2018年11月1日木曜日

桂離宮その1~御幸門から天の橋立

2018年10月27日(土)11時~12時 桂離宮
洲浜から天の橋立越しに茶室を望む
17世紀に八条宮初代・智仁親王によって創建された桂離宮。
先日観た仙洞御所とは、なにもかもが格段に違っていた!

「無作為」を演出する巧みな作為。「人工」と「自然」の境界を可能な限り曖昧にする緻密な計算。「有機的」な自然素材に溶け込む、「無機的」な幾何学模様。そして、その美を維持しつづけるための、途方もない時間、手間ひま、コスト。

どこを向いても、巧緻な作庭術と貴人好みの美意識に埋め尽くされていて、ただただ圧倒された。
貴人が思い描いた理想郷の実現。究極の虚構の美。
参観時間は1時間ほど。まだまだ物足りなくて、立ち去り難かった。1日じゅう滞在してもぜんぜん足りないくらい。


以下、参観ルートの順に回想していきます。
御幸道
↑参観者入口から入って、真っ先に目に飛び込んできた光景。
御幸門から中門に至る石畳。
一直線に伸びる石畳に対して、橋を少し斜めに架けることで奥行きが強調されている。




霰こぼし
↑御幸道の石畳に敷き詰められた青黒い小石は、霰(あられ)に見立てて「霰こぼし」と呼ばれる。
歩きやすいように、小石の表面が1つずつ平らに削られている。
足にソフトな石畳。貴人へのさりげなくも、きめ細かな配慮。




御幸門(表門)
↑智仁親王が後水尾上皇をお迎えするために造営した茅葺切妻屋根の御幸門。
(現在の御幸門は18世紀に再建されたもので、当初の門とは形が異なる。)

円柱にはアベマキ(コルククヌギ)の樹皮付き丸太が使われ、その名の通り、触るとコルクのように柔らかい。
画像右下の番号札を乗せた切り石は、上皇の御輿を置くための「御輿台」。




外腰掛
↑松琴亭で茶事が催される時に使われた待合。
山荘らしく、前も横も吹き流しにした茅葺寄棟造。
丸太柱にクヌギの自然木を無造作に配しているように見えながら、幹の太さや曲がり具合などを考慮して巧みに配置されている。



外腰掛けに腰掛けたときの視界。眼の前には蘇鉄山が。
↑外腰掛に腰を掛けた位置から見ると、このように蘇鉄山によって視界が遮られ、庭園が見えないようになっている。
林立する蘇鉄は、いわば「天然の衝立」として機能する。

亭主が合図を鳴らして、一同が茶室へと進むとき、一気に視界が開けて、眼の前に庭園の美景が広がる仕掛け━━ドラマティックな演出だ。




外腰掛の庇の下に打たれた延段
自然石や色石、切り石などをさまざまに組み合わせた延段。
形や配色の妙が美しい。
御輿寄の「真の延段」に対して「行の延段」といわれる見どころの1つ。




外腰掛から茶室・松琴亭に向う途中で出会う風景
外腰掛を立ち、石橋を渡って右に折れると、パッと視界が開け、天の橋立の風景が目に飛び込んでくる。
茶会への期待が、否応なく高まる瞬間。





洲浜の先端に立つ石燈籠は、岬の灯台に見立てたもの。
天の橋立の向こうには、茶室・松琴亭が見える。



桂離宮その2~松琴亭につづく









0 件のコメント:

コメントを投稿