2018年12月3日月曜日

日本書籍出版協会京都支部・文化講演会~金剛宗家講演と仕舞

2018年12月1日(土)14時~16時10分 金剛能楽堂
一番手前(一の松)に展示された長絹には、上村松篁筆の鳳凰が描かれている。

第一部・講演「能の魅力」 金剛永謹

第二部 仕舞《井筒》  廣田幸稔
      《笠之段》 豊嶋晃嗣
      豊嶋幸洋 宇髙竜成 宇髙徳成 惣明貞助

半能《巴》 シテ 金剛龍謹
    ワキ 有松遼一
    森田保美 林大和 谷口正壽
    後見 廣田幸稔 豊嶋幸洋
    地謡 金剛永謹 豊嶋晃嗣 宇髙竜成 宇髙徳成
    働キ 惣明貞助




金剛宗家による講演も、若宗家による公演も、濃~い内容で大満足!
金剛流も素敵な流儀ですね。
来年はもっと拝見できればいいな。


講演「能の魅力」 金剛永謹
能の歴史や面装束についての解説。
40分ほどの講演でしたが、鷹揚で品格のある金剛宗家の魅力がギュッと詰まっていて楽しかった。
もっとお話を聞いていたかったくらい。

印象に残ったことだけをザっと書き留めておきます。

能の曲は、これまで3000曲くらい作られてきたが、現在も上演されているのは200曲ほどとのこと。

(つまり、ほとんどが廃曲になり、取捨選択されて残ったのが現行曲。お能の曲にもダーウィンの自然淘汰の原理が働いているのですね。)


室町~桃山時代には、能の作曲が活発な時期だった。
さまざまな曲に対応すべく、能面も70~8種類ほどが創作されてきた。
室町~桃山期に作られた能面は「本面」と呼ばれる。

江戸時代になると、新作能の創作が幕府によって禁止された。
それゆえ、能面も新たな種類が創られなくなり、もっぱら「本面」の「写し」の制作が主流となった。

「本面」と「写し」との違いは、
「本面」には、作者の創作意欲にあふれ、生命力がみなぎっている。
だから、役者に力がないと、面に負けてしまう。


いっぽう、「写し」には創造性が乏しく、生命力に欠ける傾向がある。
しかし、きれいに整ったものが多いため、舞台で使いやすい。


このように能面の説明をした後で、金剛家所蔵の本面の名品を6つの種類別に紹介してくださった。

(1)翁面・白色尉:どこか父尉っぽい顔立ちで、ふつうの翁面ほどには笑っていない。古態を残す翁面だった。

(2)尉面・峻厳な表情をした小牛尉

(3)男面・喝食:少し角度を変えるだけで、豊かな表情を見せる。品行方正で凛とした顔の喝食。

(4)女面:豊麗な「雪の小面」

(5)女の鬼面・般若:般若の面は、上半分と下半分の表情が違う。上半分(目元)は「悲しみ」の表情。下半分(口元)は「怒り」の表情。ワキとのバトルの時、調伏される際は下を向き、逆襲する際は上を向くようにする。

(6)男の鬼面・「鼓悪尉」と「悪尉癋見」:鼓悪尉は《綾鼓》の専用面で、口が空いた「阿」の表情。悪尉癋見は口を閉じた「吽」の表情。「阿」と「吽」の2つの面をそろえることで、悪霊を祓うと考えられた。


以上、本面の物凄い名品を見せてくださったのですが、見やすい席から間近で拝見したので、眼福すぎて胸がいっぱい!

「面金剛」といわれるだけあって、能楽師&能面好き垂涎の名品ぞろい。こうした面たちが、実際の舞台ではどんなふうに見えるのだろう。

喝食や雪の小面、鼓悪尉など、独特の個性があり、それ自体に強い「気」が宿っているから、生半可な役者では太刀打ちできない気がする。そう考えると、なおさら観てみたい。



【仕舞2番】
豊嶋晃嗣さんの舞を観るのはほんとうに久しぶり。
かなりお痩せになったのではないだろうか。
髪型も変わったので、言われないと誰だか分らなかったくらい。
「笠之段」、とてもよかった。

それと、この仕舞の地謡がとてもいい!
「舞金剛」といわれるけれど、わたしは金剛流のこの謡いがすごく好き。
いまの金剛流は「謡金剛」といってもいいんじゃないかな。

〈メモ〉
金剛流は仕舞謡のとき、扇を床と平行になるように寝かせて、膝の上で両手で持つ。



金剛龍謹の半能《巴》につづく





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