2017年10月26日木曜日

椎葉神楽・悠久の舞~能舞台に神々が舞い降りる

2017年10月26日(木)13時30分~18時 国立能楽堂


主宰者挨拶
基調講演 神楽のはじまりと芸能への進化 神崎宣武
     椎葉神楽への誘い       小川直之

神楽公演・第一部
案永(あんなが)、大神(だいじん)、鬼神(きじん)

神楽公演・第二部
ちんち、かんしん、手力男、森の弓、泰平楽、弓通し


能舞台の上に再現された神楽の神庭(こうにわ)
去年の高千穂神楽と比べると、シンプルかつシック


昨年の高千穂の夜神楽に続いて、国立能楽堂での2度目の宮崎神楽公演!

今回は、九州山地にある椎葉村の神楽です。
村内26地区に伝承されている椎葉神楽は、地区によって、舞や衣装、太鼓の調子が異なり、この日上演された「向山日添神楽」は、椎葉村の熊本県境に近い20戸100人ほどの向山日添集落に伝わる神楽だそうです。

椎葉神楽の特色としては;

(1)現在も狩猟や焼畑農業を営む山間部の集落であることから、神楽にも狩猟神事が織り込まれ、山の神の贈り物である猪肉を奉納したり、村人たちで肉を切り分けたり、猪の頭を神前に供えたりする。

(2)仏教色を一掃する唯一神道化の影響がみられず、神仏混淆の唱教が多く残されている。

(3)修験道の影響がみられる。たとえば、採物舞では、錫杖のように鉄の輪に遊環(ゆかん)をつけたものを持ち、頭の鉢巻きの下には、修験者の兜巾を模した三角形や五角形のすみとり紙を挟む。

などが挙げられます。

演奏も太鼓だけというシンプルさ。


祭壇上の神楽面のアップ。向かって右側の面が公演で使用された。


わたしが個人的に感じたのは、
昨年見た日之影神楽や高千穂神楽は。天岩戸伝説などの具体的な物語を演劇的かつ写実的に描いていたのに対して、椎葉神楽は、神話にもとづく「手力男」をのぞけば、抽象的な舞が多く、演劇性に頼らないぶん、舞の技術力・体力に高い水準が求められること。


このように剣を掲げて、大きく反り返る型を数十回繰り返すなどハードな舞


かなりハードな舞の型が連続し、それが長く続くため、相当のスタミナも要求されます。狩猟や焼畑耕作など日々の労働で鍛え抜かれた身体で舞う男っぽい舞。

厳しい自然と対峙しつつ、自然の恵みに感謝するという、現代の都会生活では忘れ去られている感覚が椎葉神楽には息づいていて、それがとても魅力でした。



神楽公演
それぞれの演目を簡単に紹介します(解説はプログラムを参考にしています)。

①案永(あんなが)
案永
椎葉神楽唯一の楽器・太鼓の由来を説く、唱教のみの演目。





②大神(だいじん)

大神
笠、白張、袴の姿で舞う二人舞。
右手に鈴、左手に、大神幣を持つ。


採物となる幣は左から、稲荷幣、五ツ天皇幣、荒神幣、大神幣



③鬼神

鬼神

二人舞。一人は、面、毛笠、白張、袴、青襷、赤緑白の背負い紙。
左手に扇、右手の面棒をバトンのようにくるくる回して舞う。
もう一人は、すみとり紙に赤鉢巻き、白張、袴に赤襷。
鈴と扇で舞う。





④ちんち
ちんち

4人舞。すみとり紙に赤の名が鉢巻き、白の舞衣に赤の紐帯、稲荷幣を腰に差した姿で舞う。
右手に鈴、左手に扇。




⑤かんしん
かんしん
4人舞。すみとり紙に赤の長鉢巻、白の舞衣に赤の紐帯、一組は赤、一組は青の長襷の姿で舞う。
男らしく勇壮な剣舞。



⑥手力雄(たぢから)

手力男
太夫の一人舞。
手力面にしゃぐま、その上に毛笠をかぶる。白張、袴、赤の腰帯、腰には稲荷幣を2本交差させて差す。
右手に鈴、左手には二本組の大神幣を持つ。
凝った型が続く、難度の高い舞。




⑦森の弓

森の弓
右手に鈴、左手に弓を持つ二人舞。
こういうところが、いかにも狩猟の民らしい。



⑧泰平楽

泰平楽

観客も立ち上がって、お土産にいただいた幣を持ち、演者と一緒に舞う。
泰平の世を祈願して。
舞はよくわからなかったけど、楽しかった!

お土産にいただいた幣

観客が会場を出る際には、茅の輪くぐりのように、二本の弓を立てて輪にした間をくぐって、無病息災をお祈りする「弓通し」が行われた。


椎葉村のおもてなしの心に感謝!
舞中心の神楽なので、個人的には昨年以上に楽しめた公演でした!





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