2019年8月30日金曜日

第50回東西合同研究発表会《花月》《車僧》など

2019年8月27日(火)京都観世会館

舞囃子《高砂五段》惣明貞助
 貞光智宣 岡本はる奈 柿原孝則 中田一葉
 豊嶋晃嗣 山田伊純 向井弘記 湯川稜

舞囃子《芦刈》石黒空
 山村友子 清水和音 森山泰幸
 辰巳孝弥 高橋憲正 佐野弘宜 上野能寛

能《花月》西野翠舟
 ワキ矢野昌平 アイ小西玲央
 杉信太朗 成田奏 河村裕一郎
 寺澤幸祐 笠田祐樹 山田薫
 浦田親良 寺澤拓海 梅若秀成

舞囃子《邯鄲》樹下千慧
 平野史夏 岡本はる奈 亀井洋佑 姥浦理紗
 橋本忠樹 梅田嘉宏 河村和晃
 河村浩太郎 谷弘之助

舞囃子《野守》高林昌司
 山村友子 清水和音 亀井洋佑 中田一葉
 塩津圭介 佐藤寛泰 佐藤陽 谷友矩

舞囃子《経正》谷弘之助
 貞光智宣 吉阪倫平 河村凛太郎
 大江信行 河村和貴 大江広祐
 河村浩太郎 樹下千慧

狂言《口真似》茂山虎真→井口竜也
 茂山竜正→茂山千五郎 柴田鉄平

舞囃子《百万》金春飛翔
 高村裕 成田奏 河村凛太郎
 本田布由樹 本田芳樹 政木哲司 金春嘉織

舞囃子《雲雀山》大槻裕一
 槌矢眞子 寺澤祐佳里 森山泰幸
 笠田祐樹 山田薫 浦田親良 寺澤拓海

能《車僧》宇髙徳成
 ワキ岡充 アイ上杉啓太→小笠原匡
 高村裕 唐錦崇玄→曽和鼓堂 山本寿弥 澤田晃良
 後見 豊嶋幸洋 山田伊純
 金剛龍謹 豊嶋晃嗣 宇髙竜成
 向井弘記 惣明貞助 湯川稜



東京の第48回、大阪の第49回、そして京都の第50回と、この2年間3回連続で拝見してきた東西合同研究発表会。
こうして見てみると囃子方・ワキ方は「東西合同」だけれども、能・狂言のシテは3回とも関西勢なんですね(関西では10~30代の若手能楽師さんが充実しているから?)。
東京の若手囃子方さんが懐かしくて、ちょっとウルッと来てしまった。

いつもながら見所後方には、大御所能楽師さんたちがずらりと勢ぞろい。錚々たるメンバーの厳しい目に見守られて、若手の方々はめちゃくちゃ緊張しただろうなあ~。



舞囃子《高砂五段》惣明貞助
柿原孝則さんはさらにパワーアップして、お囃子をぐいぐいリードされていた。岡本はる奈さんは以前にも増して、小気味よい音色。
貞光智宣さんをはじめ関西の笛方さんは総じてレベルが高い。
シテの惣明貞助さんは、じめじめしたお天気を吹き飛ばすような颯爽とした舞いっぷり。



能《花月》西野翠舟
西野さんは、6月の大阪能楽養成会で舞囃子《松虫》を拝見した時から注目していて、今回の能も期待通り。前にも書いたけれど、一般公募生でこれだけきっちりした良い舞台を上演されるとは! 姿勢と型が、どの角度から見てもきれいに決まっている。
欲を言えば、アイとのやり取り「げに恋は曲者」の場面で、もう少し色っぽさが出ればもっとよかったけれど……でも、見応えのある《花月》でした。

ワキの矢野昌平さん、青翔会のときから拝見してきたけれど、謡に磨きがかかり、姿にも風格が出てきた。

成田奏さんの小鼓は気合充実。繊細な気遣いも感じられ、何よりも安定感がある。シテや他のパートの囃子方から信頼を寄せられる囃子方さんになりはると思う。

地謡は、同じ観世流でも大阪の地謡は京都とはちょっと違う。骨太で、ずっしりした響き。良い地謡。

(この日の地謡は流儀や地域によって特色があり、それぞれの持ち味が出ていて、耳福だった。)



舞囃子《邯鄲》樹下千慧
もはや中堅の亀井洋佑さん、いまも研究発表会にご出演されていることがちょっと不思議だけれど、貫禄が別格。
姥浦理紗さんは、コツコツと着実に前に進んでいらっしゃる。国立能楽堂の図書室でよくお見かけした。努力家で勉強熱心な方。

