2019年9月11日水曜日

京博寄託の名宝~ICOM京都大会開催記念特別企画

会期:2019年8月14日~9月16日 京都国立博物館

ICOM京都大会を記念して、京博寄託品のなかから選りすぐりの名品を展示する企画展。宗達の《風神雷神図屛風》や狩野派初期の名品群、《伝源頼朝像》など、国宝・重文のオールスターが勢ぞろい。

午後から3時間半ほど鑑賞したけれど、あっという間に閉館時間に。こういう展覧会は一日がかりで観ないと、ぜんぜん時間が足りないものですね。



この日は閉館後に京博でICOM閉会式が行われたため、さまざまなイベントが催された。
画像はピアソラの「リベルタンゴ」の演奏、夕風のなかの音色が哀調を帯びて、素敵だった。




京博キャラのトラりんと、日本郵便のぽすくま「ぽすみるく」。
(残暑が厳しいのに、着ぐるみの中の人、おつかれさまです……。)





こちらは、三角縁神獣鏡のレプリカを実際にさわって、重さや大きさを実感できるコーナー。
持ってみると、ずっしりと重い。
銅だけではなく、錫や鉛も含まれる銅合金製とのこと。





重文《宝誌和尚立像》、鎌倉期13世紀、西往寺
かねてから観たかった《宝誌和尚立像》。
『宇治拾遺物語』の宝誌和尚説話「(和尚が)親指の爪を用いて、みずからの額の皮を裂き、その皮を広げると、金色に輝く菩薩の面相が現れた」というところを、造形化した彫像。
こういうハリウッド映画的な発想を聖像に彫り上げた鎌倉初期の仏師、驚くほど前衛的で、ぶっ飛んでる! ヒノキの一木造の像には全面にも粗削りな鑿跡が残され、そのアヴァンギャルドな作風に圧倒される。

なかから現れた菩薩の面相は十一面観音とされ、よく観ると、内側の菩薩面の頭上に化仏が付いているのがわかる。

作者は不明だが、この名もなき前衛仏師が誰なのか興味がある。
もしかすると、ほかにも同じ仏師による未発見の作品がどこかにあるのかも。






宗達の《風神雷神図屏風》を観るのは久しぶり(学生時代ぶり?)。
もやもやっとした黒雲を描いた「たらしこみ技法」もさることながら、風をはらんではためく襷を一気に描いた筆遣いにはため息が出る。
潔く、迷いのない、的確な線。
このひと筆で天空を吹きあがる凄まじい風の動きを感じさせる。
宗達の筆致を目で追うだけで、彼の呼吸と息づかいがありありと伝わってきた。


ほかにも、海北友松の《雲竜図》(建仁寺)や等伯の《山水図襖》(隣華院)、狩野正信、元信、永徳、山雪の屏風や襖絵もあったし、さらには、コンドルへ贈ったとされる暁斎の《大和美人図屏風》、東山魁夷の《年暮る》を思わせる与謝蕪村の《夜色楼台図》もあった。

そのなかで、とりわけ心惹かれたのが、狩野元信の《四季花鳥図》だった。

狩野元信《四季花鳥図》重文、室町期、大仙院(8幅のうち2幅)

大徳寺塔頭・大仙院の方丈に描かれた8幅大画面の元信の襖絵。
華やかな花鳥のみずみずしい色彩には、褪色しても往時のあでやかさが残り、豪壮華麗な画風が桃山絵画の到来を予感させる。

なによりも注目したいのが、天から真っ逆さまに流れ落ちる滝の描写だ。

轟音が聞こえてきそうなほど一直線に落下する瀑布。
そこに、鱗のような皮をまとう老松が飛龍のごとく身をくねらせながら、幹枝を伸ばしている。松の枝葉は鋭い爪を伸ばした龍の腕のように見え、滝を登って天をめざす龍の姿を思わせる。

新時代を切り開いた狩野派の二代目らしいダイナミックで斬新な作品だった。




海北友松《雲竜図》重文、桃山時代、建仁寺




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