2020年3月27日金曜日

青山ビルと伏見ビル ~大大阪時代のモダン建築⑪

青山ビル、1921年、大林組

蔦で覆われた独特の外観が人目を引くが、それもそのはず、外壁を覆うこの蔦は、かつてのオーナー・青山喜一が甲子園の蔦を株分けして這わせたもの。
現在の蔦は2代目。

能《定家》の式子内親王の姿を建築で表現したら、こんなふうになるだろうか?

かつてここは、実業家・野田源次郎の邸宅として建てられたモダンな都市型住宅だったが、1947年に青山喜一が譲り受け、青山ビルとして生まれ変わった。



外観のデザインは大林組が得意だったスパニッシュ様式。

アーチ形の玄関には、アールヌーヴォー風の鋳造装飾が施され、アーチの上にはテラコッタ製の窓台が設けられている。

形や大きさの異なる窓がいくつも並んでいるが、個性的な中にもまとまりがあり、こちらの目を楽しませてくれる。



青山ビルの内部
玄関アーチの上の窓台と同じデザインが施された階段下のホール。
タイル張りの壁のシミが時の流れを感じさせ、「洋の詫び錆び」ともいうべき独時の味わいをかもしている。





伏見ビル(旧澤野ビル)、1923年、長田岩次郎
こちらは青山ビルのすぐ近くに建つ伏見ビル。
1923年の竣工当初、この建物は「澤野ビルディング」と呼ばれ、もとはビジネスホテルだった。
1931年に持ち主が変わって伏見ビルとなり、現在もテナントオフィスビルとして使われている。





船の舷窓を思わせる丸窓が印象的。
最上部にあしらわれた丸に十文字の幾何学的なデザインはアールデコ風。障子を思わせる格子窓とともに和風モダンでスタイリッシュな雰囲気を持つ。





上の画像からわかるように、玄関扉を抜けたエントランスホールには、梅形の手水鉢が置かれ、毎日のように華やかな花が生けられている。

ガラス越しに見えるオレンジ色の灯りとともに、現オーナーのあたたかい心配りが伝わってくる。



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