2018年5月1日火曜日

吉阪若葉会その2

2018年4月30日(月) 京都観世会館

(拝見したもののみ記載)
舞囃子《井筒》      吉浪壽晃
   《西行桜》     浦田保浩

舞囃子《羽衣》      味方玄
   《三輪・白式神神楽》河村和重
   《当麻》      浦田保親

舞囃子《弱法師・盲目之舞》片山九郎右衛門
   《誓願寺》     青木道喜

舞囃子《養老・水波之伝》 林宗一郎
   《実盛》      河村晴道

舞囃子《杜若》      味方玄

番外独鼓《実方》河村晴道×吉阪一郎

囃子方(出演順)上田敦史 山本哲也 吉阪倫平 前川光範 前川光長 杉信太朗 谷口正壽 左鴻泰弘 森田保美 河村大 
金剛流シテ方 宇高竜成 金剛龍謹 豊嶋晃嗣
観世流シテ方(地謡・独鼓で拝見した方)大江信行 田茂井廣道



GW前半最終日、吉阪一郎さんの社中会へ。
わたしのような新参者にとって大物囃子方さんの会は、未見のシテ方さんを拝見する絶好の機会。
今月と来月の購入済みチケットはどれも東京時代から拝見していた方々の公演だから、観たい京都の役者さんが増えて、もう少し守備範囲が広がるといいな。


それにしても、京都の中堅どころは今を盛りに咲き誇る花々のよう。
シテ方さんも囃子方さんも見ごろ・聴きごろで、舞台のうえは百花繚乱の様相。
御社中の方々も実力派ぞろい、音色はもとより掛け声もいい!
なかには、養老・水波や一調を打った方のようにセミプロレベルのうまい方も。御子息の小鼓もほとんど天才的だし、きっと吉阪さんのご指導も素晴らしいのだろう。


以下は簡単な感想を書いたものです。
(九郎右衛門さんの舞囃子《弱法師・盲目之舞》は別記事に書いています。)




舞囃子《井筒》シテ吉浪壽晃
吉浪さんは初めて拝見する。井上裕久さんたちとともに謡講をされているだけあって美声だし、謡が上手い(井上一門は謡がとりわけ素敵)。
舞は折り目正しい正統派。東京の大松洋一さんにどことなく雰囲気が似ている気がする。
「京の町家で謡をたのしむ」には絶対に行きたい!



舞囃子《西行桜》シテ浦田保浩
この日は序ノ舞物(とくに太鼓序ノ舞)が多く、序ノ舞の舞い比べ、聴き比べも楽しい。山元哲也さんの独特の打法(大倉流の大鼓はこういう打ち方なのかもしれないけれど)にどうしても目が行ってしまう。
浦田保浩さんのシテは「復曲試演の会」の《野守・白頭》で拝見する予定。良い舞台だといいな。



舞囃子《羽衣》と《杜若》 シテ味方玄
中盤と終盤に配置された《羽衣》と《杜若》。
味方玄さんが、同じ太鼓序ノ舞で「天女」と「草花の精」をどう舞い分けるのかが見どころ。

《羽衣》のほうは、近寄りがたく隙のない高貴な天女といった雰囲気で、味方玄さんの舞を形容するのによく使われる「スタイリッシュ」とか「都会的」といった言葉がぴったりの序ノ舞だった。

「浦風にたなびきたなびく」の羽根扇は、大きく風をはらんだ繊細優美な羽衣さながらのエアリーな軽やかさ。浮遊感と風の流れ、爽やかさを感じさせた。


いっぽう、《杜若》のほうは初夏の沢辺を思わせる潤いのある序ノ舞。
《羽衣》の太鼓序ノ舞とは異なる、このしっとりした風情はいったいどこから醸し出されるのだろう?

その秘密を探るべく、ひたすら目を凝らしてガン見。
腕を下げるときや腕を差し出すときの微妙な速度が《羽衣》のものとは、ほんのわずかに違う。花がほころぶような感じにまで速度を落として、緩急の付け方を変えることで、水に濡れたような風情が漂う。
そして、その潤いが舞に有機性を与え、植物の精であり歌舞の菩薩でありながら、業平に関わった女性たちの化身でもあるような人間味のある雰囲気が醸成されていた。

この舞い分け(これが位取りというものだろうか)はじつに見事!
ほかにも曲ごとに同じ序ノ舞でも、お囃子で細かい変化をつけたりするのだろう。
能ってほんと、うまくできてるなあ。



《三輪・白式神神楽》シテ河村和重
九郎右衛門さん、味方玄さん、林宗一郎さんの地謡が華やかでドラマティック。昨年11月に拝見した九郎右衛門さんの白式神神楽の感動がよみがえる。
(メモ:「千早ふる」でイロエ。神楽二段目で幣つき榊を右肩に載せる。)




《当麻》シテ浦田保親
今年2月の《当麻・二段返》観たかったなー。あと2か月遅ければよかったのに。
と、思いながら見ていました。
「乱れなよ~」の、地謡とシテの掛け合いが印象に残る。
浦田保親さんは下宝能の会《紅葉狩・鬼揃》のツレで拝見したのみだけど、正先で経巻に見立てた扇を広げて読誦する型の表現力が豊かで、注目したいシテ方さんだ。




《誓願寺》シテ青木道喜
青木さんと味方玄さんの後見は最強!と思わせるほど、そつのない後見をなさる方。
(この方が後見だと、シテも安心して舞台に集中できるのではないだろうか。頼れる後見が片山家いらっしゃるのは幽雪師のご指導の賜物、レガシーでもある。)
後見ぶりと同じく、舞のほうも丁寧で端正。
幽雪さんの御本『無辺光』に青木さんのエピソードも出てきて、けっこう面白い。



舞囃子《養老・水波之伝》 林宗一郎
よかった! ノリノリで気分が浮き立つ。
九郎右衛門さんの養老・水波のときもそうだったけど、光範さんの神舞早打ちがめちゃくちゃ、かっこいい!
(この方、掛け声もいい!) 
社中の方もプロに交じって遜色ない演奏で素晴らしかった。
宗一郎さんの舞も魅力的で申し分なく、∞能の《邯鄲》が楽しみだ(地謡に東京の懐かしいシテ方さんたちが参加されるのも楽しみのひとつ)。




舞囃子《実盛》シテ河村晴道
《実盛》、難しい曲だなあ。こちらもけっこう疲れていたから、あまり集中できず。
でも、河村晴道さんは東京時代から拝見していて、こちらに来たらぜひともお舞台を観てみたいと思っていたから、9月の《東岸居士》か12月の《誓願寺》、少なくともどちらか一つは観る予定。



番外独鼓《実方》河村晴道×吉阪一郎
トリは復曲能《実方》の独鼓。
復曲試演の会では河村道治さんは地謡、吉阪一郎さんは小鼓を担当されるから、明らかに番宣?
恐るべし京都観世、難波のあきんども真っ青の商売上手!

かくいう、わたしも復曲試演の会は発表当初からすっごく楽しみにしてます。


九郎右衛門さん型付、大江信之さん節付の《実方》、京都観世会の総力を結集させた復曲試演の会、みんなで観にいこう!









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