2019年9月7日土曜日

京都駅ビル薪能2019~《巻絹》《寝音曲》

2019年9月1日(日)京都駅ビル室町小路広場
リハーサルのあと、開演前の様子
舞囃子《巻絹》大江信行
 森田保美 吉阪一郎 谷口正壽 前川光範
 地謡 浦田保親 分林道治 橋本光史
    田茂井廣道 橋本忠樹

狂言《寝音曲》茂山忠三郎 岡村宏惣
 後見 山本義之

能《融》片山九郎右衛門
 ワキ福王知登 アイ茂山忠三郎
 森田保美 吉阪一郎 谷口正壽 前川光範
 後見 青木道喜 梅田嘉宏
 地謡 古橋正邦 浦田保親 河村博重
        分林道治 橋本光史 田茂井廣道
        橋本忠樹 大江広祐



伊勢丹で買い物を済ませてから会場に着いてみると、京都駅ビル薪能の名物「公開リハーサル」がすでに始まっていた。
演者の方々が時おり笑顔を見せながら、なごやかな雰囲気で申し合わせが進んでゆく。シテの九郎右衛門さんはピッチリした黒い私服をお召しになっていて、舞の動きや身体の線が分かりやすく興味深い。

面白いのは、チャリティ能のときと同様、この京都駅ビルの舞台でも目印となる柱がないこと。

九郎右衛門さんは、1,2,3と、正中から舞台の縁までの歩数をさりげなく数えていらっしゃたが、それだけで、あれほど的確に舞台空間を把握できるものだろうか? 驚きである。
実際の《融》の舞台では、シテは、ステージの端ギリギリまで出て、汐汲みや盃の型をしたり、舞を舞ったりされていた。観ているほうがヒヤヒヤドキドキしたくらい。身体に特別なセンサーでもついているのだろうか。



舞囃子《巻絹》
昨年も書いたけれど、シテは面装束を着けているので、ワキの出ない半能みたいなもの。こういう大規模な舞台では面装束を着けたほうがだんぜん見栄えがするし、はじめて見る人にも「お能らしさ」をアピールできる。

シテの大江信行さんもリハーサルの時は私服で参加されていて、和装の時よりもさらに身体の細さ、背の高さが際立って見えた。それが《巻絹》ではスラリとした巫女姿に変身。このビフォー・アフターの違いが楽しめるのも、駅ビル薪能の醍醐味のひとつ。

面は十寸髪(増髪)だろうか。
眉間にしわを寄せたその顔は、まさに神懸ってトランス状態になった霊媒者そのもの。時間の都合上、神楽は短めだったが、「神があがらせ給ふと云ひ捨つる」で幣を後ろに投げ、狂いから覚めて憑依が解けるその瞬間の表現が見事。
うつむいたシテの体から、神霊がふぅ~と遊離していくのが感じられた。



狂言《寝音曲》
アドの岡村宏惣(ひろのぶ)さんは初めて拝見する人かな?と思って、拙ブログを検索したら、5年前の2014年に第45回東西合同研究発表会で拝見していた。
その時も曲は《寝音曲》で、岡村さんはシテの太郎冠者をされていたが、今回はアドの主人役。これがなかなかうまい。落ち着いていて、間の取り方もよかった。

シテの忠三郎さんは汗びっしょり。横になった体勢で、大きな声で謡うのは相当大変なのだろう。
楽しい舞台だった。


片山九郎右衛門の能《融》へつづく












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