碧風會番組より |
仕舞 《放下僧・小歌》 観世喜之
《富士太鼓》 観世喜正
地謡 奥川恒治 鈴木啓吾 桑田貴志 中森健之介
狂言 《鍋八撥》 シテ鍋売り 野村万作
アド鞨鼓売り内藤連 小アド目代 岡聡史笛 八反田智子
後見 月崎春夫 中村修一
(休憩15分)
能《望月》 シテ小沢友房 小島英明
ツレ安田友晴の妻 永島充 花若 黒沢樹 ワキ望月秋長 森常好 アイ望月の供人 野村萬斎
一噌隆之 大倉源次郎 亀井広忠 観世元伯
後見 観世喜之 奥川恒治 桑田貴志
地謡 観世喜正 中森貫太 遠藤喜久
鈴木啓吾 佐久間二郎 坂真太郎
前日から降り続いた雨も、小島英明師の強力な晴れ男パワーで晴れ上がり、
わたしが家を出る頃には青空が広がって《望月》披きにふさわしい好天気に。
見所は満席で人いきれがするほど。
ともあれ、リニューアル前のクラシカルな矢来能楽堂で拝見できてよかった!
まずは観世喜正さんの解説。
持ち時間は30分だったらしいけれど、お話が巧いので長さを感じさせず楽しいひととき。
《鍋八撥》と《望月》の内容など。
興味深かったのが、
鎌倉・室町期には、男性視覚障害芸能者が琵琶法師として平家物語を語ったのに対し、
女性視覚障害芸能者は盲御前(めくらごぜ)として鼓を打ちつつ曽我物語を語ったということ。
能《望月》のなかで安田友治の妻が盲御前に扮して、子供時代の曽我兄弟の逸話を語るのは、仇相手の望月に一種の仇打ち予告(殺害予告)をしているのかと思っていたけれど、
そうではなく、曽我物の語りが盲御前の芸の定番だったからなんですね。
かくして能《望月》には、盲御前の語り、稚児による鞨鼓、座敷芸としての獅子舞など、
中世に流行した芸能がタイムカプセルのように保存され、21世紀の現代でも
それらの生きた芸を目にすることができるという、有り難い軌跡を感じさせる解説でした。
芸の継承ってほんと、大切。 先人たちに感謝。
そのほか、《望月》についての解説は、去年拝見した坂口貴信之會《望月》の林望先生のお話も面白かったのでここにかいつまんで付記すると;
本来の《望月》には獅子舞はなく、現行《望月》でツレになっている安田友治の妻がもともとはシテだったのが、後から獅子舞が挿入されたために、位の高い獅子舞を舞う小沢刑部友房がシテとなり、安田の妻がツレに格下げされたという。
だからたぶん、《望月》のツレはシテとほぼ同格といえるほど重要な存在だと思う。
(その重要性は本公演のツレの面・装束にも表われていた。)
ツレが永島充さんなのも、わたしがこちらの公演を選んだ理由のひとつでした。
仕舞2番《放下僧》《富士太鼓》はどちらも仇討にちなんだ曲。
観世喜之師は、以前拝見した時よりも足腰がしっかり。
おそらく筋トレなども取り入れて、相当努力されているのだろう。
今年傘寿を迎えられ、老いてますます気力充実。
全身にみなぎる心身の強さのようなものを感じさせる。
きっと、「場」の力との相互作用もあるのかもしれない。
他の能楽堂で拝見するよりもはるかに素晴らしかった。
碧風會~狂言《鍋八撥》&《望月》につづく
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