2016年10月27日木曜日

高千穂の夜神楽~講演編

2016年10月25日(火) 13時30分~17時20分 国立能楽堂
 
講演
公演にあたって       小川直之(國學院大學教授)
生命燃える神楽の魅力 三隅治雄(芸能学会会長)
神楽の音楽について  小島美子(国立歴史民俗博物館名誉教授)


高千穂の夜神楽(三田井地区神楽)
(1)神颪 (2)杉登 (3)住吉
(4)手力雄(5)鈿女 (6)戸取 (7)御神体



先日の日之影神楽は高千穂の隣町の神楽だけれど、宮崎の神楽はほんとうにヴァラエティ豊か。印象がずいぶん違っていた。わたしが感じたおもな違いは;

日之影神楽は、「あばれ神楽」とも呼ばれるようにアクティブで激しい神楽が含まれ、終盤には囃子のテンポが速くなるにつれて、足を小刻みに踏むのが特徴的。

それに対して高千穂神楽は、より神事的でおごそか。能舞台という設定も神聖な印象を強めていた。

また、高千穂神楽では、高千穂神社所蔵の古くて良い面が使われており、なかには600~700年くらい前の古面もあった(天河神社・大弁財天社の能面よりも古い!)。

面の品格に合うように、舞手も腰をしっかり入れて舞うので、舞自体が美しく、より洗練された印象。重要無形民俗文化財としての矜持も感じられた。


【三隅治雄先生の講演】
「かぐら」は神の魂が宿る場所「神座(かみくら)」がなまって「かぐら」と称され、神楽の「神」の字からしめすへんを取ったのが「申楽」だという。

『申楽談儀』にも、「遊楽の道は一切物真似なりと云へども、申楽とは神楽なれば、舞歌二曲をもって本風とすべし」とあり、また、高千穂神楽に式三番とわれる三番の演目があることからも、神楽と申楽(能楽)との強い関係性がうかがえる。
(能の詞章にも「神楽」という言葉がよく出てきますものね。小書にもあるし。)


また、神楽の舞手がもつ採物(扇、太刀、幣など)自体が神の依り代でもある。

生命が枯れ、魂が疲れる11月~2月の時期に、神楽のなかで人が仮面をつけて神となり、神とともに舞い、神とともに酒を飲み、神と人との魂の交流を行うことで、神から新たな生命(いのち)をいただき、新しい年が誕生し、衰えた生命が再生する。

これを神話化して舞歌にしたものが天岩屋戸の神楽である。


――という内容が三隅先生のお話。御歳88歳の先生も神楽を長年見続けたおかげでお元気だそう。

ヨーロッパのミトラ神の祭り(冬至の日に行われた太陽神の祭り)やキリスト降誕際(ミトラ祭りの後身)にあたるのが、高千穂の夜神楽なのかも、と思いながら聞いていた。



【小川直之先生のお話】
高千穂系神楽の特徴は、演目に岩戸五番をもっていること。
そして吉田神道の影響を受け、ミコト付けといって演者に命(みこと)名をつけるのが習わし。
五穀豊穣を願う豊饒神楽があるのも特色。

いっぽう、その南にある椎葉系神楽では、吉田神道の影響はなく、神仏混淆の古形をとどめている。



小島美子先生のお話:神楽の音楽について】
太鼓のスタイルの変遷のお話が面白かった(太鼓好きなので嬉しい!)。

最も素朴な太鼓である「枠なし締太鼓」から、くさびを入れて締める「くさび締太鼓」、さらに現在ひろく使われている「鋲留太鼓長胴型」へと変化した。

従来は横打ちがメインだったが、林英哲が鋲留太鼓長胴型の正面打ち(正対構え打法)を発見し、これが一般に瞬く間に広まったという。

高千穂神楽で使われるのは、胴一木造り・二枚皮の「枠付き締太鼓長胴型」で、こちらは鋲留太鼓と比べて、メンテナンスが大変。

また、能楽や歌舞伎で使用される「枠付締太鼓短胴型」が神楽に取り入れられたのは、近世に島根県の佐太神能で導入されたのが初めてという。
つまり、島根・石見などの中国地方の神楽はさまざまに改変されており、神楽の古形を残しているのは九州地方(宮崎)の神楽のほうであるというのが、小島先生の見解だった。

たしかに、中国地方の大蛇伝説にもとづく神楽は、スモークを焚いたり、レーザー光線を使ったりするなどの派手な演出で、スーパー歌舞伎ならぬスーパー神楽的要素があるのかもしれない。

高千穂神楽の囃子の編成
篠笛、枠付締太鼓横打ち+縁打ち、枠付締太鼓胴打ち(ガタ打ち)、
そして小型のシンバルのような胴鈸子(どびょうし)が太鼓に結びつけられている

高千穂町のマスコットキャラクター「うずめちゃん」


高千穂の夜神楽~式三番・住吉につづく

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