第32回テアトル・ノウ【東京公演】 味方健・お話からのつづき
お話 味方 健
仕舞《生田敦盛キリ》 味方 團
《遊行柳クセ》 味方 健
地謡 河村晴道 分林道治 梅田嘉宏 安藤貴康
舞囃子《三山》 片山九郎右衛門
観世淳夫
藤田六郎兵衛 成田達志 亀井広忠
地謡 観世喜正 角藤直隆 味方團
安藤貴康 鵜澤光
能《山姥 雪月花之舞 卵胎湿化》 味方玄
谷本健吾 宝生欣哉 大日方寛 梅村昌功
石田幸雄
藤田六郎兵衛 成田達志 亀井広忠 観世元伯
後見 清水寛二 味方團
地謡 片山九郎右衛門
観世喜正 河村晴道 分林道治
角当直隆 梅田嘉宏 武田祥照 観世淳夫
さて、解説が終わり仕舞と舞囃子。
仕舞《生田敦盛キリ》 味方 團
やっぱり、林喜右衛門さんに芸風が似ている。
林宗一郎さんは喜右衛門風というよりも、内弟子修業されたせいか、宗家系の芸風が入っているのに対し、團さんは純粋に芸系を受け継いでいるというのが素人の勝手な印象です。
スラリと背が高いことでそういう印象がよけいに強まるのかも。
仕舞 《遊行柳クセ》 味方 健
能というのは、途方もない芸術だと思う。
長い人生の中で培い育まれた芸と魂の成長と、身体的衰え。
その拮抗と調和の微妙なバランスのなかで生み出されるひとつの舞。
型は同じでも、その人個人がその瞬間にしか生み出せない唯一無二の舞。
動きが極端に削ぎ落とされた仕舞《遊行柳クセ》は、味方健という一人の能役者がこの年齢・芸歴でしか到達しえない高い境地の結晶のような素晴らしい舞だった。
京観世三人に銕仙会の安藤さんが加わった地謡も、味方健師の閑寂な境地に添いつつ、華やかないにしえをほのめかす微かな艶を滲ませていた。
この舞に立ち会えた幸せ。
心に刻みつけておきたい。
舞囃子《三山》 片山九郎右衛門×観世淳夫
(視線の端で観ていただけだけど)淳夫さんよかった!
九郎右衛門さんは非の打ちどころがない。
どの角度から見ても、どの瞬間を見ても。
立ち姿の腕の角度、首の位置、間の取り方、身体の動き、どれひとつとっても絶妙な美のポイントにある。
「また花の咲くぞや、花の咲くぞや」で嫉妬心をあらわにする足拍子でも品位を決して失わず、妬ましさに身悶えする女の悲しい業を感じさせる。
袴姿での舞なので装束をつけた時よりも骨格の動きが分かりやすいのですが、九郎右衛門さんが女役を舞う時は、極端に言うとモンローウォークのように骨盤が左右交互にほんの少し上下する。
もちろん、骨盤が上下しても上半身はまったくブレず、身体の軸も斜め上方にスッと伸びている。
上半身に影響を及ぼさず軸を立てたまま骨盤を上下させるなんて、いったいどんな神業なんだろうと思うのですが、たとえばわたしが何十回も観ている《吉野琴》の録画のように、天女のあの優美華麗な姿が生み出されるのは、この骨盤の動きにも秘密があるのだと思う。
これを女性がやると嫌みで下品な舞になる。
男性が創意工夫によって芸のなかに取り込んで初めて創出される虚構の、ほのかで品のある色香なのですね。
第32回テアトル・ノウ《山姥 雪月花之舞》前場・替間「卵胎湿化」につづく
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