2018年7月19日木曜日

祇園祭能 ~ 京都能楽養成会《杜若》など

2018年7月17日(火)17時30分~20時20分 最高気温38℃ 京都観世会館
夕風が涼しい白川

仕舞《賀茂》     辻剛史  《放下僧・小唄》 惣明貞助
  《金輪》     山田伊純
  《鵜飼キリ》   湯川稜

舞囃子《高砂》 大江広祐
   杉市和 吉阪倫平 河村裕一郎 前川光範
   地謡 梅田嘉宏 河村和晃 河村和貴 河村浩太郎 樹下千慧

舞囃子《百万サシクセ》 向井弘記
   杉市和 吉阪一郎 河村裕一郎
   地謡 宇髙徳成 山田伊純 惣明貞助 辻剛史 湯川稜

連吟《春日龍神》 小林努 原陸 有松遼一

狂言《附子》 茂山竜正 茂山虎真 井口竜也
   後見 茂山千五郎

能《杜若》 シテ 樹下千慧
   ワキ 岡充
   貞光智宣 成田奏 河村凛太郎 前川光範
   後見 河村和貴
   地謡 味方玄 分林道治 梅田嘉宏
      河村和晃 大江広祐 河村浩太郎



前祭の山鉾巡行が終わり、神幸祭が行われるなか、ひさしぶりに観世会館へ。

少しビックリしたのは、帰りに東山駅で地下鉄を待っていると宝生欣也さんにそっくりな人(というか、どう見てもご本人)が来られて、同じ車両に乗り合わせたこと。
あれ? なんで、ここにいはるのん? 
昼間に天河弁財天で片山家の奉納能があったから、ご出演後、九郎右衛門さんと一緒に観世会館でご覧になっていたのかな?と、勝手に推察。
欣哉さんのワキを拝見できるのは、今度はいつになるのだろう……。



養成会研究発表会へは遅れて行ったので、仕舞《金輪》から拝見。
金剛流の若手の方々は総じて一定水準以上のレベルの高さ、地謡にも素材の良さが生きている。
山田伊純さんの《金輪》が、恨みの中の悲しさ、女のあわれさ、自虐の念みたいなものがほのかに感じられて、印象に残った。



舞囃子《高砂》
湿度の高いこの日、吉阪倫平さんの小鼓の弾けるような弾力のある音色が小気味よい。声変わりが終わって声が安定してきたときが、さらに楽しみ。

前川光範さんは少し体調がすぐれないように見受けられ、打音にもそれがあらわれているように聴こえたけれど、この方は掛け声がほんとうに素晴らしい!
あの天高く突き抜けるような高音の掛け声を聴くのは、観世元伯さん以来。
掛け声の良さは芸力に比例すると思うし、舞台で座っている時の姿勢もとても美しく、今最も注目している囃子方さんのお一人だ。



舞囃子《百万サシクセ》
金剛流の芸風というのをまだよく分かっていないのだけれど、シテの向井弘記さんのハコビが驚くほどなめらか。
まるで特殊効果か何かのように、床から1センチほど浮き上がってそのまま平行移動しているように見える。頭の高さの位置がまったく変わらず、上下運動が少しもない。人間離れしたハコビだった。


(連吟と狂言も観たかったのですが、休憩タイムにしました。)



能《杜若》
公私ともにますます充実している樹下千慧さん。
やっぱりこの方、うまいなあ。京都観世の期待の星。
5月に観た《野守》の塚の中からの「なうなう」も良かったけれど、この日の《杜若》にもシテの出と物着の後に「なうなう」があり、それぞれに声の太さ・奥行き・響きが違っていて、曲趣に合わせた雰囲気を醸し出し、観客を物語の世界に引きこんでいく。
舞や所作にも、ふんわりとした花の色香とみずみずしさがあり、間の取り方もセンスがいい。
謡のうまいワキの岡充さんとの掛け合いも聴き応えがあった。

装束をつけない袴能(?)なのだけれど、「袴能」として上演される形式のものとは違い、装束をつけた時のままの所作で、袖を巻いたり翻したり被いたりするのが興味深い。
ふだんは装束の袖に隠れて見えない部分がよく見えるので、ああ、こんなタイミングで、こういう力の入れ具合で、こんなふうに腕を返して袖を巻いたり、被いたりするのかと、なんだか舞台裏を見ている気分。

大阪能楽養成会の成田奏さんと貞光智宣さんもご出演されていて、もしかするとこれは、来月末の東西合同発表会の稽古能なのかな?

成田奏さんには成田達志さんが最後まで後見についていて、真剣な面持ちで見守っていらっしゃる。
いまや絶頂期を迎えつつある当代屈指の小鼓方を父に持ち、その背中を見ながら、乾いた砂が水を吸い込むようにその芸をどんどん吸収し、めきめきと腕をあげてゆく成田奏さん。前回拝見した時からまだ1か月も経っていないのに、掛け声がさらに御父上のそれに似てきた気がする。
東京で言うと柿原孝則さんのような意欲と情熱とひたむきさを成田奏さんにも感じて、来月末の東西合同にお二人が揃うのだろうと思うと今からわくわくしてくる。










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