先斗町歌舞練場、武田五一設計、1927年 |
今月25日から「えき」KYOTOで開催される日本画新展2019のシンポジウムへ。
会場となった先斗町歌舞練場は、建築的にも興味深い場所です。
屋根の上には、舞楽面「蘭陵王」の像 |
歌舞練場入口の屋根の上に鎮座している謎の像。
一瞬、ロマネスクの怪物? ゴシック建築のガーゴイル? と、思ってしまいますが、これは舞楽面の「蘭陵王」を象ったもの。
蘭陵王は歌舞音曲の神様なので、歌舞練場の守護神にぴったりです。
蘭陵王の両脇に、小さな太鼓があるのが見えますでしょうか?
先斗町が鴨川と高瀬川に挟まれている、つまり「川」と「川」に挟まれているのを、「皮」と「皮」に挟まれた太鼓に見立て、太鼓が「ポン」と鳴ることから、「ぽんと町」と呼ばれるようになった、という名前の由来の一説を図像化したもののようです。
なんだか、遊び心がありますね。
レトロすぎるほどレトロな外観 |
それでは、なかに入ってみましょう。
オープニング:先斗町の舞妓さんによる舞
《梅にも春》
《祇園小唄》《鴨川小唄》
地方 かず美さん
舞妓 市結さん、市すみさん、市愛さん
パネルディスカッション
原田マハ(小説家)
林潤一(日本画家)
野地耕一郎(泉屋博古館分館長)
丸山勉(日本画家)
コーディネーター 田島達也(京都市立芸大教授)
冒頭の舞妓さんの舞が素敵でした。
この日は最前列に座っていたので、間近で拝見できてラッキー。
この時期にぴったりの春らしい演目で、舞妓さんたちのお着物も、水色やラベンダー色、菜の花のような明るい黄色など春らしい色合い。
「ぽっちり」の帯留めもゴージャスにきらめき、髪には正月らしい松竹梅の簪。
日本の女性美の結晶のようなあでやかさ。
腰や肩の動きがなんとも優美で、手の表現がしなやかで、やわらかい。
美酒に酔ったように、うっとりと見惚れてしまう。美しいものって、どうしてこんなに人を幸せにするのだろう。
地方さんの声にも、凛としたなかに艶っぽい色気があって、素敵だなぁ。
それにしても、舞妓さんだからお稽古歴もそう長くないと思うのですが、やっぱりプロって凄い! これだけ人を惹きつける魅力があるのですもの。
プロとしての心構えを持ち、厳しい稽古を重ねた人のもつオーラ。人に見られて、憧れられて、輝きを増す独特のオーラを彼女たちはまとっている。
たおやかで、露のようにきらりと輝く美しい舞。いつまでも観ていたかった。
パネルディスカッションでは、パネリストそれぞれが好きな日本画を3点ずつ紹介して、その良さを語るというコーナーがあり、紹介された作品を以下に挙げるとこんな感じ。
原田マハ氏は、竹内栖鳳《若き家鴨》、福田平八郎《淪》、上村松園《序の舞》。
林潤一氏は、菊池芳文《小雨ふる吉野》、西村五雲《日照雨》、山口華楊《鶏頭の庭》。
野地耕一郎氏は、池大雅《竹石図》、柳原紫峰《蓮》、村上華岳《春泥》。
円山勉氏は、村上華岳《巒峯茂松》 、長谷川等伯《楓図》、雪舟《天橋立図》。
田島達也氏は、狩野山雪《籬に草花図》、円山応挙《牡丹孔雀図》、岡本神草《口紅》。
このなかで、とりわけこだわりポイントの解説が面白かったのが、野地耕一郎氏。
柳原紫峰の《蓮》はわたしは未見なのですが、朝もやに包まれた湖に浮かぶ睡蓮の花が描線を使わずに、しっとりとした水気とともに描かれていて、是非見てみたいと思った。
千總が所蔵していて、時おり千總ギャラリーに展示されるようなので、チェックしてみよう。
村上華岳の《春泥》は、華岳がぜんそくを患ってから描いたもの。通常、線を引くときは息を詰めて描かないといけないが、喘息を患った華岳にはそれができない。《春泥》に描かれた線は、華岳の呼吸に合わせて、脈動している、それがこの絵の醍醐味だと野地氏は言う。
残念ながら、この絵は個人像なので、めったに見ることができないそうだが、何かの折に出展されていたら、味わってみたいと思った。
ロビーからは鴨川が一望できる。
歌舞練場の窓から眺めた鴨川の風景 |
冬の三条大橋と春を待つ桜の木。
0 件のコメント:
コメントを投稿