2019年9月1日日曜日

能楽チャリティ公演第2部《賀茂》《呼声》

2019年8月29日(木)ロームシアター京都

ナビゲーション 松井美樹

半能《賀茂》深野貴彦 
 樹下千慧 有松遼一 岡充
 左鴻泰弘 曽和鼓堂 井林久登 前川光範
 後見 深野新次郎 橋本擴三郎 塚本和雄
 地謡 武田邦弘 古橋正邦 越智隆之
         吉浪壽晃 橋本光史 吉田篤史
   橋本忠樹 松井美樹

狂言《呼声》茂山千五郎
 茂山茂 茂山逸平
 後見 島田洋海

能《善界・白頭》片山九郎右衛門
 ツレ浦部幸裕 アイ井口竜也
 ワキ小林努 有松遼一
 森田保美 林吉兵衛 河村大 前川光範
 後見 青木道喜 味方玄 梅田嘉宏
 地謡 浦田保浩 浦田保親  吉浪壽晃
    分林道治 味方團 松野浩行
    河村和貴 谷弘之助



チャリティ公演夜の部は、能狂言の3番とも良かった! 前川光範さんの太鼓が2番あったのもうれしい。
こんなに素晴らしい公演がプロボノで運営・上演されているなんて……京都在籍の有志の方々と共催・協力された方々には毎回頭が下がります。こういう公演を続けていくのは、ほんとうに大変なことだと思う。こちらにとっても微力ながらチャリティに参加できる良い機会。ご出演された方々、共催・協力された方々、ありがとうございました!



半能《賀茂》深野貴彦 
能《小鍛冶》と舞囃子《融クツロギ》を観た時から、私のなかの「うまい人リスト」に入っていた深野貴彦さん。この日の《賀茂》も期待以上でした。

以前も書いたけれど、細身なのに足腰が強靭でしなやか。力強い身体に弾力性がある。
早笛でのシテの出の謡「我はこれ、王城を守る君臣の道、別雷の神なり」には、稲妻がビカビカッと放電するような響きがあり、次の足拍子はドカンッと落雷したような重厚さ。

「風雨随時の御空の雲居」でシテが上を向けば、黒雲たちこめる空が現れ、「光稲妻の稲葉の露にも」で、下居して袖をきれいに被く、この袖の扱いが見事。
「ほろほろとどろとどろと踏みとどろかす」の足拍子は、まさに雷がゴロゴロ轟くよう。低く重みのある振動がこちらの肚に響いてくる。

ツレの樹下さんの御祖神の舞は無垢で愛らしく、謡にも艶がある。

ワキの有松遼一さんはこの日、昼・夜合わせて3番の舞台にご出演されていて、夜の部でも《賀茂》のワキと《善界》のワキツレに登場。ハコビも姿勢もきれい。座っているあいだずっと高い緊張感を持続されていて、強い「気」の放射を感じさせる。注目したいワキ方さんだ。

最後は、シテが幕際で袖を被き、虚空に上る体で留拍子。
前川光範さんの掛け声にも上昇感があって、大満足の舞台でした。




狂言《呼声》
茂山千五郎さん、茂さん、逸平さんによる《呼声》。三人とも声量が大音量で聞き取りやすく、舞台展開がスピーディで現代的。
最後に三人で輪舞するところは、兄弟・従兄弟が子どものころに遊んだ姿そのまま。思わず釣り込まれてしまうような、何とも言えない可笑しみがあった。



能《善界・白頭》へつづく



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