2018年8月7日火曜日

七曜会祖先祭

2018年8月5日(日)最高気温39.5℃ 京都観世会館

連調《菊慈童》辰巳大二郎

舞囃子《融・二段返・十三段之舞》 味方玄
   《西行桜》        河村晴道
   《乱》          杉浦豊彦
   《わたつみ》(復曲能《わたつみ》片山伸吾改作・補綴より)
      シテ 片山伸吾 ツレ 味方玄 田茂井廣道

居囃子《養老》、《右近》、《海士》、《高砂》、《葛城》、《現在七面》、《枕慈童・盤渉》、《国栖・白頭・天地之声》、《絵馬》、《山姥・白頭》、《小鍛冶・別習黒頭》、《当麻・乏佐之走》、《誓願寺》、《百万》、《是界》

素囃子《鶴之舞》(土岐善麿新作能《鶴》より)

そのほか、番外独鼓、独鼓、一調、一調一管、別習一調など



さすがは前川光長師・光範さんの御社中だけあって、小書付きや復曲能、新作能など、難しい曲が多いのにもかかわらず、みなさん、見事に演奏されていて、バチさばきも見とれるほどきれい。

脂の乗った中堅シテ方・囃子方さんたちが、芸を競い合った舞台は、どれも見応え満点。京都の猛暑が吹っ飛ぶほど楽しくて、充実した会でした。




舞囃子《融・二段返・十三段之舞》 味方玄
ぜったいに凄い舞台になるはず!、と確信していたシズカさんの十三段之舞。
これぞ、味方玄の真骨頂。先日拝見した《三井寺》よりも、こういう小書のついた《融》のほうが玄さんの魅力がダイレクトに伝わってくる気がする。

「舞囃子」とあるけれど、これはもう、半能の袴能ですね。

二段返の小書つきなので、半幕で床几に掛かった姿を見せてから、あらためて登場する。

扇を投げて、「あら面白や曲水の盃」と謡うところ、水に浮かんだ盃がほんとうに流れてくるよう。盃に見立てた扇がクルクルと優雅な曲線を描きながら、目付柱の前にきれいに着地した。
頭に描いたイメージをそのまま再現する味方玄さんならではの技術と身体能力が、これからはじまる舞でもいかんなく発揮されていた。

黄鐘早舞五段のあと、達拝で一区切りをつけてから、盤渉早舞五段へ。
その後、橋掛りへ行き、二の松あたりで、シテはくるくる、くるくると、流麗なリズムで旋回する。時をさかのぼり、記憶をたぐるような、抒情的なリズムだ。

大小太鼓ナガシで舞台に戻り、急ノ舞三段となる。
ものすごいスピードなのに、身体が少しもブレず、息がまったく上がらない。超人的といってもいいくらい緻密で正確無比な急ノ舞。

舞の後、さらに一の松に流れて、余韻のある風情が漂う。面・装束をつけていないぶん、かえって想像力を掻き立てる。

社中の方の太鼓もすばらしく、舞台全体がスタンディングオベーションしたいくらいに見事だった。


舞囃子《西行桜》河村晴道
これも配役がよく考えられている。《西行桜》は品の良い河村晴道さんにぴったり。
前にも書いたけれど、故・林喜右衛門師の芸風と品格をとてもよく受け継いでいらして、いかにも京観世らしい典雅な舞。生身感とか肉体を感じさせない清潔感があるところも、閑寂な植物の精を思わせる。

河村定期研能会の《誓願寺》はぜったいに観にいきたい!


舞囃子《乱》杉浦豊彦
杉浦豊彦さんの舞ははじめて拝見する。宗家系に近い芸風をもつ実力者ですね。硬質で端正な舞姿だ。




舞囃子《わたつみ》(復曲能《わたつみ》片山伸吾改作・補綴より)
片山伸吾さんの「能にしたしむ会」の宣伝も兼ねた、一石二鳥の舞囃子。

こちらも、半能の袴能形式。
復曲能《わたつみ》は、玄界灘の志賀島にある志賀海神社に伝わる社伝謡曲を復曲・改作したもの。後シテ・ツレの三人は、安曇族の祖神で、海の底・中・表を司る「綿津見(わたつみ)三神」を演じるという。

《絵馬》《白髭》のような雰囲気の曲なので、実際の能の上演では、大小前に社殿の作り物が出るのかもしれない。

まず、シテが〈神舞〉のさわり(?)を舞ったあと、大小前で床几にかかり、
次に、ツレの田茂井さんが〈中ノ舞(天女ノ舞?)〉を途中まで舞い、オロシで玄さんが立ち上がり、ツレ二人が向き合う。
さらに、玄さんが〈急ノ舞〉を舞ったのち、シテが床几から立ちあがり、〈楽〉を舞う。

最後に、《高砂》の節付で「千秋楽は袖を返し、万歳楽には~」と地謡が謡うなか、シテ・ツレ三人の相舞となる。

舞事がかなり凝っていて変化に富み、能では間狂言で細男(せいのお)の舞が舞われるらしい。
以前、國學院大學で拝見した、安曇磯良の故事にちなんだツクシ舞を思い出して、たいへん興味深かった。



素囃子《鶴之舞》(土岐善麿新作能《鶴》より)
あの喜多流の新作能《鶴》のお囃子を、京都で聴けるとは!!

囃子の作曲には藤田大五郎、金春惣右衛門が携わり、武蔵野大学で拝見した《鶴》でも笛は一噌流(藤田貴寛さん)だったけれど、この日の笛は森田流の左鴻泰弘さん。
なので、曲の印象は若干異なるが、長い袖を翻して鶴之舞を舞う佐々木多門さんの姿がよみがえり、とても懐かしく感じられた。



居囃子《小鍛冶・別習黒頭》
今年二月の京都能楽囃子方同明会で上演された《小鍛冶・別習黒頭》の居囃子。
登場楽の来序がめちゃくちゃかっこいい! 
同明会での演能はさぞかし素晴らしかったことだろう。頭の中でイメージを膨らませながら拝聴した。


どの舞台も濃厚かつ高密度、眼福・耳福でした。







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