ほんとうは「四方(よも)参り」といって、邪気の入り込む方角にある吉田神社、八坂神社、壬生寺、北野天満宮を順番に参拝するのがいちばんの厄払いになるらしい。
体力も気力もない私は、とりあえず裏鬼門にあたる壬生寺を訪ねてみた。
壬生屯所旧跡・八木家 |
京都鶴屋 |
店内は参拝客でぎっしり。名物は壬生菜入りの餅で粒あんを包んだ「屯所餅」。
壬生の誠せんべいや壬生の誠最中もあって、どれにしようか迷ってしまう。
旧前川邸 |
商家というよりも、武家屋敷らしい立派な門構え。
旧前川邸は個人の住居となっているため、通常は非公開。土日祝のみ玄関先の土間で新選組のグッズ販売されている。
なかは天井が高く、梁のしっかりした堅牢なつくり。築百五十年以上の古い建物なのに、昔の木造建築の技術の素晴らしさには感動してしまう。
(壬生は湿地帯なのに、24時間換気などないであろう古民家、湿気・白アリ対策はどうされているのだろう?)
前川邸間取り図 |
そういう場所が今も住居として現役で使われているのが、京都の凄いところ。
幸福堂の焼き立てきんつば |
幸福堂さんの節分限定「焼きたてきんつば」や厄除け幸福餅が大人気で、長蛇の列ができていた。職人さんもかき入れ時で大忙し。
壬生延命地蔵尊 |
ここから先もすごい人。
京都というか、関西は信仰心の篤い人が多い。
ほうらくの露店 |
奉納された炮烙は、春と秋に催される壬生狂言の《炮烙割り》という演目の最後に、舞台から落とされて粉々に割られてしまう。炮烙が割られることで、厄除け・開運が叶うとされている。
壬生狂言の《炮烙割り》。
そう、能楽の狂言《鍋八撥》の類曲です。
狂言《鍋八撥》では、最後に浅鍋が割られ「おおっ! 数が多なってめでたい!」というオチで終わるが、おそらく念仏狂言の《炮烙割り》も「炮烙が割られることで数が増える=おめでたい=厄除け」という意味が込められているのかもしれない。
大護摩祈祷 |
まずは、山伏が八方に矢を放ち、護摩場を浄めて結界を張る。次に、四方で剣を振り、魔を祓う。さらに大斧を振って、檜葉を刈らせてくださった山の神々に感謝を捧げる。最後に僧侶と山伏が祝詞を読み上げ、檜葉の山に火がともされる。
蠢く生き物のようにモクモクと煙を上げて燃えさかる炎を前に、山伏たちが呪文を唱えてゆく。
「東方に降三世明王、南方軍荼利夜叉、西方大威徳明王……」
まさにお能の祈祷です!
過去と現在、虚構と現実が交錯する季節の境目。その隙間に入り込む邪気を祈祷と炎のパワーで祓ってゆく。春を呼び寄せる壬生寺の節分会は磁場のような熱気に包まれ、人々の集団的熱狂さえ感じさせた。
壬生塚 |
お参りと護摩祈祷見学を終え、いよいよ壬生狂言を観に狂言堂に向かいます。
壬生狂言《節分》につづく
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