宝生流舞囃子《加茂》石黒空
高村裕 成田奏 森山泰幸 澤田晃良
地謡 藤井秋雅 辰巳大二郎 川瀬隆士 上野能寛
喜多流舞囃子《箙》高林昌司
山村友子 清水和音 柿原孝則
地謡 友枝雄太郎 谷友矩 友枝真也 狩野祐一
観世流能《半蔀》シテ 樹下千慧
ワキ野口琢弘 岡本宏懇
貞光智宣 岡本はる奈 山本寿弥
後見 味方玄 河村和貴
地謡 分林道治 橋本忠樹 大江信行
梅田嘉宏 河村浩太郎 大江広祐
観世流舞囃子《菊慈童》浦田親良
杉信太朗 清水和音 亀井洋祐 姥浦理紗
地謡 寺澤拓海 上野雄介 齊藤信輔 山本麗晃
〈休憩〉
大蔵流狂言《土筆》小西玲央 中川力哉
高安流連吟《鵜飼》原陸 有松遼一 岡充
和泉流小舞《名取川》上杉啓太
大蔵流小舞《宇治の晒》茂山虎真
大蔵流小舞《吉の葉》茂山竜正
大蔵流小舞《景清》井口竜也
観世流独吟《田村クセ》西野翠舟
〈休憩〉
金春流舞囃子《花月》金春飛翔
高村裕 鳥山直也 柿原孝則
地謡 野村雅 本田布由樹 政木哲司 鎌田氏勝
観世流舞囃子《春栄》大江広祐
杉信太朗 吉阪倫平 河村凛太郎
地謡 河村和貴 橋本忠樹 大江信行 梅田嘉宏
金剛流舞囃子《三輪》惣明貞助
藤田貴寛 鳥山直也 森山泰幸 澤田晃良
地謡 宇高竜成 宇高徳成 山田伊純
辻剛史 向井弘記
観世流能《春日竜人》大槻裕一
ワキ 喜多雅人 村瀬慧 矢野昌平 アイ 山本善之
山本友子 成田奏 河村裕一郎 中田一葉
後見 赤松禎友 山本博通
地謡 寺澤幸祐 上野雄介 齊藤信輔
寺澤拓海 浦田親良 山本麗晃
三年ぶりの東京公演。
ふだんなかなか拝見できない関西勢が多く、しかも、レベルが高い!
夫の転勤が解けたら関西に帰る予定だから(いつになるかは不明だけど)楽しみが増えてうれしい。
さて、初番から観る予定だったのですが、この日は片山家追善能の一般発売日で電話がなかなか繋がらず、宝生流の《加茂》を見逃してしまいました。
最後のほうを少しだけ拝見したのですが、舞・囃子・地謡とも良かったので残念。
無事チケット予約後、見所に入ると、脇正面最後列に大槻文蔵師が端然と座っていらっしゃってびっくり。
佇まいが普通の人と、ぜっんぜん、違う!
(三年前の東京公演の時も九郎右衛門さんがロビーを何気なく歩いていらっしゃって、その後姿があまりにも美しく、今でもあの理想的な姿勢と歩き方を思い出してイメージトレーニングしているくらい。)
喜多流舞囃子《箙》高林昌司
シテは演者唯一の色紋付。
薄い抹茶ミルク地の色紋付が涼し気で、数日前の素謡・仕舞の会を思い出す。
高林昌司さんは細身のせいか、塩津圭介さんを彷彿させる。
二本の扇を用い、一本をシューッと後ろに滑らせるところや飛び返りもシャープに決まっていた。
清水和音さんと柿原孝則さんの大小鼓の組み合わせが良かった。
観世流能《半蔀》樹下千慧
樹下さんは舞囃子・仕舞を何度か拝見しているが、能のシテでは初めて。
まず、前シテの出と幕離れがいい。
花の精とも亡霊ともつかない謎めいた感じが漂っていて、唐織姿が楚々とした可憐な風情。
テノールっぽい甘い美声も夕顔の雰囲気と合っている。
面遣いも巧みで、後場に「さらばと思ひ夕顔の」で半蔀のなかで脇正を向くときの表情に愁いを含んだ陰翳があり、趣き深かった。
大鼓方(大倉流)の山本寿弥さんは山本哲也さんの御子息なのかな?
