2018年1月15日月曜日

世界花小栗判官・通し狂言~四幕十場

2018年初春歌舞伎公演 12時~16時10分 国立劇場大劇場


盗賊風間八郎            尾上菊五郎
執権細川政元・万屋後家お槙     中村時蔵
猟師浪七・横山太郎秀国       尾上松緑
小栗判官兼氏           尾上菊之助
照手姫              尾上右近
浪七女房小藤・お駒・横山太郎妻  中村梅枝    ほか

小栗判官の大凧。ロビー対面には敵役・風間八郎の凧も。

発端    (京) 室町御所塀外の場
序幕 〈春〉(相模)鎌倉扇ケ谷横山館奥庭の場
          同      奥御殿の場
          江の島沖の場
二幕目〈夏〉(近江)堅田浦浪七内の場
          同 湖水檀風の場
二幕目〈秋〉(美濃)青墓宿宝光院の場       
          同 万屋湯殿の場
          同  奥座敷の場
大詰 〈冬〉(紀伊)熊野那智山の場

かわいい羽子板のディスプレイ


小栗物の決定版『姫競双葉絵草紙』を補綴・改作し、その醍醐味をギュッと詰め込んだ世界花小栗判官。

菊之助はこの世代の御曹司のなかでいちばん巧いと思っている役者さん。
今回も期待を裏切らず、登場とともに劇場全体が燦然と輝くような花のある存在感と、地道に積み上げた確かな芸で観客を魅了した。
荒馬(人食い馬?)鬼鹿毛を見事に乗りこなす、腰を入れた姿勢の美しいこと。
それからこの方、間の取り方が上手い。
許嫁の照手姫と、祝言を挙げるはずだったお駒のあいだに挟まれて戸惑うときのなど、間の感覚が絶妙だった。

相手役の右近さんも所作が美しく、可憐で艶やかな照手姫を好演。
小栗判官と並ぶと、まさに絵から抜け出たような絢爛たる美男美女。

菊五郎の魔王のような悪役ぶり、時蔵の奥行きのある演じ方、松緑さんの立ち廻りと身を投げうって照手姫を救った「檀風」の術など見応えたっぷり。


そして今回、大きく目を見張ったのが 浪七女房・小藤/万屋娘お駒/横田弥太郎妻・浅香の三役をこなした若手女方・梅枝さんの芸の力。
小藤とお駒は殺され役なのだが、この殺され方がじつに見事。

まず世話物女房の小藤は、照手姫を連れ去ったチンピラの兄に殺され、「わたしのことはいいから(元主君・小栗判官の許嫁だった)姫をどうか取り戻して!」と夫に言い残して息を引き取る。その妻の鑑のような健気さと、歌舞伎が求める人妻の色香を漂わせて死んでゆく凄絶美。
隣の席の御婦人方もプログラムで名前を確認し、「すごいわね」「素敵ねえ」と口々に言い合っていた。

次の万屋娘お駒は、小栗判官と祝言の約束を交わした純情な娘役。相手に一目ぼれした時のぽうーっと判官を見つめる愛らしさ。照手姫に判官を取られた時の、嫉妬に狂って身をよじる所作、般若のような目つきと悶絶するほどの哀しさ、絶望。
実の母(時蔵→父子共演)に殺される時の、サディスティックな海老ぞり、「なぜ……わたしが……こんなことに」と問いかけるような無念の死にざま……。

若いのに芸に深みがあるし、これからもっと時蔵さんから吸収して、好い役者さんになりはると思う。

                                         
おなじみ平櫛田中《鏡獅子》
覇気のある造形には六代目菊五郎と田中の魂がまちがいなく宿っている!



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