2017年7月22日土曜日

テアトル・ノウ東京公演《三笑》《舟渡聟》仕舞三番

2017年7月22日(土)14時~17時40分 32℃ 宝生能楽堂

能《三笑》慧遠禅師 味方健→味方玄 
   陶淵明 味方玄→河村晴道 陸修静 味方團 
   唐子 谷本悠太朗 白蓮社門前の者 野村太一郎
   杉信太朗 成田達志 亀井広忠 観世元伯→小寺真佐人
   後見 片山九郎右衛門 河村晴道→ツレ 谷本健吾
   地謡 観世喜正 山崎正道 浅見慈一 角当直隆
      梅田嘉宏 安藤貴康 武田祥照 武田崇史

狂言《舟渡聟》船頭・舅 野村万作 聟 中村修一
     姑 高野和憲 後見 野村太一郎

仕舞《屋島》   観世淳夫
  《花筐・狂》 片山九郎右衛門
  《天鼓》   観世喜正
  地謡 山崎正道 分林道治 川口晃平 武田祥照

能《巴・替装束》里の女/巴御前の霊 味方玄
  ワキ 宝生欣哉 アイ 高野和憲
  一噌隆之 大倉源次郎 亀井忠雄
  後見 清水寛二 味方團
  地謡 片山九郎右衛門 河村晴道 分林道治 谷本健吾
     川口晃平 鵜沢光 観世淳夫 武田崇史


《三笑》といえば、三年前のテアトル・ノウで、幽雪&九郎右衛門&淳夫の祖父・叔父・孫三代が舞った舞囃子《三笑》を思い出す。
これについては幽雪さんが、亡くなる数か月前にご出演されたラジオ番組で、孫との共演についてとても嬉しそうに語っていらっしゃった。
味方玄さんによる師匠孝行の企画だったと今にして思う。

そして、今回は父兄弟による親孝行の演能企画━━。
と、思いきや、味方健師はやはり休演で、上記のような配役に。
河村晴道さんは好きなシテ方さんなのでこれはこれで嬉しいけれど、味方ファミリーの思い出づくりに立ちあえなかったのは残念。

時間があまりないので、印象に残ったことだけササッと記述します。


能《三笑》
まずは、野村太一郎さんの狂言口開。
この方は数か月単位で顔がどんどん変わってくる。
大人の男のいい顔つきになっていく。
1年前はハムレットか、平泉に身を寄せた義経のような迷える青年のイメージだったけど、いまはみずから道を切り拓く一人の強い男になりつつある。
この口開も曲の冒頭にふさわしい存在感があり、発声も見事だった。
茨の道だけれど、花も才能もある方なので邁進してほしいな。


それから、小寺真佐人さんの太鼓がかなりよかった。
とくに「楽」の高音の掛け声。
もともと巧い方だったけれど、(とくに大曲の)舞台回数が増えたこともあり、この半年でグンと、さらに進化されたのではないだろうか。


三人の相舞は、唐団扇を逆手に持った時のカマエひとつをとっても、やはり味方玄さんが抜きんでていて、気の緩みや隙がまったくない。
かといって、無駄な力はどこにも入っておらず、「老人らしい」の立ち居振る舞いや所作、謡にはとりわけ驚かされた。
若い人が無理して老人を演じているようなところがみじんもなく、じつに絶妙な枯れ具合で、シテの慧遠禅師になりきっていた。

この慧遠禅師に、新しい味方玄の側面を見たような気がした。
ただたんに年老いて枯れているだけでなく、深山幽谷のなかで悠々と隠棲する老僧の超俗的な品位がつねに醸し出されている。
たとえていうなら、リアルに年老いた名手から、老醜だけを漉し取ったような老人ぶりといえばいいだろうか。

年代的・立場的に実際の上演は難しいのだろうけれど、この方の、この年代での、老人物を観てみたい気がした。



狂言《舟渡聟》
ロビーで少し休憩していたので、それほど観れなかったのですが、高野さんの姑ぶりがよかった。
《大般若》の神子舞を見て以来、個人的に高野和憲さんは注目株。



仕舞三番(地謡は梅若風)
観世淳夫さんの《屋島》。
この方も伸び盛り!
謡も、この日はぜんぜん気になるところがなく、舞は若々しい修羅能そのもの。
迫力と清々しさ、威勢のよさ。
拝見するたびに、将来が楽しみになってくる。

そして、九郎右衛門さんの《花筐・狂》。
めちゃくちゃ楽しみにしていたのです。
それなのに……わたしの席からは、仕舞の半分は九郎右衛門さんの姿がまったく見えなくて、まともに連続して舞が拝見できなかったので、まとまった感想を書くこともできず。

もう当分、九郎右衛門さんの舞は拝見できないのに……悲しすぎる。



観世喜正さんの《天鼓》。
いつもの喜正さんらしい仕舞。
飛び返り二回のアクロバティックな天鼓。
わたしのなかでは、友枝昭世さんの袴能《天鼓》のイメージが強いから、演者や演能形式が違えば、まったく別の曲のようになるのですね。


《巴・替装束》につづく


 

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