斜め上から力いっぱい鼓を叩きつけるような打ち方が山本哲也さんにも似ているし、もっといえば大倉正之助さんにも似ている(とても痛そう)。
貞光智宣さんは、後見に杉市和さんがついていらしゃったので、師事されているのだろうか。ところどころに光るものがある方なので、注目していきたい。
岡本はる奈さんの小鼓は安定していて、音色がいつもながら小気味よい。
観世流舞囃子《菊慈童》浦田親良
シテは間の取り方がよく、
美しい型のイメージ(腕の微妙な角度や体軸の線)をしっかり持っておられて、それをひとつひとつご自分で体現されているから、舞姿もきれい。
大蔵流狂言《土筆》小西玲央 中川力哉
ほのぼのした狂言。
(長丁場なので、連吟・小舞・独吟は休憩してました……。)
金春流舞囃子《花月》金春飛翔
お囃子は東京勢で固めているから、息があっている。
鳥山さんはもう中堅の貫禄。
すでに相当の舞台経験を積んでいる柿原孝則さんも堂々とした演奏。
金春らしい和やかな謡。シテの舞も良かった。
観世流舞囃子《春栄》大江広祐
ビックリした!
吉阪倫平さんって、吉阪一郎さんの御子息でしょうか。
まだ小中学生くらいだと思うのですが、巧いのなんのって!!
掛け声が声変わりしていない声なのをのぞけば、間合いからコミから打音の響きから、何から何まで、まったくふつうに大人のプロとして通用するレベル!
まさに天才子方囃子方さんです。
河村凛太郎さんもたぶんそっくりだから、河村大さんの御子息ですね。
今回、ジュニアたちの活躍・成長が目覚ましい!
(杉信太朗さんはご自身の会まで成功させた方だから言うに及ばず。)
シテは大江又三郎さんの御子息。日本一ノッポな能楽師・信行さんの弟さんだけあってこちらも上背があり、スッキリしたかっこいい男舞で、謡もGood!
地謡もわたしの好みの地謡で、凄く良かったです。
金剛流舞囃子《三輪》惣明貞助
《三輪》はわたしが謡える数少ない曲のひとつなのですが、観世流と節が別の曲のように全然違う!
面白いのは、囃子の大小太鼓がすべて観世流だったこと。
めったにない組み合わせ。
(とはいえ、どこがどう違うのか、この組み合わせだとどうなるのか、ということはわからなかったけれど。)
太鼓の澤田さんは高音の掛け声がきれいに出ていて、このまま何としても、お師匠様めざして突き進んでほしい。
シテは謡も舞もうまく、舞金剛の名にふさわしい芳醇な舞でした。
観世流能《春日竜人》大槻裕一
シテはまだ十代(もうすぐハタチ)なんですね。
それでこの巧さとは……。
前場は老いた宮守なのですが、下居姿が美しい。
そしてなんといっても、本領発揮は後シテ・龍神。
キレがあるのはもちろんですが、若いのに緻密で精確。粗雑なところがない。
飛び安座の跳躍も見事。
ちょっと足を傷めたのかな?という場面もあったけれど、最後まで緩みのない舞台。
三年ちょっとの観能歴のなかで、この年齢でここまでの完成度の舞台を観たのは初めて。
小鼓の成田奏さんは掛け声も音色もますます味わいが増し、将来がとても楽しみな方。
藤田流の山本友子さんもうまい方ですね。
河村裕一郎さんは、河村眞之介さんの御子息でしょうか?(違ってたらごめんなさい。)
間狂言の山本善之さんの熱演も爽やか。
もちろん、東京の国立能楽堂もそうだけれど、養成会の研究発表会をひんぱんに開いて、後進の育成に力を尽くしている京阪能楽界の並みならぬ熱意が着実に実を結んでいるのを、身をもって感じた素晴らしい会でした!