2018年5月6日日曜日

大江定期能《女郎花》・狂言《舟船》

2018年5月6日(日) 13時~17時 大江能楽堂

桝席のある桟敷席

能《女郎花》シテ 大江泰正
  ツレ 宮本茂樹 ワキ 有松遼一 アイ 山口耕道
  左鴻泰弘 林大和 河村眞之介 前川光範
  後見 牧野和夫 大江信行
  地謡 井上裕久 浦部幸裕 吉田篤史 深野貴彦
     大江広祐 宮本隆吉 鷲尾世志子 浦田親良

狂言《舟船》太郎冠者 茂山七五三 主人 丸石やすし
  後見 網谷正美

仕舞《賀茂》   大江広祐
  《杜若キリ》 浅井文義
  《網之段》  井上裕久
  《鵜之段》  片山伸吾
  地謡 大江又三郎  吉浪壽晃 吉田篤史 浦部幸裕

能《鞍馬天狗・白頭》シテ 大江信行
  牛若 大江信之助 花見 深野百花 
  花見 大江栞理 大江真桜 大江雪乃
  ワキ 小林努 能力 茂山千三郎
  木葉天狗 松本薫 井口竜也 鈴木実
  齊藤敦 吉阪一郎 山本哲也 前川光範
  後見 大江又三郎 大江広祐
  地謡 浅井文義 片山伸吾  吉浪壽晃 深野貴彦
     宮本茂樹 大江泰正 鷲尾世志子 浦田親良
附祝言


今日ここで観能できたのも、取り壊し予定日に終戦を迎えたという奇蹟と
大江家代々の方々の並みならぬ努力のおかげです


GW最終日、あこがれの大江能楽堂へ。
改築・改修を重ねて今年110歳を迎えた能楽堂、素敵すぎてわくわくする。まるで小津安二郎の世界。
好きだなあ、こういう空間。

見所はおそらく男性が半数以上を占めているだろうか、東京とは雰囲気がだいぶ違う。
老若男女、じつに生き生きとリラックスした感じで、心から能を楽しんでいらっしゃる。ここでは能が、暮らしのなかに溶け込んでいる感じだ。
そうした空気が、いっそう『晩春』で観た見所のイメージと重なる。



能《女郎花》
九州松浦潟から京へ上る水衣に無地熨斗目着流僧が登場する。
ワキの有松遼一さんは研究者と能楽師の二足のわらじを履いているらしいが、謡がうまく(京都の能楽師さんは皆さん謡がうまい!)、姿や所作が洗練されている。

シテの大江泰正さんも「なうその花な折り給ひそ」の幕内からの呼び掛けと幕離れでいわくありげな雰囲気をつくり、面遣いも巧みだった。
(首を前に突き出した感じが、御父上の又三郎師によく似ている。)

後ツレの宮本茂樹さんも初めて拝見するが、この方、謡が輪をかけて上手く、脇座での下居姿もしとやかで美しい。いつか舞も拝見したい。

そして何よりも井上裕久さん地頭の地謡が虚弱緩急を自在に使い分け、舞台のレベルをワンランク底上げしていた。

後シテの出立は烏帽子に単狩衣、白大口、面は邯鄲男という、悩める貴公子姿。
「あら閻浮、恋しや」と妄執の情念をたぎらせて地謡が謡うとカケリに入り、左鴻さんの笛がひときわ激しく鳴り響く。
シテのカケリは邪淫の強さを足拍子であらわしつつも、その舞姿には悲しみと優雅さが漂い、愛しすぎたがゆえに誤解が生じて悲劇となる、普遍的な恋の不条理・心の行き違いを描いていた。




狂言《舟船》
関西って、見所のリアクションがいい! 
笑いの感度が鋭敏なのだろうか、観客は打てば響くような反応で、見所と舞台が感応し、その相乗効果で能楽堂が良い「気」に包まれる。

ほんとうに皆さん、肩の力が抜けていて、楽しそう。
小難しいことは何も考えず、楽しめばいい。

この空間にいるだけで、なんだかとても幸せな気分になってくる。
狂言って、ほんとうはこういうものなんだ。




大江定期能《鞍馬天狗・白頭》につづく











  
  




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