開演前に舞台に置かれた汐汲車 桶には白浜に松。カラフルなボウジがお菓子みたいにポップ。 |
【第一部】《松風》汐汲の段&狂乱の段
シテ松風 観世銕之丞
ツレ村雨 谷本健吾
栗林祐輔 田邊恭資 大倉慶乃助
地謡 馬野正基 浅見慈一 長山桂三
解説 宮本圭造
【第二部】座談会
観世銕之丞 細川俊夫 柿木伸之 宮本圭造
あぜくら会&新国立劇場クラブ・ジ・アトレとの合同企画イベント。
あぜくら会が指定した席に座ったので、ふだん自分が選ぶ席とは見え方も違い、ちょっと新鮮だった。
袴能(?)の部分上演だったため、 代わりにロビーには《松風》で使用される面・装束・扇の展示。 |
縫い箔の裾模様。刺繍が見事。愛嬌のあるサギさん。 |
第一部は、汐汲の段と狂乱の段という見せ場(それぞれ「いざいざ汐を汲まんとて」から「憂しとも思はぬ汐路かな」までと「うたての人の言ひ事や」から「松風ばかりや残るらん」まで)を上演し、あいだに宮本圭造さんの解説が入るというもの。
「舞囃子形式」とあったけれど、袴能の部分上演というか、まるで銕仙会の稽古能を観ている感じ(実際に観たことはないけれど)。
あの青山の舞台で、こんなふうに稽古能をされているのか、と想像しながら見るのも一興です。
それにしても、いきなり中途半端な箇所から始まっても、違和感なく舞台に集中して、スーッと役になりきれるところは、さすがはプロの役者さん。
こんな無茶ぶりて的な企画にも当意即妙に対応できる、銕仙会の底力と素材そのものの味を堪能しました。
銕之丞さんの汐汲みの場面がことに美しい。
「更けゆく月こそさやかなれ」で、顔面をテラして、夜空に浮かぶ月を見、
「松島や雄島の海士の月にだに」で、披いた扇で汐を汲む。
零れ落ちる海水が月の光を反射して、宝石が散らばるようにきらきらと輝いている。
「影を汲むこそ心あれ」と、桶の水面に映る月をのぞきこむ。
うっとりするほどロマンティックな光景だ。
狂乱の段の中ノ舞も惹きこまれる。
シテは昨年あたりから体の軸が安定し、緩急の付け方も一段と洗練されてきた。
舞姿に一本のしなやかな芯が通っていて、円熟味を増している。
谷本さんのツレもシテと息が合っていて、下居姿もきれいだった。
狂乱の場面が生きるのも、村雨の謡と存在があればこそ。
この子弟コンビの松風村雨、謡の呼吸にしっくりくるものがあり、とてもよかった!
ロビーに展示されていた節木増(国立能楽堂所蔵) 目元に妖しい狂気を宿していて、松風にぴったり 実際の舞台で拝見できたらいいのだけれど……。 |
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