今冬の近代美術館は所蔵品展。
撮影可能なので、気に入ったものを愛蔵ブログギャラリーに載せてみました。
川端龍子《金閣炎上》 1950年、紙本彩色 |
多くの屍とおびただしい血が、金閣の美を富ますのは自然であった。
――三島由紀夫
金閣寺放火事件の数か月後に描かれた作品。
(その6年後に三島の『金閣寺』が出版された。)
絵巻物に見られる伝統的な火焔表現。
渦巻く紅蓮の炎が、放火した青年の狂気を感じさせる。
火の粉の一部に金粉を用いて、金閣寺のドラマティックな炎上をあらわしている。
美を喪失するときの被虐的な快感と、美を破壊するときの加虐的な陶酔は、
多くの芸術家を魅了した。
上村松園《雪》 1942年、絹本彩色 |
胡粉を目の周りにハイライトのように用いて、ふっくらとした目元に仕上げている。
帯や襦袢の赤、黒 くっきりとコントラストを効かせ、
青磁色の着物でやわらかな調和を演出した。
毛描きの柔かさ・細さ、豊かな曲線を帯びた頬。
軽やかに降る雪には温かみがあり、ぼってりとした湿り気を帯びている。
清楚で上品な松園美人。
鏑木清方《初東風》 1942年 絹本彩色 |
鏑木清方の美女は頬もほっそりして、婀娜っぽい。
酸いも甘いも噛み分けた大人の女性。
山川秀峰《序の舞》 1932年 絹本彩色 |
角で扇を左手に持ち替えて段を取るところを描いた本作は、
良家の令嬢の発表会の一場面だろうか。
中振袖に合わせた模様入りの袴が、長いプリーツスカートのように見える。
緊張した面持ちには初々しい清潔感がある。
藤田嗣治《五人の裸婦》 1923年 |
五人の女性は五感の象徴で、
布を持つ女性は「触覚」、耳を触る女性は「聴覚」、口を指す女性は「味覚」、犬を伴う女性は「嗅覚」、中央の女性は絵画にとって最も重要な「視覚」を表す。
最近の修復調査の結果、藤田が描く輝くような乳白色の肌は、
薄い麻布に硫酸バリウムを下地に塗り、さらに炭酸カルシウムと鉛白を1対3の割合で混ぜた絵の具を塗り、表層にはベビーパウダーの主成分であるタルクをすりこんで光沢のあるマティエールを創出していたことが分かったという。
松本俊介《Y市の橋》 1943年、油彩、キャンバス |
寂寥感の漂う作品だが、どこか懐かい。
この絵を見ていると、孤独であることへの安らぎを感じる。
絵のなかの音のない静謐な世界に身を委ねることで、心が不思議と満たされ、
世間から取り残されることが自分にとっての癒しになることに気づかされる。
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