2016年12月26日月曜日

幻想図書館 ~ 東洋文庫ミュージアム

2016年12月25日(日) 会期終了日      東洋文庫ミュージアム

リオデジャネイロの幻想図書館を思わせるモリソン書庫
 

かねてから行きたかった東洋文庫ミュージアム。
この日は「本のなかの江戸美術」展最終日でしたが、どうにか滑り込みで間に合いました。


東洋関連の稀覯本の宝庫
紙の本好きにとってはパラダイス!

オーストラリアのジャーナリスト、G・E・モリソン(1862-1920年)の2万4000冊の蔵書を、
岩崎久彌が1917年に一括購入したコレクション、それがモリソン書庫。


子牛皮や羊皮表紙の古書は、どうしてこんなに美しいのだろう!
見ているだけでため息……。

本を作った人、所蔵した人の、書物への愛おしさが伝わってくるよう。

本自体に直接触れることはできないのですが、『東方見聞録』(1496年)、
『天正遣欧使節記』(1586年)、『オルガンティーノ神父書簡集』(1597年)など、
貴重な書物をガラス越しに見ることができます。




マアチ著『伊達正宗遣使録』(1617年)

 
↑ モリソン書庫には、支倉常長の欧州での活動を記録した『伊達正宗遣使録』も。

著者のマアチは、通訳として常長に同行した人らしい。
挿絵に描かれているのは、着物姿の支倉常長。
襟元など、ちょっと和洋折衷っぽい。



↓ ここからは企画展『本のなかの江戸美術』。

書物として綴じられたことで紫外線や外気から守られていたため、
挿絵に描かれた肉筆画・浮世絵の保存状態が素晴しく、色彩も鮮やかでした。

春画などの一部をのぞいて撮影可能だったので、
気に入ったものを載せていきます。



『正写相生源氏』1851年、歌川国貞・画
↑源氏物語をパロティー化した春本。

春本とはいえ、越前福井藩主の依頼により制作されたため非常に豪華で、
技術的にも大変凝った作りになっており、高価な絵具が使われています。

この画でも桜の花にはエンボス加工でおしべがあらわされ、
双六盤の側面には螺鈿細工を模した貝殻があしらわれていました。

色彩も、茶色や鼠色、苔色などの渋い色が使われ、
そこに赤や青、黄色などのビビッドカラーを差し色に使うのが江戸風ですね。






曲亭馬琴『南総里見八犬伝』

↑ 犬と人との異類婚というのは今考えても奇抜!
29年もの歳月をかけて描かれたこの長大なベストセラーの挿絵は、
おもに北斎門下の柳川重信(一代目と二代目)が担当したそうですが、
後篇の一部は英泉や国貞も手がけたといいます。

八房と伏姫を描いたこの場面にはなんとも妖しいエロスが漂っていて、
個人的にはいちばんのお気に入り。





歌川広重『六十余州名所図会・加賀』、1853-65年

↑ 『近江八景』や『名所江戸百景』(初擦)、『五十三次名所図会』など、
広重作品が質・量ともに充実していて、どれも素晴らしかったのですが、
いちばん好きなのが、この『六十余州名所図会・加賀』。


静かな夜の海。
漁船の篝火や、浮島の民家から洩れる灯り。
海や山の穏やかさと、人の営みのあたたかさ。
夜はかぎりなく、優しい――。

広重の名所絵にはどこか詩情が漂います。



歌川広重『五十三次名所図会・沼津』、1855年


↑ 計算し尽くされた無駄のない構図。
白抜きされた雪の表現の見事さ。

雪景色に映える二人の人物。
くるぶしまで雪に埋もれながら、彼らはどこへ行くのだろう?
その背中が語る物語に耳を澄ますように、絵のなかに惹き込まれていく。




『たまも』、江戸初期
↑ 《殺生石》でお馴染みの九尾狐・玉藻前の物語。
江戸初期らしい素朴さが魅力の一枚。

三浦・上総の両介が「刈り装束にて数万騎那須野を取りこめて草を分つて狩りけるに」
の場面ですね。

野干は一応二股の尾になっているけれど、愛嬌があってぜんぜん怖くない。
(シカとワンちゃんを足して二で割ったような動物。)

江戸中期~幕末になるにつれて妖しさが際立つ狐が描かれるようになるけれど、
その出発点が、この稚拙美のお手本のような愛らしい狐だったというのが面白い。




春画のコーナーだけR-18指定で、撮影も禁止。
とはいえ、観世流謡本や幸若舞の絵本版、普通のきれいな浮世絵など、
人畜無害の名品も多く、別に成人向けでもないような気もしたけれど。


艶本のなかで特に素晴らしかったのが、渓斎英泉『春野薄雪』(1822年)の「女郎花塚」。
タイトル通り、能《女郎花》のもとになっている女郎花塚伝説に取材した作品。

女郎花の野原で情を交わす男女が描かれているのだが、
その着物の文様といい、野原の情景といい、細部まで緻密に描かれてまことに美しい。

そして何よりも心を捉えるのが、激しく抱き合う男女の姿。

亡霊となった男女がほんの束の間、生身の形を借りて愛を交わしているような、
せつなさ、哀れさ、儚さが漂っている。

男の視線は熱く、女の目からは今にも涙がこぼれそう。

しかし、こちらに向けられた彼女の視線は、どこか醒めている。
女の本質、心の動きを描いた英泉の絵は春画の名作であり、
彼自身の作品のなかでも屈指の傑作だった。





ガラスの向こうには、中庭とオリエンタルカフェ
カフェではピアノの生演奏もあり、良い雰囲気





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