2016年10月13日木曜日

第三回 紀彰の会~《半蔀・立花供養》前場

2016年10月12日(水) 18時15分~21時15分  梅若能楽学院会館
第三回 紀彰の会「花の饗宴」~仕舞・連吟からのつづき

東田久美子氏による、凛とした精神性を感じさせる見事な立花
終演後、舞台に置いたままにしてくださったので撮影会状態に

能《半蔀・立花供養》シテ梅若紀彰
   ワキ森常好 アイ山本東次郎
   杉信太朗 大倉源次郎 亀井広忠
   後見 梅若長左衛門 山中迓晶 松山隆之
   地謡 梅若玄祥 松山隆雄 山崎正道 小田切康陽
      鷹尾章弘 鷹尾維教 角当直隆 川口晃平


《半蔀》は二か月前に同じ能楽堂で観世宗家のものを拝見したばかりだけれど、「立花供養」の小書つきということもあり、今まで観たどの《半蔀》とも違う、梅若紀彰独自の唯一無二の《半蔀》だった。

【前場】
〈立花供養の準備〉
誰もいない能舞台に、四方正面の立花が二本の竹棒に挟まれて運び込まれ、豪華な着物に身を包んだ東田久美子氏が切戸口から入場し、立花の前でお辞儀をして、花々の調整をする。

その後、タイミングよくお調べが始まり、上演開始となる。

囃子方は去年の広忠の会《定家》と同じメンバー。
杉信太朗さんは東西をまたにかけて御活躍されているだけあって、同じメンバーで聴いてみると上達の度合いがよくわかる。


「立花供養」の小書のためか、囃子事も異なり、最初は小鼓だけが床几に掛かり笛とともに演奏し、大鼓はしばらく床に座ったまま。
音取置鼓ではないけれど、宗教儀式としての立花供養の厳かさを感じさせる。


ワキの僧侶(森常好)は、アイの寺男(山本東次郎)に立花供養の用意を命じる。
この間、ワキは後見座にクツロギ、寺男が準備が終えると正中下居、「敬って申す」と立花供養を始め、ここから囃子が入る。


東次郎さんの水衣の紫の染めが素敵だった。
上質の染料が使われているのだろう。ああいう好い色は今ではなかなか出せない。



〈前シテの登場〉
驚いたのは、前後シテともに逆髪が使われていたこと!(*追記)
その意図は最後まで分からなかったけれど、とにかく斬新な《半蔀》だ。

この女面は黒目の部分が小さく、どこか精神の安定を欠くような危うさを秘めている。
どちらかというと、五条で源氏と出会ったころの可憐な夕顔というよりも、廃屋で物の怪に取り憑かれ半ば狂気に喘ぐ夕顔の印象だろうか。


正面を向くと物凄い美人で、斜めや横から見ると危険な女性。
美が刻々とうつろってゆく。
美そのものの本質をあらわすような逆髪の面。



装束は、日本刺繍講師の鍔本寛子氏が一年以上かけて制作したもの。
重厚な唐織とは違い、余白を生かした意匠で、黄昏を思わせる薄い渋金地に白い夕顔の花が大胆にあしらわれている。
着付けたとき唐織よりも、紀彰師の身体の線に優美に沿っていた。



〈中入→間狂言〉
通常の《半蔀》の間狂言の内容のほかにも、ワキがアイに問われて、立花供養の謂れ(「千草の花を集めて仏に供せしより始まれり」)を語る場面もある。

また、アイに五条のあたりに行くよう勧められて、ワキが「おことも後より来り候へ」と言い、アイが「心得申し候」と言うので、てっきりアイも後場に登場する珍しい演出なのかと思いきや、アイは通常通り間狂言が終わると切戸口から退場した。




紀彰の会~《半蔀・立花供養》後場につづく


*追記)
このように書いたものの使用面については自信がなくなってきました。
どなたかご存知の方がいらっしゃれば、ご教示いただければ幸いです。





 

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