2018年12月25日火曜日

クリスマス・イヴ能~大阪能楽養成会研究発表会《菊慈童》《箙》ほか

2018年12月24日(月)14時~17時 大槻能楽堂

能《菊慈童》シテ 西野翠舟
   ワキ 福王和幸
   野口眞琴 清水皓祐 守家由訓 中田一葉
   後見 武富康之 寺澤拓海
   地謡 今村哲朗 笠田裕樹 大槻裕一 浦田親良

舞囃子《紅葉狩》石黒空
   貞光智宣 成田奏 山本寿弥
   地謡 辰巳大二郎 辰巳孝弥

舞囃子《六浦》寺澤拓海
   貞光智宣 清水皓祐 守家由訓 中田一葉
   地謡 大槻裕一 浦田親良

独吟《放下僧》高林昌司

能《箙》シテ 金春飛翔
   ワキ 喜多雅人 アイ 小西玲央
   赤井啓三 成田奏 山本寿弥
   後見 湯本哲明 酒井賢一
   地謡 金春穂高 中田能光 佐藤俊之



大阪能楽養成会、いつもながら気合入ってる!
番組が何か月も前から用意され、出演能楽師さんたちもSNSで発信しているし、各演目の演者が書いた解説が配られるなど、手作り感があって、若手能楽師さんたちの意気込みが伝わってくる。
舞台のほうも、今年最後の発表会にふさわしく濃い内容だった。


際立っていたのは若手囃子方さんの躍進ぶり。
やはりシテ方と比べて、囃子方のほうが若いうちから舞台経験が豊富だからだろうか、聴いていて「あっ、良いなあ」と思う方が多い。

笛方の野口眞琴さん、貞光智宣さん、どちらの笛もそれぞれに味わい深い。現時点でこの域まで達していたら、将来はどんな笛方さんになるだろうと、いまから楽しみ。


成田奏さんの小鼓がとりわけ素晴らしい。
以前から注目していたけれど、ここ半年くらいでさらに成長された。ブラインドテストで何も知らされずに耳だけで聴いていたら、若手の方とは到底思えないくらい。
掛け声も音色も、魅力がある。

成田奏さん×山本寿弥さんのコンビの後ろに、TTRのお二人が後見でつかれたのも面白かった。親子とも同世代。それぞれにお師匠様の芸風を受け継いでいらっしゃる。



能《菊慈童》
シテを舞われた西野翠舟さん、よかった。
慈童の美しい面と、シテの雰囲気がぴったり合っている。
男性でも女性でもない、子供でも大人でもない、性別も年齢も曖昧な独特の神秘性と寵童ならではの色気を感じさせる舞姿だった。

地謡もお囃子も聴き応えがあった。




能《箙》
金春飛翔さんの舞台を観てみたかったので楽しみにしていた。

やっぱり、この方の舞台は独特だ。
謡が上手いのかどうか、よくわからないまま引き込まれていく。

箙の梅の由来を語るところなども、なにかの祟りの秘密でも打ち明けるような恐ろしさを漂わせていて、曲の内容とは一致しないのだけれど、摩訶不思議な力がある。
腹の底から謡っているというのも、こちらを惹きつける要因かもしれない。

後シテの今若の面が美しく、水も滴るような若武者姿だが、生田の森での合戦を再現するところは、美しさよりも、泥臭く血と汗にまみれた戦場の様子が描写される。

この泥臭さ、土臭さ、呪術的なおどろおどろしさが、ほかの誰にもない、金春飛翔さん独自の魅力。大和猿楽の源流を感じさせる舞台だった。





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