2020年2月3日月曜日

壬生寺の節分会

如月初旬になると、節分会が京都各地で催される。
ほんとうは「四方(よも)参り」といって、邪気の入り込む方角にある吉田神社、八坂神社、壬生寺、北野天満宮を順番に参拝するのがいちばんの厄払いになるらしい。
体力も気力もない私は、とりあえず裏鬼門にあたる壬生寺を訪ねてみた。

壬生屯所旧跡・八木家
壬生は新鮮組ゆかりの地であり、参道にはかつての屯所が建ち並ぶ。芹沢鴨が暗殺された場所として有名な八木家もそのひとつ。現在も八木源之丞の子孫が継承されているという。




京都鶴屋
その八木家が営む御菓子司・京都鶴屋。
店内は参拝客でぎっしり。名物は壬生菜入りの餅で粒あんを包んだ「屯所餅」。

壬生の誠せんべいや壬生の誠最中もあって、どれにしようか迷ってしまう。




旧前川邸
こちらも屯所だった旧前川邸(現・田野製作所)。
商家というよりも、武家屋敷らしい立派な門構え。




旧前川邸は個人の住居となっているため、通常は非公開。土日祝のみ玄関先の土間で新選組のグッズ販売されている。

なかは天井が高く、梁のしっかりした堅牢なつくり。築百五十年以上の古い建物なのに、昔の木造建築の技術の素晴らしさには感動してしまう。
(壬生は湿地帯なのに、24時間換気などないであろう古民家、湿気・白アリ対策はどうされているのだろう?)



前川邸間取り図
前川邸内には、小高俊太郎の拷問が行われた東の蔵や、野口健司が切腹した場所、山南敬輔が切腹した時の刀傷、原田左之助が殺害された場所など、血なまぐさい歴史の痕跡がいたるところに残されている。

そういう場所が今も住居として現役で使われているのが、京都の凄いところ。





幸福堂の焼き立てきんつば
露店でにぎわう参道。
幸福堂さんの節分限定「焼きたてきんつば」や厄除け幸福餅が大人気で、長蛇の列ができていた。職人さんもかき入れ時で大忙し。



壬生延命地蔵尊
人ごみに揉まれながら、ようやく壬生寺に到着。
ここから先もすごい人。
京都というか、関西は信仰心の篤い人が多い。




ほうらくの露店
壬生寺では、炮烙(ほうらく)という素焼きの皿に、厄除け祈願と家族の名前・年齢を墨書して寺に納める「ほうらく奉納」が節分会のならわしとなっている。

奉納された炮烙は、春と秋に催される壬生狂言の《炮烙割り》という演目の最後に、舞台から落とされて粉々に割られてしまう。炮烙が割られることで、厄除け・開運が叶うとされている。

壬生狂言の《炮烙割り》。
そう、能楽の狂言《鍋八撥》の類曲です。

狂言《鍋八撥》では、最後に浅鍋が割られ「おおっ! 数が多なってめでたい!」というオチで終わるが、おそらく念仏狂言の《炮烙割り》も「炮烙が割られることで数が増える=おめでたい=厄除け」という意味が込められているのかもしれない。





大護摩祈祷
壬生狂言とともにこの日のメインは、山伏たちによる大護摩祈祷(星祭)。

まずは、山伏が八方に矢を放ち、護摩場を浄めて結界を張る。次に、四方で剣を振り、魔を祓う。さらに大斧を振って、檜葉を刈らせてくださった山の神々に感謝を捧げる。最後に僧侶と山伏が祝詞を読み上げ、檜葉の山に火がともされる。

蠢く生き物のようにモクモクと煙を上げて燃えさかる炎を前に、山伏たちが呪文を唱えてゆく。

「東方に降三世明王、南方軍荼利夜叉、西方大威徳明王……」

まさにお能の祈祷です!
過去と現在、虚構と現実が交錯する季節の境目。その隙間に入り込む邪気を祈祷と炎のパワーで祓ってゆく。春を呼び寄せる壬生寺の節分会は磁場のような熱気に包まれ、人々の集団的熱狂さえ感じさせた。



壬生塚
境内には、新選組隊士の墓とされる壬生塚も。


お参りと護摩祈祷見学を終え、いよいよ壬生狂言を観に狂言堂に向かいます。

壬生狂言《節分》につづく



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