2018年5月24日木曜日

京都能楽養成会・平成三十年度(第二回)研究発表会

2018年5月21日(月)17時30分~19時30分 京都観世会館

仕舞《竹生島》  湯川稜
  《杜若キリ》 惣明貞助
  《野守》   向井弘記
   地謡 宇高徳成 辻剛史 山田伊純

舞囃子《富士太鼓》梅田嘉宏
   杉市和 吉阪一郎 河村裕一郎
   地謡 分林道治 深野貴彦 樹下千慧 河村春奈

舞囃子《胡蝶》  辻剛史
   杉市和 吉阪一郎 河村凛太郎 前川光範
   地謡 宇高徳成 惣明貞助 山田伊純
      向井弘記 湯川稜

舞囃子《弓八幡》 河村春奈→休演(居囃子に変更)
   杉市和 吉阪倫平 河村裕一郎 前川光範
   地謡 味方玄 分林道治 深野貴彦 樹下千慧

狂言《口真似》 井口竜也
   茂山虎真 茂山竜正
   後見 茂山千作

半能《野守》 シテ 樹下千慧
   ワキ 岡充
   杉市和 吉阪一郎 河村凛太郎 前川光範
   後見 分林道治
   地謡 片山九郎右衛門 味方玄 梅田嘉宏 河村春奈





夜の能楽堂はしっとりとした空気に包まれ、昼間とはまた別の雰囲気だ。
俗世から隔絶され、能だけを凝縮して閉じ込めた異空間に入るようで、時間の流れさえ違う気がする。

初めて拝見する養成会の発表会はいわば公開稽古能のようなものなのだが、若手も指導する側も、ビリビリと火花を散らすような真剣勝負の世界がそこにはあった。
優雅に泳ぐ白鳥たちの水面下の姿を垣間見るような、独特の空気を感じた。



まずは金剛流の仕舞三番。
こちらに来てから金剛流のイメージが、良い意味でガラリと変わった。京都の金剛流は、舞も謡も格段に洗練され、強くてしなやかな芯が通っている。

湯川稜さんの《竹生島》にはシャープな鋭さとキレがあり、とりわけ印象深い。
舞囃子で《胡蝶》を舞われた辻剛史さんはまだ少年というべき年齢だろうか、おそらく成長期で体もやや不安定だが、能に対する真摯な思いが舞にあらわれた清々しい《胡蝶》だった。
地謡にもどこか雅やかな趣きがあった。



舞囃子《弓八幡》は、シテが休演されたので居囃子になり、味方玄さんがシテの謡を担当された(謡だけでなく舞っていただければ……なんて、贅沢なことを思ったり(笑))。
小鼓の吉阪倫平さんは天才ぶりがさらに磨かれ、ご自分の顔よりもはるかに大きい小鼓を小気味よく打ち、美しい音色を響かせる。
河村裕一郎さんの大鼓にも熱が入り、太鼓の光範さんとともに若い力が炸裂。地謡も加わってさらに熱気が高まり、最高に盛り上がった居囃子だった。



そして、この日の白眉は半能《野守》!
シテの樹下千慧さんは東京でも何度か拝見したことがあるけれど、快進撃を続ける若武者のような急成長ぶりに心底驚いた!

半能(袴能)なのでワキの次第と道行のあと、後場のノット&ワキ謡となり、出端の囃子で塚の中から後シテの声が聞こえてくるのだが、このときのシテの謡にハッと息を呑む。

もしも番組を見ずに舞台だけを観ていたら、相当実力のある(一流といっていいほどの)中堅のシテ方さんだと思っただろう。
作り物の中からの謡だけで、これだけ観客の心をつかむのは並大抵のことではない。
謡だけでなく、作り物から出てからの舞働にも鬼神らしい重みと迫力があり、ワキの岡充さんとの掛け合いも剣術の立ち合いのような激突感があった。

地頭の九郎右衛門さんも終始厳しい指導者の顔つき。舞台全体から凄まじい熱気が立ち込め、一瞬たりとも目が離せない。

若い方々の進化をこんなふうに目の当たりにすると、嬉しくてワクワクする!
若手も指導者も、皆さん、能・狂言が心の底から好きなのだ。

降誕会祝賀能とのかけ持ちだったけど、行ってよかった!!
熱い情熱とひたむきな思いをひしひしと感じて、こちらの胸も熱くなった。














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