2019年8月4日日曜日

片山家能装束・能面展~継承の美

2019年8月3日(土)京都文化博物館

今年で23回を迎える片山家の能装束・能面展。

九郎右衛門さんの講演「片山家の能面と能装束」は、謡《鞍馬天狗》の稽古体験(口移しのお稽古)あり、能面・装束のお話あり、装束着付けのデモンストレーションありと、盛りだくさん。

終了後も、御当主みずから展示品についての解説があり、こちらの質問にも丁寧に答えてくださって、貴重なお話をたくさんうかがうことができました。ほんとうに驚くほど誠実な方。


展示品のなかには、能《大典》で使用した菊の冠や天女の鳳凰天冠、御大典記念扇なども。

能面は昨年は美女ぞろいだったので、今回は男面がずらり。
面打ちの見市泰男氏からエピソードを交えての解説もあり、興味深く拝聴しました。


以下は自分用のざっくりとしたメモ。

【能面】
《猅々(ひひ)》作者不詳:《鵺》の後シテに使われた。伊勢猿楽などでは、天下一河内《小癋見》と一対で阿吽の面として、《翁》の前に舞台を清めるために使われたとも。

《小癋見》天下一河内:《猅々》と一対で阿吽の面として、《翁》の前に舞台を清めるために使われたらしい。

《翁》石井三右衛門

《飛出》大光坊(井関家出身の幻の面打ち)の貴重な作例となった面。幽雪師が海外のオークションで落札し、箱を開けた時に、ボロボロと表面が剥落してしまったという。《船弁慶》の後シテに使用。剥落して表情が崩れたところが、海から現れた知盛の亡霊の雰囲気とマッチして、功を奏したようです。見てみたかった。

《阿波男》作者不詳、目に金具→神様役に使われる。

《釣眼》作者不詳:大飛出と同じような用途で、《国栖》の蔵王権現などに使われる。

《男蛇(おとこじゃ)》作者不詳、《竹生島》や《玉井》などの龍神に使われる。

《小癋見》赤鶴作

《小飛出》作者不詳、様式化されていない独特の造形

《黒髭》伝赤鶴、顰のようにかッと開いた口、こちらも《竹生島》の龍神などに使われる。

《大癋見》出目洞水満昆、《大会》のときに《しゃか》の面の下に掛けるので小ぶりの大癋見。
《しゃか》近江、《大会》のときに《大癋見》の上に掛ける。

《三日月》宮王道三、目に金具がついたこうした面は、かつては神様の役専用に使われていたが、江戸時代以降、面の解釈に変化があり、武将の霊にも使われるようになった。その結果《高砂》の後シテなどには《三日月》の代わりに《邯鄲男》が使用されるようになる。

《中将》洞白、目がキリッと引き締まった表情をしており、おもに平家の武将などに使われる。

《中将》作者不詳、こちらは甘くなよやかな表情で、《融》などの公達に使われる。



【装束】
・紺地金立湧浪ノ丸厚板唐織
・赤地金立湧浪ノ丸厚板唐織

色違い赤地・色違いの厚板唐織。オリジナルは紺地のほう。赤地と紺地の写しを新調したが、紺地の写しのほうはブンパクの所蔵になってしまったとか。
この紺赤の厚板唐織は、《渇水龍女》という、《一角仙人》の女性ヴァージョンのような復曲能を上演した際に、龍王と龍女の衣装として使用されたとのこと。
また、ぜひとも再演してほしいですね。


・紅・萌黄・黒紅段枝垂桜ニ御所車唐織
以前、九郎右衛門さんがEテレ「美の壺」の「西陣織」編でご出演された時に紹介してはった装束。300年くらい前のものですが、いちばん高価とされる黒紅の色がきれいに残っていて、見惚れてしまうほど。やはり《熊野》で使用することが多いとか。
間近で拝見できて感無量。


・濃萌葱地萩ニ山桃長絹(新旧)
江戸初期のオリジナル装束と、その写しが展示されていて、見事に復元新調された姿と比較できるのがうれしい。九郎右衛門さんは筋金入りの装束マニアで、織元や染色家の方々と装束をこだわり抜いて復元or新調されるのがとてもお好きなようです。装束のお話になると目がキラキラしてはります。

私も会場に3時間近くいたのですが、まだまだぜんぜん観足りない。お話をうかがいながら拝見すると、味わいもひとしお。もっとじっくり観ていたかった。


片山九郎右衛門さん、関係者の方々、ありがとうございました。



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