2019年7月29日月曜日

面白能楽館「恐怖の館」

2019年7月27日(土)京都観世会館
お話 林宗一郎
組曲「こんなはずじゃなかった」
《鉄輪》 浦田保浩
《善知鳥》杉浦豊彦
《恋重荷》井上裕久
 左鴻泰弘 曽和鼓堂 河村大 前川光範
 後見 味方團
 地謡 浦田保親 越智隆之
    吉浪壽晃 大江信行

能の体験
 謡体験その一・その二
 能面体験
 装束体験・ホラールーム

能《安達原》シテ片山九郎右衛門
 祐慶 小林努 山伏 有松遼一
 能力 茂山千三郎
 左鴻泰弘 曽和鼓堂 河村大 前川光範
 後見 大江信行 梅田嘉宏
 地謡 河村晴道 味方玄 分林道治
    浦部幸裕 橋本光史 吉田篤史
        河村和貴 大江泰正



その名の通り、と~っても面白くて、怖かった、面白能楽館「恐怖の館」。
京都の能楽師さんは皆さん親切で、フレンドリーな方ばかり。いつもよりお客さんの年齢層も若くて、見所もロビーも活気にあふれ、大人も子供も少女漫画みたいに目がキラキラしていた。
なにより企画力がすごい。ヴァラエティ豊かな内容を「これでもか!」ってくらいギュッと詰め込み、幅広い年齢層が楽しめる公演にアレンジされていて、よく考えられている。

夏休みのこういう体験型能楽イベントはお子さま限定がほとんどで、私などは行きたくてもいけなかったから、うれしい機会でした。



組曲《こんなはずじゃなかった》
《鉄輪》《善知鳥》《恋重荷》という怖い3曲の見せ場をピックアップして、リレー形式で上演。京都観世会を代表するシテ方お三方が、面・装束を着け、曲ごとに「祈祷台」「笠」「重荷」の3つのアイテムが出されるという、贅沢な組曲。

3人のシテの充実した芸が次々と披露され、お囃子が曲と曲をスムーズにつないでいく。この日は音響が良く、前川光範さんと河村大さんが華麗な音色と気迫のある掛け声にゾクゾクした。



謡体験
解説者で企画者のおひとりでもある林宗一郎さんのご指導。地取のお稽古というのが斬新だった。あの低く響く声をお腹の底から出すのはなかなか難しいけれど、地取って渋くてかっこいい。謡のお稽古を少し体験しただけでも、その味わい方が違ってくる。


鉄輪の「祈祷台」
ロビーに設けられた作り物体験コーナー。
鉄輪の「祈祷台」では後妻打ちのポーズで写真撮影。



安達原の「萩小屋」と打杖
担当の片山伸吾さんがていねいに説明してくださいました。
打杖、はじめて手に持ったけれど、意外に軽くてビックリ。
お茶の世界で「軽いものは重く」扱うよう教えられるように、舞台で役者さんが扱うと、もっと頑丈で重そうに見えます。

作り方は竹の棒に布を巻いていくのですが、このとき接着剤は使わず、先のほうを糸で縛るだけだそうです。《安達原》では画像のような紺地の布を使い、《道成寺》などでは赤地の布を使うとのこと。簡素な道具にも、細かい部分に工夫やこだわりが施されていて、能楽師さんから直接お話をうかがうのは着物の織元を訪ねるのに似ています。



能面クラフト・コーナー
公演チラシの裏面の般若を切り抜けば、紙の能面になるというなかなかのアイデア。
こういうの作るのは久しぶり。4才の甥にあげようかな。




装束体験
舞台では装束体験。
着付けチーム4組ぐらいで15人の装束付をしていきます。能楽師さんたちも汗だく。

2階はホラールーム。
私は申し込まなかったのですが、アミューズメントパークのアトラクション並みに「きゃあ~!」という叫び声が聞こえてきて、すごく盛り上がっていました。(^^♪




能面体験

お目当ては、この能面体験。
プロの能楽師さんが面をかけた時どんな感じなのかを体験するべく、本物の舞台の時と同じ強さで紐を締めてもらうようお願いしたのですが、これが私にとっての恐怖体験に。

「えっ! こんなに締めるの?!」と思うくらい、能楽師さんが面紐をグイーッと締めていきます。懲らしめられた孫悟空の頭の輪のような締めつけ具合とでもいうのでしょうか、意識が遠のきそう。

立ち上がって歩いてみましたが、視界は狭く、私は顎を引きすぎていたので、能楽師さんに舞台上のふつうの頭の角度に直してもらうと、足元がまったく見えず、おのずとスリ足的な歩き方になっていきます。

それにしても、面を掛けただけで、慣れ親しんだ自分の身体が、別のものになったような不思議な感覚でした。修練を積んだ能楽師さんはもっと深い憑依感覚を味わっていくのでしょうか。そういえばこの日の翌日、金剛家の能面展にうかがったときに、宇髙竜成さんが「能楽師は能面の依代になるために身体をつくってゆく」みたいなことをおっしゃっていました。能面は、お能の「核」なのかもしれません。




2階展示ケースの怖い能面たち
京都観世会の各御家が持ち寄った、怖い能面たち。
チラシの背景に映っていた能面たちは、この子たちの合成?
間近で拝見できてうれしい。

撮影OKだったので、以下に紹介していきます。

狐蛇




貴船女
変わった能面ですね。林家所蔵の「貴船女」だそうです。
きれいだなぁ。
この面を使った《鉄輪》を観てみたいと思ったのですが、実際は使いにくいとか。



野干




生成
素人目にはこちらのほうが使いにくそうに見えるのですが、使い込まれた跡があるので、意外とそうでもなさそうです。



河津(蛙)
私にとって、能面のなかでいちばん怖いのが蛙の面。
この子はわりと愛嬌があるのですが、日氷の蛙は、ほんとうに怖い。





橋姫



般若



鼻瘤悪尉


片山九郎右衛門《安達原》につづく


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