2019年5月27日月曜日

京都観世会5月例会《夕顔・山ノ端之出・法味之伝》

2019年5月26日(日)11時 京都観世会館

能《賀茂》里女/別雷神 梅田嘉宏
 里女 橋本忠樹 天女 鷲尾世志子
 室明神神職 小林努
 従者 有松遼一 岡充
 賀茂明神末社神 鈴木実
 左鴻泰弘 林大輝 河村大 井上敬介
 後見 片山九郎右衛門 大江信行
 地謡 古橋正邦 河村博重 越智隆之
    吉浪壽晃 吉田篤史 宮本茂樹
   河村和晃 谷弘之助

狂言《文荷》太郎冠者 茂山七五三
 次郎冠者 茂山宗彦 主人 網谷正美

能《夕顔・山ノ端之出・法味之伝》
 里女/夕顔 河村和重
 旅僧 江崎欽次朗→広谷和夫 
 所者 網谷正美
 杉市和 大倉源次郎 谷口正壽
 後見 大江又三郎 青木道喜
 地謡 林宗一郎 味方團 浦部幸裕
   田茂井廣道 松野浩行 河村和貴
   河村浩太郎 浦田親良

仕舞《淡路》  浅井通昭
  《班女アト》橋本擴三郎
  《大江山》 片山伸吾

能《藤戸・蹉跎之伝》橋本雅夫
 佐々木盛綱 殿田健吉
 従者 則久英志 梅村昌功
 下人 茂山千三郎→茂山逸平
 森田保美 成田達志 山本哲也
 後見 井上裕久 杉浦豊彦
 地謡 河村晴道 味方玄 浦田保親
   分林道治 深野貴彦 大江泰正
   大江広祐 樹下千慧





先週から風邪でダウンしてしまい、行きたかった公演にも行けず。。。p(・・,*)グスン
九郎右衛門さんの《田村》と《船弁慶》、観たかったなぁ。
まっ、でも、こんなこともあるよね。
病み上がりなので、感想も軽めです。


能《賀茂》は中堅初期の方々による好演で、滔々と流れる京都の清流を謡いあげた、この時期にぴったりの清々しい一番。



能《夕顔・山ノ端之出・法味之伝》
この日、いちばんよかった舞台。
先日の姫路城薪能でワキの江崎欽次朗さんが倒れたとうかがい、心配していた。この日得た情報では、もうほとんど回復していて、ご本人は「出る気満々」だったが、周囲が止めたため大事をとって休演されたそうである。
回復されたと聞き、ひと安心。

薪能って、倒れたり亡くなったりする方がけっこういらっしゃるから、演者にとっては負担が重く、危険なイベントなのかもしれない。天候・気候に左右されやすいし、ストレスや心労も屋内舞台での演能よりもはるかに大きいのではないだろうか。。。


代演でご出演された広谷和夫さんはワキツレでしか拝見したことがなく、ワキで観るのははじめて。謡の表現力がとてもいい。とくに道行。紫野の雲林院から賀茂社、糺の森、在原業平が「月やあらぬ春や昔の春ならぬ」と詠んだ五条通、そしてあばら家へと続く、京の名所の数々がそれぞれの物語とともに、次々と浮かび上がってくる。


お囃子も地謡も、《夕顔》の舞台は音楽性がすばらしかった。


お囃子は杉市和、大倉源次郎、谷口正壽という最強の布陣。
源次郎さんの繊細な小鼓と、谷口さんの抒情性豊かな掛け声の響き。儚げに響く杉市和さんの送り笛が、中入するシテの寂しげな後姿と響き合い、暗い影を彩る。
薄幸の女性を描く音の世界がひたひたと胸に沁みてくる。


「山ノ橋之出」の小書ゆえ、前場で大小前に藁屋が出される(シテは藁屋のなかから「山の端の~」と謡い出す)。

藁屋の柱や屋根に巻きついた夕顔の蔓が、男性に依存して生きるしかなかったヒロインの人生を暗示するかのよう。

光源氏に必死で巻きつこうとしたその蔓は、嫉妬に狂ったもう一人の愛人の生霊によって、無残にも引きちぎられ、漆黒の闇のなかで露と消えた。


シテが演じる夕顔からは、「自分の身に何が起こったのか分からないまま、あの世に葬り去られた」若い女の、行き場を失い、あの世とこの世のざまに漂う途方に暮れた雰囲気が感じられた。

シテの居グセの姿がこのうえなく美しい。
不動のまま、ただそこにいるだけで、地謡と囃子の音の世界をみずからの姿に取り込み、なよなよとした、つかみどころのない、男の保護欲をかきたてる夕顔という女性像をつくりあげ、観客に示している。

シテは高齢のため足腰は衰えているが、それをカバーする最高の戦略が「動かないこと」。地謡と囃子の音を容れる「美しい器」になることで、「動くこと」以上のものを表現していた。

「せぬならでは手立てあるまじ━━」
この世阿弥の言葉を体現し、「花」を感じさせる演者と舞台に出逢えるよろこび。



「法味之伝」の小書のため、序ノ舞ではなく、「引かれてかかる身となれども」のあとにイロエが入り、イロエの最後でワキと向き合い、二人で合掌。
このあと、シテ「御僧の今の弔いを受けて」となる。
ワキとの合掌の型と、シテの解脱の経緯がすんなりつながる演出だ。

ここから、シテの表情が明らかに変わった。
雲が晴れて、青空が広がったように冴え冴えとしている。
夕顔の解脱の瞬間。
見事だった。



能《藤戸・蹉跎之伝》へつづく



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