日火曜日

大江定期能・夜能《松風》

2018年9月17日(月)17時30分~20時30分 大江能楽堂

ススキの生け花と照明がアレンジされた秋らしいディスプレイ
 仕舞《江野島》  宮本茂樹
  《大江山》  鷲尾世志子
   地謡 大江信行 橋本忠樹 大江広祐 大江泰正

狂言《寝音曲》太郎冠者 小笠原匡 主人 山本豪一  
   後見 泉慎也

仕舞《通小町》  片山九郎右衛門
  《松虫クセ》 大江又三郎
   地謡 牧野和夫 古橋正邦 味方玄 河村和晃

能《松風》シテ 大江信行 ツレ 大江広祐
   ワキ 宝生欣哉 アイ 小笠原匡
   杉市和 吉阪一郎 河村大
   後見 大江又三郎 宮本茂樹
   地謡 片山九郎右衛門 河村和重 古橋正邦 味方玄
      橋本忠樹 大江泰正 河村和晃 鷲尾世志子

押小路通の軒先に咲いた、夕顔ではなく、たぶん、夜顔

秋の夜にぴったりの《松風》、よかった!
ノスタルジックな大江能楽堂には夜能が似合う。
月イチくらいでこういう舞台をじっくり拝見できたら最高だなあ。


仕舞《江野島》
5月の《女郎花》のツレが印象的だった宮本茂樹さん。細身長身の方で、この仕舞《江野島》も見事だった。京都観世にはまだまだ良い役者さんがたくさんいらっしゃる。これからも注目していこう。


狂言《寝音曲》
小笠原匡さんはやっぱりうまいなー。酒杯に見立てた桶蓋になみなみと酒を注がれたときの、手にした液体の重量感、ゴクッと飲んでお酒が喉にしみわたるのを待ってから、またゴクッと飲むあの感じ。
寝たままうたう謡や、山本豪一さんとの絶妙な間。《海士》の小舞の見事さ。
磨かれて黒光りする芸を観る満足感。


仕舞《通小町》
男の孤独の美しさを、熟成したワインのようにじっくりと舞いあげた九郎右衛門さんの《通小町》。
この三連休、九郎右衛門さんの舞を連続して拝見したけれど、この仕舞がいちばん心に響いた。無駄な力が抜けて抑制の利いた、深みのある、落ち着いた舞台。ふだんの稽古のときの仕舞そのままを拝見できた気がする。



能《松風》
長身の大江兄弟による松風村雨。
通常のシテ・ツレ以上に息が合っていて、合わせ鏡のようなタイミングで同じ型をするところなど、分身そのもの。分身といっても、ツレはあくまでツレの分をわきまえていて、本物の影のようにシテに寄り添っている。

真ノ一声で登場した二人は、白い水衣に身を包み、どこか巫女めいた雰囲気をまとう。どんなに愛おしくとも、もう会えない人は、いつしか神のような存在となり、二人はその神と結婚した巫女たちに見える。
同じ姉妹でも、ツレはどこまでもイノセントで愛らしく、シテの増の面は、この能楽堂独特の雰囲気と夜の照明のなかで深い陰翳を浮かべながら、妖しく狂乱する。

見どころはたくさんあったけれど、とりわけ素晴らしかったのが二人の連吟だ。
今まで聴いたシテ・ツレの連吟の中でも五本の指に入るほど美しく、恋しい哀調を帯びている。

三役・地謡ともに素晴らしく、ワキの欣哉さんが二人の姉妹から過去の思いを引き出しつつ狂乱へと誘い、熟練のお囃子がある時は潮騒のように、ある時は松風のように、この舞台を彩っていく。

最後は、しみじみとした余韻。

帰りの夜道を明るい半月が照らしていた。
余韻に浸りながら、秋の夜道を歩く幸せ。




御所八幡宮


心惹かれるレトロな窓


押小路通の銭湯






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