2019年1月22日火曜日

京都能楽養成会研究公演

2019年1月21日(月)17時30分~20時20分 京都観世会館

舞囃子《高砂》シテ 樹下千慧
  杉市和 吉阪倫平 河村大 前川光範
  地謡 梅田嘉宏 河村和晃
     河村浩太郎 大江広祐

舞囃子《小塩》シテ 大江広祐
  森田保美 唐錦崇玄 河村大 前川光範
  地謡 大江信行 河村和貴
     河村浩太郎 樹下千慧

舞囃子《巴》シテ 廣田幸稔
  森田保美 曽和鼓堂 河村裕一郎
  後見 豊嶋晃嗣
  地謡 宇髙徳成 山田伊純 惣明貞助
     湯川稜 向井弘記 辻剛史

小舞《雪山》茂山七五三
  茂山千作 茂山千五郎 井口竜也
  茂山虎真 茂山竜正

能《東北》シテ 片山九郎右衛門
  ワキ 宝生欣哉 アイ 茂山千五郎
  杉市和 吉阪一郎 河村凛太郎
  後見 大江信行 梅田嘉宏
  地謡 味方玄 橋本忠樹 河村和貴
     河村和晃 大江広祐 樹下千慧




いまだに信じられない。こんなに豪華な番組&配役が研究公演なんて! 番組をいただいたときはミスプリントかと思って、二度見したほど。

こちらに来てからよく感じるけれど、京都ってすごい。次世代の育成にどれほど心血を注いでいるのか、この公演を観ただけでもその熱い思いが伝わってくる。研修生の方々も、講師陣の熱演に応えるだけの意気込みとパフォーマンスを披露されていて、なんかちょっと、感動的で、胸が熱くなった。



舞囃子《高砂》
冒頭からホームラン連打か!というくらい、スカッとカッコいい《高砂》。

まず、お囃子が素晴らしい。
わが家の家宝DVDの舞囃子《高砂》の笛と太鼓も、杉市和さんと前川光範さんなのだけれど、京都の《高砂》といえば、このお二方の笛と太鼓というぐらい、わたしの脳にはこのお二人の音色がインプットされている。
杉市和さんの笛にはほかの誰にも出せない、やみつきになるような独特の味わいがある。

そして、前川光範さんの超絶に凄い腹筋と背筋による、からくり人形のようなバチさばき、あざやかな早打ち、絶叫のように響きわたる掛け声。関西で《高砂》といえば、やはり、この方の太鼓の右に出るものはない。

ここに、河村大さんと吉阪倫平さんの大小鼓が絡んでくる。倫平さん、相変わらずの天才児ぶり。いや、天才児というよりも、小鼓の腕では、もうすでにれっきとした大人顔負けのプロ。掛け声も声変わりの声がだいぶ安定してきて、河村大さんとの掛け合いも聴き応え十分。
地謡も京都観世らしい謡。大江広祐さんのワキ謡も素敵だった。

さらに、シテの樹下千慧さんがよかった!
謡に明朗で颯爽とした伸びやかさがあり、舞の緩急の付け方にも品格とキレがあって、観ていてじつに清々しく、目が釘付けになる。この方の舞のリズム、間の取り方は、どことなく九郎右衛門さんに似ている。目に美しい舞姿だった。



舞囃子《小塩》
曲趣がガラリと変わり、「動」から「静」へ。
大江広祐さんは細身で背が高いし、宝生流のように腰を低く落とさないので、どうしても腰高に見えてしまうけれど、それでいて、体の軸がまったくブレていない。

こういう体型で、これくらい腰高の構えだと遠心力に影響されそうなものなのに、足拍子も安定していて、盤石の姿勢。鍛え抜かれた、しなやかな鋼のような足腰なのかもしれない。
(細身&長身で体がふらつきやすい人は、こういう人に習うといいのかも。)


序ノ舞は「気」が内へ向かって放出され、身体の中心が充実している。ひとつひとつの所作はきわめて繊細なのに、熱く、強い芯のようなものを感じさせる。何かを訴えかけてくるような舞、観る者に想像の余地を与えてくれるような舞だった。

お囃子もしっとりとした趣きがあり、唐錦崇玄さんもとくに序ノ舞の序の小鼓がたっぷりとしていて、地謡にもどこか雅やかな優しさがあった。




舞囃子《巴》
先月も、金剛若宗家の《巴》を拝見したばかり。
後シテの出をのぞいて、後場のほとんどを舞い、薙刀、笠、小袖、小太刀などの道具も使うので、これはもう袴能のようなもの。後見の豊嶋晃嗣さんがさりげないながらも、けっこう忙しく立ち働いておられた。

シテの廣田幸稔さんはベテランらしい、そつのない所作と動き。
「涙にむせぶばかりなり」とシオリ、少し間をおいてから、「かくて御前を立ち上がり」で、すっくと立ちあがる。

この決然と立ちあがるところに、巴の女らしさと、気丈さ、健気さが描写されていた。巴だけでなく、女という、この上なく強い性を象徴するような表現だった。

地謡は観世とはひと味違う奥行きを感じさせ、お囃子で研修生の河村裕一郎さんの掛け声が良かった。



茂山七五三さんの小舞《雪山》、拝見したかったのですが、休憩なしのノンストップ公演なので、休憩時間にあてました。


片山九郎右衛門の《東北》につづく



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