シテの樹下さんには独特の「花」がある。京都らしい芸風。



舞囃子《野守》高林昌司
京都の高林昌司さんは東京の喜多流若手とはちょっと違う。
関西の能楽師さんはそれぞれに個性がある。中央から離れているおかげで、のびのびと個性を伸ばせるからかしら。

受け継ぐべきものを受け継いだうえで「個性」をもつことは、役者さんにとって大事なことだと思う。どんなにうまくても、没個性的な芸は代替がきく。
この人の舞台が観たい、この人のあの曲が観たいと思わせる魅力。そういうものを関西の若手能楽師さんたちは潜在的にもっている。



舞囃子《経正》谷弘之助
以前から気になっていた谷弘之助さんの舞囃子。
身体の線が細く、身軽でキレがあり、緩急のつけ方にセンスがある。

吉阪倫平さんと河村凛太郎さんの組み合わせは息がぴったり。



狂言《口真似》茂山虎真→井口竜也
シテの代演された井口竜也さんがよかった。

それにしても今回の東西合同は休演が多くて、少し心配。高齢ならまだしも、休演した方々はまだ20~30代。上杉啓太さんの間狂言は、楽しみにしていたからほんとうに残念。



舞囃子《百万》金春飛翔
個性的といえば、金春飛翔さんがダントツに個性的。この方が謡い舞いはじめると、舞台の空気が一変する。中世の大和にタイムスリップしたような、山深い神域で行われる神聖な儀式に立ち会っているような、そんな気分になる。

地謡の大半は東京金春流のメンバー。この日の地謡は良かった。

高村裕さんの笛、一噌流の笛を聴くのは久しぶりすぎて新鮮。



舞囃子《雲雀山》大槻裕一
大槻裕一さん、文蔵師の芸風にますます似てきた。端正で、うますぎる。ほとんど老成したような舞姿。




能《車僧》宇髙徳成
はじめて観る《車僧》。脇座に破れ車の作り物が出される。
恰幅のいい宇髙徳成さんは、前シテの山伏姿がサマになる。

車僧という難しい役を岡充さんが好演。
ちょっかいを出すアイを一蹴し、太郎坊との法力比べも大迫力! 「払子を上げて虚空を打てば」の謡は、マジカルな念のこもった力強い謡。太郎坊が降参するのも無理はないと思わせるほど、説得力のある高僧ぶりだった。


そして、注目の澤田晃良さん。
やっぱり、この方の太鼓の音色がいちばん観世元伯さんの太鼓の音に近い。
本来なら元伯さんも、この見所のどこかでご覧になっていただろうに……そう思うと、胸が熱くなって涙があふれそうになる。
澤田さんだって、まだまだ師匠の後ろに座って、もっともっと多くのことを貪欲に吸収したかっただろうに。
端然と座り続ける姿や、舞台への気の入れ方、粒のひとつひとつを「一球入魂」の精神で打つところなど、お師匠様を彷彿とさせた。

私が澤田さんの太鼓を聴くことはもう当分ないだろうけれど、これからのご活躍を心よりお祈りいたします。





4 件のコメント:

  1. 令和4年8月30日に東西合同発表会が国立能楽堂で開催されましたが見に行かれましたでしょか?
    夢ねこさんの更新が止まっていて寂しく思っています。また若手能楽師に檄を飛ばしてください。

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  2. 匿名さま、コメントありがとうございます。
    返信が大変遅れまして申し訳ございません💦 
    現在は関西在住なので東京での観能からは遠ざかっておりますが、関西ではごくたま~に拝見しております😊

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  3. 夢ねこさま
    返信嬉しく思います。令和5年8月に大阪で東西合同発表会があるようです。是非夢ねこさまの感想をお聞かせいただきたく思います。コロナに負けず頑張っている若手能楽師をまた見て欲しいです。

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  4. コメント、ありがとうございます。
    半年以上たってからコメントに気づき、お返事が遅れてしまい本当に申し訳ございません💦
    大阪での東西合同発表会は都合がつかず行けなかったのですが、プログラムを拝見して、懐かしい御名前や新しい御名前を発見したり、当然あるはずの御名前がなくて「どうなさったのだろう?」といろいろ思うところがあったりで、私が観ていたころとは隔世の感があるような気が致します。
    しばらく遠ざかっていると、能楽堂の敷居が高く感じてしまう今日この頃です……。

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