2019年6月6日 大槻能楽堂
能《殺生石》シテ 寺澤拓海
ワキ喜多雅人 アイ善竹隆司
槌矢眞子 成田奏 山本哲也 中田弘美
後見 赤松禎友 西野翠舟
地謡 齊藤信輔 上野雄介
大槻裕一 浦田親良
仕舞《敦盛キリ》金春飛翔
金春穂高 金春嘉織
小舞《貝尽し》小西玲央
善竹彌五郎 善竹隆司 上吉川徹
舞囃子《巻絹》高林昌司
貞光智宣 清水皓祐 山本寿弥 中田一葉
高林白牛口二 高林呻二
舞囃子《松虫》西野翠舟
貞光智宣 清水皓祐 山本寿弥
大槻裕一 浦田親良 寺澤拓海
終了セレモニー
大倉流祖先祭の余韻冷めやらぬまま、ふたたび大槻能楽堂へ。
大阪能楽養成会にうかがうのは半年ぶりでしたが、以前にも増して熱気があり、若いエネルギーが炸裂。レベルの高さをあらためて実感しました。どれも見応えがあって、お世辞抜きですごかったです!
能《殺生石》
びっくりするくらい、よかった!
シテの寺澤拓海さん、うまいですね。
冒頭から、手ごたえのあるシテの出。唐織姿がスーッとしていて美しく、かつて鳥羽院の寵愛を受けた絶世の美女にふさわしい。妖しい雰囲気さえ漂っている。
面を掛けていても、よく通る声が聴きとりやすく、謡も見事。
大小鼓の息もぴったりで、成田奏さんの艶のある掛け声と槌矢眞子さんの笛が、那須野の原の荒涼とした風景を描写する。
中入直前、「石に隠れ失せにけりや、石に隠れ失せにけり」で、クルクルッと素早くまわって石の作り物に消えてゆくシテの姿が、狡猾で敏捷なキツネの影と重なって見える。
妖狐の本性が見え隠れする瞬間。
物着も装束付は研修生の方々。前シテの唐織着流もピシッと決まっていたけれど、後シテもきれいな着付。
後場の山場、三浦・上総両介の軍勢に追い詰められ、射伏せられる場面は難しい型の連続。ここが観ていて爽快なほど型のつながりが流麗で、どの瞬間をとっても身体の線が崩れず、きれい。
「御僧に約束固き石となって」で、飛び返りで下居して、左袖を頭上で返し、ビシッと決めポーズ。最後は、左袖をまいて留拍子。
この若さで、このクオリティ。拍手喝采を送りたい。
仕舞《敦盛キリ》
奈良の金春流は型のスタイルも謡の節も他流とはあまりにも違うので、わたしにはよく分からないのですが、どういうわけか不可思議な魅力があって、強力な磁石に吸い寄せられるように、舞台に引き込まれてしまう。
金春飛翔さんの舞と地謡の謡にはいつもながら強い呪力があり、敦盛の最期を再現することでその霊を弔う「鎮魂の儀式」を観ているよう。
独自の芸風、他流では味わえない独自の魅力。
この方の舞を観るのが、大阪養成会の楽しみのひとつ。
小舞《貝尽し》
《玉井》の華やかな舞台を思い出しますね。
この日は、小西玲央さんの養成会修了式。その晴れやかな門出にふさわしい晴れやかな曲。
舞囃子《巻絹》
これもよかった!
シテの高林昌司さんは相変わらず謡がいい。
そして、立ち上がって構えたときから、巫女らしい清らかなしなやかさと柔らかみがあり、舞姿がとても優雅。
神楽は、下掛りなので五段六節たっぷりある本五段。
笛の貞光智宣さんが最初は苦しそうだったけれど、ベテランの清水皓祐のリードもあって徐々にテンポを増し、後半の七つユリからさらにアップテンポとなり、トリップ感が高まって、こちらの気分も盛り上がる! これだよね、五段神楽の醍醐味は!
最後の「神はあがらせ給ふと云ひ捨つる」で、放心したように安座したシテの身体から、憑依した神がふう~っと抜けていった。
ここの表現がとりわけ見事でした。
舞囃子《松虫》
西野翠舟さん、この方も上手い!
緩急のつけ方にセンスがあるし、舞姿がキリッと引き締まってかっこいい。
終了セレモニーで知ったけれど、一般公募で研修生になられた方なんですね。それでこんなに上手いなんて驚きです!
お囃子もいい!
大鼓の山本寿弥さんがノリにノッテいて、黄鐘早舞のような曲がお好きなんだろうなあと思う。先日の片山九郎右衛門さんが舞った《邯鄲》の大鼓も気合が入っていて、凄くよかった。音色もとてもきれい。
貞光さんの笛にも躍動感があって、こちらの胸も高鳴ってくる。
大阪能楽養成会修了式
最後は、舞台上で修了証書の授与式。
大槻文蔵師や成田達志さん、会長さん(?)たちから修了生へ授与。
終了された方々は、専科(お家の子弟)が浦田親良さん、大槻裕一さん、寺澤拓海さん、一般公募生が小西玲央さん、西野翠舟(みふね)さん。
いずれも精鋭ぞろい。
今後のご活躍がほんとうに楽しみ。
おめでとうございます!
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