2018年11月3日土曜日

桂離宮その4~書院群から月波楼

2018年10月27日(土)11時~12時 桂離宮
向って左から、新御殿、楽器の間、中書院、古書院と、雁行型に連なる。
参観コースの最後は、書院群エリア。
残念ながら、書院内部には入れず、外から眺めるだけ。

ブルーノ・タウトが「泣きたくなるほど美しい」と評した月見台からの庭園の眺めも、「これ以上単純で、しかもこれ以上優雅であることは、まったく不可能である」と言い表した書院内部の設えも、見ることができなかった……。


新御殿とその庭園
一見、なんの変哲もない芝生が広がる新御殿の庭園。
常人は見過ごしがちな、この庭園の凡庸さについて、タウトは興味深いコメントを残している。

「新書院の御居間に面する御庭には、簡素な芝生と樹木とがあるだけで、造園術らしいものは何ひとつ見られない。(中略)いう迄もなく日本の天皇におかせられてこそ、このような簡素極まりなき芸術を成就せられ得たのである。」

この平凡な芝生と樹木だけの簡素な庭園は、日本の天皇だからこそ実現した芸術だと彼は言う(この離宮を創建したのは八条宮智仁親王なので、天皇ではなく皇族というべきだけど)。

「私は桂離宮のこの部分ほど『造園術』の皆無な日本庭園を未だ嘗つて見たことがない。これに反して御庭の複雑な部分は、丁度これと反対の側にあって、新書院の御居間からはまったく見られない。こういう巧緻な庭園はそれみずからの言葉をもっている。その言葉はしかし、日常生活には調子が高すぎるのである。」(ブルーノ・タウト『忘れられた日本』篠田英雄編訳)

刺激や飾り気のない素朴さ・簡素さのなかにある、かけがえのない安らぎ。
皇族だからこそ渇望する日常の安らぎを具現化したのが、この凡常な芝生の庭だというタウトの指摘。
日本の一般庶民にはなかなか気づくことのできない、鋭い洞察と視点だと思う。


古書院から突き出た縁台(月見台)
観月の名所・下桂の地。
「月の桂」を味わうために設けられた月見台からの眺め。
ここから、秋の月夜に庭を望むと素敵だろうなあ。

古書院あたりから眺める庭園
静かな水面に月を映して逍遥する夜。
月と戯れ、音楽を奏でる幻想的な夜、風雅の極みではないですか。
智仁親王は、近世の源融のような人だったのかもしれない。

月波楼
観月のための茶室・月波楼。
「月波楼」の名は、白楽天の西湖詩「月點波心一顆珠」に由来する。
池を西湖に見立てて月を愛でる趣向。


月波楼の天井
船底の形に組まれた、化粧屋根裏の竹の垂木。
茶室そのものが、池に浮かぶ舟をイメージしてつくられたのかもしれない。


月波楼内部
紅葉柄の襖が、優雅で瀟洒な印象。



雪見灯篭


桂離宮の灯籠は、個性的でユニークなものばかり。

三光灯籠
笠と火袋だけの背の低い三光灯籠。
火袋の丸型、四角型、三日月型の窓は、日、月、星をあらわしている。



キリシタン燈籠

三角型灯籠
いろんな三角形が組み合わされていた三角型灯籠。


ガイドさんや警固の人も、仙洞御所とは違ってフレンドリーだったし、桂離宮は、季節を変えて訪れても、毎回いろんな発見がある場所だと思う。









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