2019年3月31日日曜日

桜三昧、春三昧の大槻能楽堂

2019年3月24・31日  大槻能楽堂
自宅周辺の桜は5~8分咲き

【長山皐諷会】(3月24日)
(番外仕舞《笹之段》長山禮三郎

番外仕舞《白楽天》  観世銕之丞
    《杜若キリ》 観世喜之

番外仕舞《屋島》   長山耕三
    《草子洗小町》観世喜正
    《鞍馬天狗》 長山桂三

九皐会より 鈴木啓吾 小島英明 中所宜夫
銕仙会より 浅見真州 浅見慈一

お囃子 
笛 斉藤敦、(野口亮改メ)槌矢亮
小鼓 上田敦史、清水皓祐
大鼓 山本哲也、山本寿弥 
太鼓 上田悟



【寺澤好聲会】(3月31日)
番外仕舞《実盛》  大槻文蔵
    《網之段》 井上裕久

番外舞囃子《歌占》 寺澤拓海
     《巻絹》 寺澤杏海
斉藤敦 久田陽春子 山本哲也 中田弘美

近所の枝垂れ桜

春の陽気に誘われて、二週続けて大槻能楽堂へ。

長山禮三郎さん・耕三さんのお社中会では、銕仙会・九皐会の方々が東京からお見えになっていて、懐かしい。そうそう、九皐会の謡ってこんな感じだったよね。とくに観世喜正さんが地頭になると、ちょっと鼻にかかったようなビブラートの効いた謡い方になって、特徴的。

番外仕舞も充実。
銕之丞さん、年末年始の《道成寺》で酷評されていたからちょっと心配だったけれど、スケールの大きな《白楽天》で、住吉明神の品格と威厳を感じさせた。羽根扇から神風が物凄い勢いで吹いてくるようだった。

銕之丞さんによる《熊野・読次之伝・村雨留・墨次之伝》(小書てんこ盛り)は四月観世会例会で拝見する予定。淳夫さんの朝顔も楽しみ。



そして、白眉は長山桂三さん。
やっぱりうまい! 情景がありありと立ち現れる! シテのお辞儀の先に、花盛りの鞍馬山に佇む牛若丸の姿が見えてくる。



今週訪れた寺澤忠芳さん、幸裕さんのお社中会では、京都から井上裕久さんをはじめ門下の 吉浪壽晃さん、浦部幸裕さん、吉田篤史さんたちも参加。井上一門の謡も好きだし、寺澤幸弘さんの謡も見事なので、この日の地謡は素晴らしかった。


大槻文蔵師の《実盛》は「老いの美学」を具現化した舞。
文蔵師の実盛は若さにしがみつくというよりも、美しく、華々しく老いていく。使い込まれたアンティーク家具のように黒光りのする美しい姿と芸。みずからの美学を、ここまで完璧に身体と芸で表現した人がいるだろうか。


井上裕久さんの《網之段》。
このあいだ、九郎右衛門さんの《網之段》を拝見したばかりだけれど、井上さんの舞もよかった。ヒラキで両腕をふんわりと広げるたびに、桜の花がほころび、ハラハラと花びらが散ってゆく。顔(面)を左右に切るだけで、澄んだ水に国栖魚たちがシュシュッと俊敏に泳ぐ姿が見える。桜が咲き誇り、水面に花びらが浮かぶ。母の狂おしい歎きと、狂おしく散る桜。さすがだった。
6月の井上定期能の《九世戸》、都合がつけば観にいきたい。


それからびっくりしたのが、寺澤拓海さんの舞囃子《歌占》。
めっちゃうまいやん。過去に能《熊坂》や舞囃子《六浦》を拝見したものの、そのときはときに印象に残らなかった。でも、うまい方なんですね。まだ十代くらい?
謡はお父様に似て、とてもよく通る素敵な謡。舞にもキレがあり、人の目を惹きつける魅力があった。ちょっと注目。





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