2016年10月28日金曜日

高千穂の夜神楽~岩戸三番・御神体

2016年10月25日(火) 13時30分~17時20分 国立能楽堂
高千穂の夜神楽~式三番・住吉からのつづき
地謡座にお囃子、囃子座に祭壇が据えられている。
祭壇の前には岩戸の作り物。
内注連は一重で、天蓋がないのが日之影神楽との大きな違い。

高千穂の夜神楽(三田井地区神楽)
(1)神颪 (2)杉登 (3)住吉
(4)手力雄(5)鈿女 (6)戸取 (7)御神体



第Ⅱ部は岩戸神話にもとづく岩戸四番のうちの三番と、豊穣神楽「御神体」が上演された。
いずれも神楽面を使用した舞なので、より神楽らしい雰囲気に。
橋掛りや脇正面があるおかげで、ホールと比べて舞台との一体感も高まった。


(4)手力雄

(4)手力雄(たぢからお)
能《絵馬》などでもお馴染みの手力雄。
ここでは、採物に岩戸幣(いわとび)と鈴を持ち、天照大神が天岩屋戸のどこに隠れているかを探る舞を舞う。

天・水をあらわす青(緑)の山冠と、地・火をあらわす横冠の岩戸幣を採物とすることから、天地を祓う神楽ともされている。



(5)鈿女

(5)鈿女
高千穂夜神楽の鈿女の舞は、しっとり嫋やか。
採物は、赤い鈿女幣と扇。

鈿女にかぎらず高千穂の夜神楽に登場する女体(女神)は、奥ゆかしく穏やかに微笑む女性ばかり。
九州男児の理想が投影されているのかも。



(6)戸取

(6)戸取(ととり)
天岩屋戸を取り払う舞。
同じ手力雄でも、(4)手力雄の白い神楽面とは異なり、ここでは赤い神楽面によって、岩戸を力一杯取り払う手力雄の紅潮した顔をあらわしている。

画像は襷をかけているところ。


岩戸を取り払った瞬間!




(7)御神体~能楽堂の空間を生かし、橋掛りを通って登場

(7)御神体
イザナギ・イナザミが舞う酒こし・国産みの舞。
夜中に舞われることから「目覚まし神楽」とも呼ばれるという。

男女和合をあらわす舞でもあり、五穀豊穣・夫婦円満・子授安産の祈願も込められている。

(7)御神体~新穀で酒を醸す舞



男女和合・夫婦円満
この後、イザナギ・イザナミが見所に降りて、観客に絡み、イザナギが浮気をして女性に抱きつくとイザナミがぷんぷん怒り出す。
でも最後は、二人が再び舞台に上がって仲好くじゃれ合い、めでたしめでたし。

こうした感染呪術(かまけわざ)によって、五穀豊穣・子孫繁栄が祈願される。



イザナギ・イザナミとも、相当古く良い面が使われていた。

イザナミの面は、おかめやお多福、乙(おと)と呼ばれる狂言面の原型と思われる。
おそらく鈿女にも転用されるのだろう。
福々しく、平穏で、じつに美しい面だった。
舞手も名品の面にふさわしく、とても可愛らしい癒し系のイザナミを演じていらっしゃった。
こういう女性になりたいものだ。

最後は演者が舞台から見所に降りて、紅白餅を観客に配って幸せのおすそ分け。
観客も、皆さん、幸せそうな笑顔。


神楽の魅力にますますはまりそう。
素敵な公演、ありがとうございました!





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