2015年3月10日火曜日

第六回青翔会 《仏師》《半蔀》《三輪》《田村》


201539日 国立能楽堂 16時開演

狂言 《仏師》 すっぱ・野村太一郎 田舎者・河野佑紀 
       後見 野村万蔵

舞囃子 《半蔀》 辰巳大二郎
      小野寺竜一 岡本はる奈 佃良太郎
   地謡 宝生和英 辰巳満次郎 高橋亘
      金井賢郎 佐野弘宜

舞囃子 《三輪》 金春憲和
      栗林祐輔 曽和伊喜夫 亀井洋佑 金春國直
   地謡 井上貴覚 本田芳樹 本田布由樹
      中村昌弘 政木哲司

能  《田村》 童子/坂上田村麿 武田祥照
     ワキ矢野昌平 ワキツレ村瀬提 村瀬慧 

     アイ野村虎之介
     藤田貴寛 大村華由 柿原孝則

  後見 観世銕之丞 井上裕久
  地謡 観世芳伸 山階彌右衛門 角幸二郎 浅見重好
      関根祥丸 上田宜照 上田彰敏 木月宣行




拝見するのは1年ぶり、2回目となる第6回青翔会。
                  
(いまプログラムを開いて見てみたら、1年前の第3回青翔会は
坂口貴信さんの《小鍛冶》、浅見重好師・角幸二郎さんの《石橋》、
太鼓には観世元伯さんも入っていて、めちゃくちゃ豪華だったんですね。)

                      

今回の青翔会も以前から注目してきた若手2人がシテをされるので、
表当初から楽しみにしていました。



                  
             
 
狂言《仏師》
すっぱ(詐欺師)が仏師と仏像の一人二役を演じて田舎者を騙そうとするが、
最後は見破られ、田舎者に追いかけられるというパターン。


《仏師》には、《六地蔵》とか《金津地蔵》などの類似曲が多いので、
シテが言いよどむところが一箇所あったけれど、
野村太一郎さん、河野佑紀さんともに良かったんじゃないかな。
後見の野村万蔵さんの貫禄というか、存在感が凄かった。
   


                        

              

舞囃子《半蔀》
辰巳大二郎さんは昨年10月の東京青雲会の舞囃子《松風》で、
繊細な中ノ舞が印象的だったシテ方さん。
今回も期待に違わぬ美しい序ノ舞でした。

腰の位置を低くとり、頭の位置がまったくブレない精緻なハコビの平行移動。

中盤に見られた若干の硬さも、終盤になるにつれてなめらかに溶けてゆき、
最後に地謡前での扇を扱う際の「間」の取り方もきれい。
(ここできちんと美しい「間」の取れる方は意外と少ない。)

  
宝生和英さん地頭の地謡もすばらしく
(満次郎さんが大二郎さんに強い「気」ずっとを送っていたように感じた)、
お囃子もよかった。

                
いつも思うのだけれど、小野寺さんの笛は音階が整いすぎてフルートみたい。
佃良太郎さんはやや枯れた掛け声に味わいがあって良い大鼓方さんだ。


岡本はる奈さんはこの日は佃さんの大鼓とも息がぴったり合っていて、
チ・タ音の響きも美しく、拝見するたびに上手くなっていらっしゃると思った。





舞囃子《三輪》
金春流若宗家・憲和さんの舞を拝見するのははじめて。
地謡も含めて、節付けが観世流とはかなり違っていて、
《三輪》ではなく別の曲かと思うほど。
ある意味、新鮮でした。

                         
憲和さんの謡い方・声の質はやはり金春宗家のそれと似ていて独特です。
           
でも、よく通る、のびやかな美しい声で、聴いていて心地良い。

舞というか姿勢そのものがユニークで、背中に重心がいっているような、
能の舞としてはもっと前傾したほうが良いように最初は思ったのですが、
馴れてくるとそれほど気にならない。
                      
肩から腕のラインが角張っているのも、このシテ独自の個性なのか、
それとも金春流の芸風なのか、判断がつきにくい。
(以前、山井綱雄師の舞を拝見した時も、肩のあたりの角張りが気になったので、
金春流の芸風なのでしょうか。)

いずれにしろ、金春憲和さんの魅力は、

若殿様然とした品のある舞姿と艶のある謡声。
この年齢でこれだけ涼しい顔で悠然と舞える人はそういない。


お囃子はとても聴きごたえのある神楽。
笛の栗林さんと金春國直さんがとくによかった。
國直さん、格段に上達されて、打音の響きと撥さばきが美しい。





能《田村》
お調べを聴いていて、あっ、好い笛だなと思い、
プログラムで確認したら藤田貴寛さんでした。 納得です。

武田祥照さんは以前に舞囃子を拝見した時にキラリと光るものがあり、
20代部門で注目しているシテ方さん。

前シテは、どこか神秘的な気配のする童子の面に、
グリーンの水衣とオレンジの縫箔という目にも鮮やかな出立。
若木のような生命力あふれる立ち姿と相まって、舞台に映える。

この日のもう一人の主役であるワキの矢野昌平さんも、
最初は手が少し震えてやや緊張気味だったけれど、
ワキツレの村瀬提さん慧さんが美声で支えて、
見事に演じきっていらっしゃったと思う。
(2人の村瀬さんっててっきり御兄弟かと思っていたけれど違うんですね。
従兄弟同士?)

祥照さんは謡も素晴らしく、とくにワキとの同吟のところ
「春宵一刻価千金、花に清香、月に影」がきれいでした。
ただ、観世流と福王流の節が異なるのか、
最後のほうがちょっと合っていなかったような……。


童子と旅僧が手をとるところは、当時の稚児愛を思わせる
どこか官能的で妖しい雰囲気。

          
前半の舞グセでは地謡のヨワ吟も美しく、
シテの舞姿は、春の甘美ななまめかしさをあらわしたかのよう。

のどけき影は有明の天も花に酔へりや、面白の春べや


見所を夢見心地に酔わせながら、
童子は春風のように田村堂の内陣へと入ってゆく。

(中入)
野村虎之介さんのアイ狂言、よかったです。


後シテは、前場とは打って変わって
平太の面に法被脱下げ・半切・梨子打烏帽子という勇ましい出立。
力強いカケリの所作で、鬼神との戦いの様子を再現する。


柿原孝則さんの大鼓が気迫がこもっていて、かっこいい。
20代初めでこれだけ打てるなんて凄い!
お父様の弘和パパの年齢まであと25年もあるなんてこれからが楽しみです。
崇志グランパも幸せですね。
御子息が2人とも中堅として御活躍なさっていて、
さらにお孫さんがすでに期待の星となっていらっしゃっるなんて。

大村華由さんの小鼓も柿原さんと息が合っていて、
全体的に良いお囃子でした。


そんなわけで、
シテ方が粒ぞろいだったし、
三役もそれぞれにレベルアップされていて、
見ごたえのある公演でした。



                           

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