ロビーに飾られた観阿弥祭のお供え |
ツレ里女/小野小町 味方團
ワキ旅僧 江崎正左衛門
左鴻泰弘 吉阪一郎 河村大
後見 杉浦豊彦 吉浪壽晃
地謡 河村和重 河村博重 越智隆之
片山伸吾 田茂井廣道 深野貴彦
大江広祐 樹下千慧
狂言《粟田口》大名 小笠原匡
太郎冠者 山本豪一 すっぱ 泉槇也
後見 安田典幸
能《隅田川》シテ狂女 浅見真州
子方・梅若丸 味方遙
ワキ渡守 宝生欣哉 旅人 野口能弘
杉市和 大倉源次郎 國川純
後見 大江又三郎 味方玄
地謡 片山九郎右衛門 浦田保浩
古橋正邦 浦田保親 浅井通昭
橋本忠樹 大江泰正 河村浩太郎
仕舞・観阿弥祭
《芦刈》 井上裕久
《自然居士》浦田保浩
《芭蕉》 片山九郎右衛門
《猩々》 大江又三郎
能《鵜飼》シテ尉/閻魔 吉田篤史
ワキ旅僧 江崎欽次朗 和田英基
アイ所の者 泉槇也
森田保美 曽和鼓堂 河村裕一郎 前川光長
後見 井上裕久 分林道治
地謡 橋本光史 大江信行 林宗一郎
松野浩行 梅田嘉宏 宮本茂樹
河村和貴 浦田親良
いつものとおり開場直前に行ったら、すでに長蛇の列。しまった! 油断してもうた!(>_<)
この日は1階はもちろん満席で、2階の学生席もかなりの入り。今年になってから毎回ほぼ満席じゃないかな。今年度からHPもリニューアルしたし、ツイッターや字幕サービスも始めたし……京都観世会、絶好調!
公演自体も、詰めかけた客の期待を裏切らない充実した内容で、とくに浅見真州さんの舞台は私が見たなかで最高の《隅田川》だった。
ところで、冒頭の画像にある通り、この日は観阿弥祭。
観世流の祖・観阿弥の命日(5月19日享年52才)を新暦に直して、6月に行われるそうです。観阿弥祭なのに何故《芭蕉》や《猩々》が舞われるのだろう?と思ったら、かつて観阿弥作と考えられていたため、昔からの習わしとして継承されているとのこと。
この日の中盤に行われた観阿弥祭では、流祖に敬意を表して、シテも地謡も裃姿で登場。
仕舞4番のシテはそれぞれ名家の当主で、舞のうまい方ばかりだけれど、九郎右衛門さんの《芭蕉》はやっぱり、なんか、ぜんぜんちゃうっ!
切戸口をくぐって舞台に入ってきた瞬間から、堂内の空気が一変する。
夜明け前の寒稽古のような、ピンと張りつめた空気、清浄で、侵しがたい空気があたりを支配する。
ハコビの一足一足からは人間的な要素が漂白され、精霊のような、森の魂のような、露のように儚い女の美の名残りのようなものが漂い出る。
仕舞《芭蕉》は「水に近き楼台は」から「立ち舞ふ袖しばしいざや返さん」までの舞グセの部分。
禅竹らしい「露」や「虫の音」といった詞がちりばめられ、詞章からも、九郎右衛門さんの舞からも、「存在のはかなさ」が、まるで半透明のガラス越しに見るように見え隠れする。無相真如、諸法実相といったとらえどころのない思想を、型や形を超越した、とらえどころのない抽象的な舞が描いてゆく。
九郎右衛門さんの舞を観るたびに、同じものをふたたび見ることのない、一度かぎりのかけがえのない舞台という思いが強くなる。
もう二度と観ることのない舞台。
九郎右衛門さんのシテでぜひとも拝見したい能はたくさんあるけれど、そのなかでとりわけ《芭蕉》が観てみたい。ほとんど悲願に近いこの願いが叶うことがあるのだろうか?
《通小町》《粟田口》《鵜飼》・《隅田川》につづく
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