狂言鑑賞会~《粟田口》、《神鳴》、語《重衝》、《文山立》のつづき
鑑賞会の最後は東次郎さんのお話だったのですが、これが単なる解説ではなく、
まるで「山本東次郎独演会」のように魅力満載の充実した内容でした!
舞台に現れた東次郎さんは黒紋付きに青藍色の袴姿。
この袴の色合いがシックなのに華やかな、絶妙の染め具合で素敵。
(注文してもなかなかこういう色には染め上がらない。腕のいい染色家の仕事ですね。)
東次郎さん、ほんとうにおしゃれ。
まずは、初番の《粟田口》とその類曲《末広がり》とを比較しながらの解説。
このとき、《末広がり》のあらすじを説明するにあたって、普通は座ったままあらすじを語れば済むところを、東次郎さんは脇座から橋掛りまでを縦横無尽に動き回りながら、果報者と太郎冠者とすっぱの三役を一人で演じ分け、最後は傘を持って「我も笠をさそうよ~」と舞を舞うというサービスぶり。
観客に伝えよう、表現しようという情熱、観客を楽しませようという熱意が凄い!
人を楽しませることが何よりも楽しいという気持ちが強い人なのだろう。
(一流の能楽師さんの中にはこういう人が多い気がする。一流であればあるほど大上段に構えることなく、実るほど首を垂れる稲穂のように身体を張って観客を楽しませてくださる。)
あふれ出るエネルギー。
ほんとうにパワフルな人だ。
それにいつまでも枯れずに、艶っぽい。
この方からはいつも、とても心地良い「気」が発散されている。
能楽堂以外の場所で遭遇しても、いつもニコニコ愛らしく、その佇まいから学ぶことが多い。
そんな調子で、この日上演された全曲の解説をエネルギッシュにしてくださった後、番組には書かれていなかったサプライズの小舞を披露。
演者全員が地謡に並び、その前に下居した東次郎さんが「うーん、何にしようか」としばし考えた後、即興的に「酒宴をなして~、かいがいしくも」と謡い出す。
そう、おめでたい《貝づくし》。
格調高く品のある舞。
観客はもう大満足。
みんな幸せそうな笑顔で会場をあとにしたのでした。
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