嘉祥閣でお能を観たついでに、近くにある中信美術館に立ち寄ってみました。
今の時期は「錦秋の季節に」と題して、秋をテーマにした京都中央信用金庫所蔵品展が10月11日まで開催されています。
住宅街の片隅にひっそりと佇むこぢんまりとした美術館。
私も初めて訪れたのですが、思った以上に充実した内容で、展示品の素晴らしさに比べて来館者は少なく、ゆっくり、ゆったり鑑賞できるので超穴場です。
印象に残った作品メモ
上村松篁《秋野》
野菊や芝草、イヌタデ(赤まんま)、露草など秋草が生い茂る野原に描かれた2羽の鶉。
『伊勢物語』に登場する深草の里の女の歌「野とならば鶉となりて鳴きをらむ狩りにだにやは君は来ざらむ」、そしてこの歌をカヴァーした藤原俊成の「夕されば野辺の秋風身にしみて鶉鳴くなり深草の里」、こうした和歌の世界がシンボリックに絵画化されている。
鶉の羽毛や秋草の葉脈は写実的に、芝草の配置や全体的な構図はリズミカルで文様的・装飾的に描かれ、画面全体は黄色いトーンでまとめられ、月光に照らされた秋の野の情緒が伝わってくる。
秋になって男に飽きられ、忘れ去られた我が身を鶉になぞらえた女の寂寥感が織り込まれた重層的な作品。
小田部正邦《秋桜花》
はじめて拝見するが、1939年生まれの現代画家らしい。
縦長の画面にはグレーを背景に、ピンクと白のコスモスが描かれている。
ちょうどゴッホがひまわりのように、このコスモスも蕾から満開、散りかけ、花びらが散って咢だけになったものまでがひとつの画面に描かれており、まるで人の一生、とくに女の一生を見るような気がした。
余白をたっぷり取り、配色も構図もシックで洗練されている。自分の部屋に飾るとしたらこういう絵がほしい。
ほかにも、澄んだブルーが美しい平山郁夫《薬師寺の月夜》、河合玉堂風の里山の秋を描いた堂本印象の《秋深む》など魅力的な作品に出会えた。
美術館の斜め前にあったレトロな飴屋さん |
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