ここは、いわゆる旧赤線地帯。
いにしえの遊郭建築が今も残る「五条楽園」(七条新地)です。
2010年に京都府警による一斉摘発があり、それ以降、御茶屋・置屋が休業しているということですが、逆にいうと、ごく最近までこうした建物が現役で稼働していたんですね。ちょっとオドロキ。
なかには、それらしき店が今でも闇営業でもしてそうな雰囲気のある場所も……アブナイ界隈に足を踏み入れたようで、わくわくします。
タイル張りの外壁やステンドグラスの丸窓、瀟洒なデザインの格子や欄間など、昔のカフェー建築には独特の趣きがあります。
谷崎潤一郎の『痴人の愛』のナオミが女給として働いていたのも、こんな場所だったのでしょうか。
宿や 平岩 |
かつての遊郭「平岩楼」は、いまは「宿や 平岩」として、女性一人でも泊まれる宿泊施設になっています。
カラフルなタイルやペイントが、鍾馗さまとミスマッチしていて面白い。
高瀬川の畔にも色里の名残りが感じられて、どことなく艶っぽい。
欄干の源氏香図のデザインが、かつてこの橋を渡った遊女たちの源氏名と共鳴していて、設計者の美的センスが感じられます。
三友楼 |
それでも、これだけ意匠を凝らした風情のある建物を建てるなんて、当時の人々の美意識の高さがうかがえます。
「三友樓」の屋号 |
こうした遊郭が、源融の広大な六条河原院の邸宅跡に建てられていたんですね。
五条楽園最大のお茶屋とされる三友樓。
「空き家かな?」と思ったら、建物の奥のほうで灯りがほのかに見えます。
使われているみたいでよかった!
このあたりの遊郭建築も、年々取り壊されていると聞きます。
お茶屋「梅鉢」 |
なんとかリノベーションをして、どんな形であれ残っていてほしいものです。
ライティングが色っぽいけど、ここもゲストハウスか何かかな?
遊郭のシンボルの丸窓。
ここも旅館でしょうか。
サウナの梅湯 |
往時の五条楽園を舞台にした小説はないか探してみたのですが、意外となくて、唯一見つかったのが、花房観音という現代女性作家が書いた『楽園』という作品。読んでみたら、官能小説のような内容でした。
もっと谷崎や川端康成(『雪国』)のような情緒のある作品があるといいのだけれど、庶民のための色街だったから、文人・文化人はあまり通わなかったのでしょうか。
五條會館 |
本来はもっと大きな建物でしたが、駐車場をつくるため、北側部分(画像でいうと手前の部分)が切断され、白い壁で塞がれています。
老朽化が進んだことから、昨年(2018年)に入札物件となり、大手リノベーション会社によって買い取られたそうです。
現在、再生プロジェクトが進められている模様。
不動産再生活用事業を数多く手がけている会社だけに、この五條会館の趣きある建物の良さを生かしたリノベーションが行われることを期待しています。
よみがえれ、五條会館!
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