"It could be said that the image of Yugen―― a subtle and profound beauty――is like a swan holding a flower in its bill." Zeami (Kanze Motokiyo)
2015年2月13日金曜日
観世能楽堂・楽屋見学ツアー
(13時半開場、14時開演)
能舞台の解説 坂井音晴
仕舞 《高砂》 木月宣行
《羽衣》 坂口貴信
地謡 観世芳伸、坂井音晴
(参加者は見所にて舞台を拝見)
楽屋見学 パート1
御簾の間
囃子の間 (+焙じ室)
狂言の間
脇の間
シテ方の間
御家元の間(中へは入らず拝見のみ)
装束の間
(シテ方の間にて)謡のお稽古体験&能面・装束の説明
楽屋見学 パート2
鏡の間、広廊下、切戸口
(15時15分終了)
観世能楽堂「さよなら公演」の特別企画、楽屋見学ツアーに行ってきました。
個人的にもこうして楽屋内を拝見するのは初めてだったのですが、
観世能楽堂自体、楽屋見学ツアーを開催するのは初めて(そして松濤では最後)だそうです。
上記のように、仕舞あり、謡体験ありで、単なる楽屋見学以上の充実ぶり。
もうすでに定員いっぱいいっぱいでキャンセル待ちとのことで、
この日も定員30人のところ、参加者は約40人。
しかも日経の取材も入っていたので、
ツアーコンダクターの4人方(観世芳伸師、木月宣行師、坂口貴信師、坂井音晴師)は
てんてこまいだったようです。
(当初ツアコンは3名の予定だったそうですが、参加者が増えたため、
芳伸師が急遽呼ばれたそうです。)
これからツアーに参加される方々にはネタばれになってしまうので、詳しくは書けませんが、
案内していただいた時に、芳伸師からいろんなこぼれ話やウンチクをうかがえて、
とても楽しかったです。
(こぼれ話メモ)
・唐織を新しく注文すると500万~数千万円かかる。
・能楽師は芸の上達祈願として、宗家所蔵最古の蜻蛉の法被(《朝長》の装束)から剥落する金糸を舐める。
・その蜻蛉の法被の絹糸はペルシア産のもの。 シルクロードで運ばれ、中国から足利将軍に献上された絹糸で法被の生地が織られた。
・道成寺の鐘の重さが100キロもするのは鐘の縁に藁を詰めてあるから。
・能面の良し悪しは口元で決まる、口元がキリッとしているのがいい。
・火事の時に観世宗家が真っ先に持って逃げるのは花伝書。
・能面は、塗りが剥落しないように、紐を通す孔のところを持つ。
・唐織を着た時は、左手は印を結び、右手は褄を押さえる。
・シテは揚幕が上がると、笛柱をめざして橋掛りを進む。
楽屋の中庭では美しく咲いた紅梅に鶯が戯れていて、一幅の絵のようでした。
楽屋内を拝見して思ったのが、
シテの間は地謡もいらっしゃるのでそれなりの広さはあるのですが、
囃子・狂言・脇のお部屋が意外に狭いこと。
特に囃子方って、それぞれの後見も入れると相当な数になると思うのですが、
あれだと(6~8畳1間くらい?)スシ詰め状態なんじゃないかなー。
焙じ室も隣接しているので、猛暑日には灼熱地獄になるかも。
(お囃子好きなので、つい、囃子方に同情的になってしまいます。)
それと、
ふだん見所からは分からないのですが、
切戸口から見ると、舞台上のよく使用される場所には
擦れた跡がたくさんついていて、
観世能楽堂43年の歴史が刻まれたような味わい深い趣がありました。
楽屋は各部屋や廊下がとても効率よく配置され、
長い年月をかけて洗練を重ねたうえで生まれた「用の美」のデザインなのだと
あらためて気付かされます。
能楽師の方々もテキパキと効率よく立ち回らないと邪魔になるので、
無駄のない動きが要求されるのでしょう。
こうして楽屋まで拝見すると、
松濤の能楽堂がよけいに名残惜しくなりますね。
能楽師の聖域、鏡の間で拝見した揚幕が上がる瞬間は印象的でした。
橋掛り、舞台、見所。
世界が開かれる瞬間。
非日常的な空間感覚。
あの世からこの世への誕生の瞬間。
胎児が子宮から生ま出る瞬間もこのようなものなのでしょうか。
思い出に残る貴重な体験でした。
企画してくださった観世会の皆様、
そして案内してくださった能楽師の方々、
ありがとうございました!
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