2019年7月22日月曜日

夕涼みには祇園祭後祭・宵山

2019年7月21日(日)28~29℃
吉田家住宅主屋(市登録有形文化財)
今年は祇園祭にしては涼しくて、過ごしやすい。
とくに後祭の宵山は人ごみのストレスもなく、ゆっくり散策できて、前祭のにぎやかさとは違う「後の祭り」の独特の郷愁と、祭が終わりに近づいてゆく一抹の寂しさ……この雰囲気がなんか、ええなあと思う。

屏風飾りもゆったりとしていて、夏の夕暮れの気怠いひと時をの~んびり満喫してきました。


藤井絞の屏風飾り
ずうっと奥までお座敷が続いている。
左に見えるのは、北観音山のミニチュア。
調度も建物も、素敵な空間。




役行者山
 まずは、役行者山から。



左から一言主、役行者、葛城神
一言主は2本の角が生えた鬼の姿。ちょっと不気味。
右脇には、能《葛城》でもおなじみの葛城の女神さま。役行者に使役されているらしく、肩身が狭そう。着付は観世流能楽師さんだそうです。きれいな着付けですね。



役行者腰掛け石

今から1300年以上前に、役行者がこの石に坐して精神修行したという「役行者腰掛け石」。役行者がこの石に手を当てて全身のコリをほぐしたことから、身体のコリをほぐすのに効果があるとか。
わたくし、注意書きを読まずに「撫で石」かと思って、風邪が悪化しないように願掛けをしてしまった……コリじゃなくても効果はあるのだろうか?




瀬織津姫
 こちらは鈴鹿山の瀬織津姫。鈴鹿山の悪鬼を退治したとされる鈴鹿権現と習合しています。なので、右肩を脱ぎ、大長刀をもち、能面をかけるという凛々しいお姿。巴御前をモデルにしているそうです。こちらも着付けは能楽師さん。





橋弁慶山
 先日の七夕の日にも 吉浪壽晃さん父子の《橋弁慶》を拝見したばかり。ちょうどこの日も、片山定期能で《橋弁慶》やってたんですね。京都には可愛い子方さんが多いから《橋弁慶》がよくかかる。




会所2階に飾られていた弁慶と牛若丸
近くで観ると、弁慶の顔がめっちゃリアル。



五条大橋の欄干。
浜千鳥や波濤の彫刻が見事。巡行の時は見えないけれど、細かい部分まで手を抜かないところに町衆の矜持を感じます。





鯉山飾毛綴(重要文化財)
 今年の後祭山一番を引き当てた鯉山のタペストリー。
山一番+登竜門で縁起が良く、重文のタペストリーもあるので会所は大人気。





1600年ころベルギーで制作されたこの『イーリアス』のタペストリーは5枚連作の1枚、「トロイ王プリアモスと王妃ヘキューバの祈り」が主題。鯉山の周囲を飾るため、この1枚が大工のノミで9枚に切断され、見送などの懸装品に仕立てられたそうです。

5枚連作のほかの4枚については、「トロイ歓楽の図」が祇園祭の白楽天山と大津祭の懸装品として使われ、「トロイ王子パリスと美女ヘレンの出会」が金沢前田育徳会に保存され、「トロイ王子ヘクトルの妃および子息との別れ」が祇園祭の鶏鉾・霰天神山と長浜曳山祭の懸装品となり、「トロイ王プリアモスの敵将アキレウス訪問」が芝増上寺で焼失、とそれぞれの運命をたどりつつも、焼失した1枚以外はすべて残っているのはすごいことです。

大津祭と長浜曳山祭、今年か来年あたりに久しぶりに行ってみようかな。



孔雀の羽根やお城、樹木の描写など非常に細かく織り込まれていて、保存状態も素晴らしい。
タペストリーの伝来については、伊達政宗によって派遣された支倉常長が、ローマ法王に謁見した際に贈られたのではないかと考えられているようですが、ではなぜ、京都の祇園祭に使われるようになったのか、謎はまだまだ深まります。



懸装品に仕立てられた時に、こうした東洋風の龍文様の繻子と組み合わされたのも、面白い取り合わせ。祇園祭ならではですね。



こちらは、左甚五郎作と伝えられる「大鯉」。
落語の「ねずみ」じゃないけれど、夜な夜な動き出して、滝を登ってゆくような迫真の表現。鯉山の御神体は奥宮に祀られる素戔嗚尊なんだけど、みなさん、この鯉を拝んでいました。ほんと、これをネタにした新作落語があればいいのに。




『平家物語』の宇治川の合戦(橋合戦)を主題にした浄妙山。


一来法師と筒井浄妙
 巡行では、一来法師が浄妙の頭に手をついて、アクロバティックに飛び越える瞬間が再現されますが、会所ではこんなふうに並んで安置されています。それでも、躍動感あふれる造形には目を見張る。
先日、大津伝統芸能会館とともに訪れた三井寺の僧兵たち。いかに荒々しく、勇壮だったかが偲ばれます。




浄妙山の後縣
 浄妙山の新調した後縣は、長谷川等伯の「楓図」をモチーフにしたもの。近くで観ると、とんでもなく精緻な綴織。




黒主山
能《志賀》にちなんだ山。
桜が咲いているその訳は……会所のなかに。



黒主山の会所に祀られた大伴黒主
黒主が桜を見上げて「春雨の降るは涙か桜花、散るを惜しまぬ人しなければ」と詠んだ場面を主題にしているからだそうです。
こちらも着付けは観世流能楽師さん(どなただろう?) 着付けも佇まいも、能のシテ方さんのように端正。
能《草子洗小町》では悪者扱いですが(可哀そうに)、ほんとうは知的で風流な人だったことがこの御神体からも伝わってきます。





風が出ていて、夕涼みには最適。
お買い物もいろいろしたし。
宵山、満喫しました。



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