2019年1月5日土曜日

京都観世会「謡初式」 2019

2019年1月1日(火)10時30分~11時40分   京都観世会館

堂本印象の老松の前には、年神様が宿った鏡餅。翁飾りに似た独特の飾りつけ。

舞囃子《高砂》片山九郎右衛門
   杉信太朗 曽和鼓堂 渡部諭 前川光範

仕舞《鶴亀》   橋本雅夫
  《屋島》   片山伸吾
  《草子洗小町》大江又三郎
  《国栖キリ》 杉浦豊彦

舞囃子《羽衣》浦田保浩
   杉市和 林大和 河村大 井上敬介

狂言小舞《雪山》茂山七五三
   地謡 茂山一門

舞囃子《猩々》河村和重
   森田保美 吉阪一郎 石井保彦 前川光長

祝言《四海波》 観世会会員一同




初詣客でにぎわう岡崎の観世会館。
早めに行って並んでいたら、能楽師さんたちが続々と楽屋に入っていく。
ほとんどの方が和装で、「とんび」というのだろうか、インバネス風の和装コート、あれってめっちゃカッコいい! 
京都の町並みにも合うし、素敵だなあと思う。
和装で颯爽と楽屋入りする能楽師さんが多いと、こちらの気分も盛り上がる。開場前からすでに舞台の予告がはじまっている気がするもの。



舞囃子《高砂》
まっさらな一年が、九郎右衛門さんの《高砂》で始まる! 

確固とした信念に貫かれた決意表明のような《高砂》だった。清流のようにみずみずしく、引き締まった舞。

それでいて、やはり《高砂》というのは、男女和合、男と女の睦み合いを賛美し、奨励する舞なのだと感じさせる。
男と女が恋に落ち、結ばれ、添い遂げる。
この単純な営みこそ、国が常緑の松のように存続し、繁茂するために欠かせない「根」であり「幹」だと、のびやかに語りかけてくる。
男女の愛を、これほど清々しく爽やかにすすめる舞も、世界で珍しいのではないだろうか。

終盤の「悪魔を祓う」力強い両ユウケン。
邪気を祓い、寄せつけない清爽さ。
港を出て、波を分けて進む船のような、御大典奉祝の年の新たな船出。



舞囃子《羽衣》
地謡が素晴らしい!
謡初式の地謡は総勢十数人の編成なのだが、大人数でも統率が取れていて、京都観世らしい謡だ。
今月の初会の《羽衣・彩色之伝》も観る予定なので、こちらも楽しみ。

元旦にはEテレで、同じく清和家元による《羽衣・彩色之伝》(銀座の観世能楽堂にて収録)が放送された。
両者を比較して、東京と京都とでは地謡・お囃子どう違うのか、注目してみたい。(シテ以外の配役は、三役の流儀も地謡もまったく異なるので東西比較に最適のなです。)




祝言《四海波》
京都観世会一同がずらりと三角形に並んだ姿は、いつもながら圧巻!

京都観世会館会報誌『能』の最新号に、金子直樹氏の「京都に惹かれるその訳は」というエッセイが掲載され、そのなかで「京都観世会の魅力の第一」として「多様性と団結力」が挙げられていた。

京都観世会の魅力のひとつが団結力というのは、よくわかる。
今年の《四海波》も、昨年の謡初式にも増して、京都観世会の団結力と一体感が強く感じられた。

それぞれの芸を高め、京都観世全体のレベルアップに欠かせない団結力。
文化芸術の中心・京都で活躍する能楽師としての自負と矜持。
ここには、京都の土壌に育まれてきた能楽集団ならではの独特の気風がある。

今年の例会はどれも能3番仕立てで、珍しい小書がついたり、大曲があったり、大人数の豪華な曲があったりと、これまで以上にパワーアップした内容だ。
年間予定を見ただけで、「京都観世会ここにあり!」という、熱い意気込みが伝わってくる。





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