2019年1月15日火曜日

能《小鍛冶》と仕舞五番~京都観世会例会

2019年1月13日(日)11時~17時45分 京都観世会館
《難波・鞨鼓出之伝》 《羽衣・彩色之伝》からのつづき

仕舞《屋島》  浦田保浩
  《野守》  杉浦豊彦
 地謡 橋本雅夫 橋本礒道 味方團 浦田親良

仕舞《老松》  片山九郎右衛門
  《東北》  井上裕久
  《鞍馬天狗》林宗一郎
 地謡 武田邦弘 牧野和夫
    橋本擴三郎 宮本茂樹
 
能《小鍛冶》シテ童子/稲荷明神 深野貴彦
 ワキ三条宗近 小林努 ワキツレ橘道成 原陸
 アイ宗近ノ下人 山口耕道
 森田保美 曽和鼓堂 河村眞之介 前川光範
 後見 深野新次郎 河村晴久
 地謡 浦田保親 越賀隆之 味方玄 
    浅井通昭 橋本光史 吉田篤史 
    松野浩行 河村和貴



東京と京都の見所の違いのひとつが、男性の着物率。女性の着物率はそう変わらないけれども、京都の見所では和装の男性が多い(初会だったからかな?)。
いわゆる旦那衆だろうか、仕事柄だろうか、それとも純粋に趣味で楽しむ方が多いのだろうか、とにかく着物をさらりと着こなしている殿方が少なくない。さすがは京の着倒れ、和服が板についている。


【仕舞五番】
名家の当主による仕舞は、いずれ菖蒲か杜若、といった風情。見応えがある。
杉浦豊彦さんの《野守》は気迫充実。今年一年に向けての意気込みが感じられる。来月例会の《源氏供養》がますます楽しみ。


九郎右衛門さんの《老松》
かぎりなく「不動」に近い、ゆっくりした動き。神さびた老松のおごそかさと、若い梢のあでやかさ。ほんの少しの動き、ほんの少しの所作のなかに、ほんのり艶のある美が宿っている。
来週の《東北》が待ち遠しい。ずっとあこがれていた九郎右衛門さんの鬘物。どうか、無事に拝見できますように。



林宗一郎さんの《鞍馬天狗》
宗一郎さんも坂口貴信さんと同じく、仕舞や舞囃子で観た時のほうが「おお、凄い!」と思うことが多い。この日の仕舞も素敵だった。

お能では、袖の扱いとか、舞台の空間認識とか、面装束を着けたうえでの表現力の自由さとか、そうした舞台経験を山ほど積まないと得られないような要素がプラスされるから、仕舞・舞囃子とのギャップは致し方ないのかもしれない。



袖の扱いといえば、この日上演された観世清和家元の《羽衣・彩色之伝》での袖の扱いが印象深かった。
それは、シテが序ノ舞の二段オロシで左袖を被いてしばし静止する際、袖が大きく前に垂れて、顔(能面)にかぶさってしまった時のことである。

通常、ほかのシテならば、被いた袖が顔(能面)の前に垂れ下がってしまっても、どうしようもできずに、そのまま静止していることが多い。

しかし清和家元は、袖のなかの左腕をグイッと勢いよく上に伸ばし、顔の前に垂れた袖を天冠の上まで高く引き上げ、美しい増の面を縁取るように袖をかぶせて、見事に、さりげなくポーズを決め直したのだった。

このリカバリーの見事さ、熟練の技に感じ入った。舞台経験が豊富でないとなかなかこうはいかない。さすがだ。

(正直言うと、袖を被いて静止している時間があまりにも長いので、長絹の袖が天冠に引っかかったのかと思ったほど。シテの腕がプルプル震えていたし。後見は気づかない様子で、こちらはハラハラしたけれど、実際のところはどうだったのだろう??)



能《小鍛冶》
最後の小鍛冶は、切能らしい盛り上がり。
深野貴彦さんの前シテの童子は神秘的で、きれいだったし、何よりもお囃子が冴えていた。
前川光範さんのバチさばきと掛け声はいつもながら精彩に富み、新年から絶好調。この方の太鼓が入ると、舞台が生き生きと躍動する。
他のお囃子ももちろんよかったし、地謡も攻めの謡で、おめでたく、華やかな舞台だった。


朝から晩までお能漬けで、豪華な初会、堪能しました。









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