2018年11月20日火曜日

曽和博朗三回忌追善会~舞囃子・居囃子など

2018年11月17日(土)11時~19時45分 金剛能楽堂

舞囃子《当麻》片山九郎右衛門
  森田保美 曽和伊喜夫 柿原孝則 小寺佐七
  地謡 青木道喜 橋本光史 田茂井廣道

独調《知章ロンギ》  田茂井廣道×成田奏
  《鐘ノ段》    河村和重×大村華由
  《龍田》     武田文志×丹下紀香
  《梅枝・楽アト》 橋本光史×森貴史
  《錦木キリ》   宇髙通成×古田知英
  《高野物狂・道行》林宗一郎×成田達志

居囃子《三輪・白式神神楽》
   杉市和 社中の方 柿原崇志 前川光長
   地謡 片山九郎右衛門 青木道喜 橋本光史 武田文志

舞囃子《玉鬘》林宗一郎
   左鴻泰弘 社中の方 柿原孝則
   地謡 河村和重 橋本光史 田茂井廣道 武田文志

番外一調《江口》   大江又三郎×曽和正博
    《鵜飼》   種田道一×小寺佐七
    《女郎花》  金剛龍謹×幸正佳
    《花筐クルイ》武田伊左×曽和鼓童

能《融・遊曲・思立ノ出・金剛返》シテ 金剛永謹
   ワキ 小林努 アイ 茂山千作
   杉市和 社中の方 谷口正壽 前川光長
   後見 宇髙通成 向井弘記 惣明貞助
   地謡 種田道一 松野恭憲 金剛龍謹 種田和雄
      谷口雅彦 今井克紀 重本昌也 田中敏文

ほか、囃子、一調、独調など多数


開演前、ロビーの遺影に御焼香をさせていただく。追善会にふさわしい番組と内容で、社中の方々の演奏もとても素晴らしかった。


まずは、九郎右衛門さんの舞囃子《当麻》から。
今年2月の能《当麻》は拝見できず、痛恨の極みだったから、この舞囃子はうれしい。
小鼓は故・博朗師のお孫さんの伊喜夫さん、大鼓は柿原孝則さんで、九郎右衛門さんとの組み合わせも珍しい。

舞囃子とはいえ早舞の箇所だけでなく、出端から始まるので、ワキなしの半能・袴能のような形式。
九郎右衛門さんの中将姫は「天上の存在」としての菩薩感が強く、天冠や装束をつけていなくても、光り輝く後光に包まれているように見える。

とりわけ、独特の節回しの「慈悲加祐……乱るなよ~」のところでは、力強く、気高い声で衆生を教え導く、荘厳な崇高美が全身から立ち昇り、思わず、手を合わせたくなるような神々しさだ。

早舞は、女体による法味の舞のため黄鐘早舞。とくに追善の会の初番で出される時は、盤渉調は敬遠すべきものだという。
近日、同じシテによる《海士》を拝見する予定なので、《当麻》の早舞とどう違うのか、比較しながら味わってみようと思う。


居囃子《三輪・白式神神楽》
九郎右衛門さんの白式神神楽の舞囃子地謡を聴くのは、これで3度目くらい。
毎回あらたな感動を覚えるが、そのなかでもこの日の白式は最高だった!

白式神神楽が描き出す、常世の闇の世界、静寂、神々の嘆き、慟哭を、謡と囃子だけでこれほどドラマティックに再現できるなんて!

ちょうど一年前に、国立能楽堂で九郎右衛門さんの能《三輪・白式神神楽》を観た時と同じくらいに、胸が痙攣するほどブルブル震えて、謡の魅力、その素晴らしさにあらためて気づかされた。

こんなふうに心を揺さぶる謡に出逢うと、能楽はバリアフリーだと強く思う。
たとえ感覚の一部に障害があっても、能楽の音の世界の豊かさ、その表現力の高さを存分に発揮した一流の舞台に触れると、能の醍醐味を味わうことができるのではないだろうか。


小鼓の社中の方も熟練者で、特にスリ拍子の箇所で、小鼓→太鼓→大鼓の順番で一粒ずつ打っていくところの漆黒の闇の表現が見事だった。


このあと、九郎右衛門さんは大急ぎで大槻能楽堂へ。
瞬間移動しないと間に合わないようなスケジュールなのに、いったいどうやって移動されたのだろう……?


舞囃子《玉鬘》
玉鬘のシンボルでもある左肩に垂らした一筋の髪。
舞囃子だからもちろん髪は垂らしていないけれど、艶やかな黒髪と千々に乱れる思い、心の狂乱、漠然とした苦しみが、カケリのなかに凝縮して表現されていて、やっぱり宗一郎さんの舞囃子はいいな。



ほかにも見どころ・聴きどころの多い番組で書きたいことは山ほどあるけれど、長くなるので、能《融・遊曲・思立之出・金剛返》の感想は次の記事で。






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