2018年9月26日水曜日

京都観世会九月例会《半蔀》《雷電・替装束》

2018年9月23日(日) 11時~16時30分 京都観世会館
《玄象・初能之式》からのつづき

能《半蔀》シテ里女/夕顔 林宗一郎
   ワキ僧 江崎正左衛門 アイ所ノ者 善竹隆平
   杉市和 竹村英雄 谷口正壽
   後見 橋本雅夫 河村浩太郎
   地謡 河村晴道 味方玄 片山伸吾 浦部幸裕
      松野浩行 宮本茂樹 河村和晃 樹下千慧

仕舞《錦木クセ》 浦田保親
  《鐘之段》  河村和重
  《項羽》   橋本光史
   地謡 杉浦豊彦 河村博重 河村晴久 梅田嘉宏

能《雷電・替装束》シテ菅丞相/雷神 橋本忠樹
    ワキ延暦寺座主 小林努 従僧 原陸 岡充
    アイ能力 上吉川徹
    森田保美 曽和鼓堂 石井保彦 井上敬介
    後見 青木道喜 橋本光史
    地謡 分林道治  吉浪壽晃 浅井通昭 味方團
       深野貴彦 河村和貴 大江広祐 浦田親良



《玄象》のあとの能二番&仕舞もよかった! 京都観世は若手後期から中堅が充実していて、見応え十分。


能《半蔀》
シテの登場は、アシライ出。谷口正壽さんの大鼓が、いつもながら音色・掛け声ともに素晴らしい。いま、中堅ではいちばん好きな大鼓方さんかもしれない。

シテの出がフラフワーッと現われたような雰囲気で、なんとも素敵だった。

歌川豊春の肉筆浮世絵に《見立反魂香図》という、ケシの生け花の前に置かれた香炉の煙から美しい女の幽霊が現れる作品があるけれど、ちょうどあの絵のように、生けられた花とも、お香の煙ともつかないところから、ふわっと、おぼろげに現れたような、精妙なハコビ。

送り笛に送られながらの中入の時も、美しいハコビが運んでいくその姿が、いかにも悲しげで、儚げで、夕顔という女性のすべてがそこに集約されていた。

シテの艶のある謡と、河村晴道さん率いるいかにも林一門らしい繊細な地謡が、光源氏と夕顔の印象的な出会いのシーンを描写して、舞台は序ノ舞へ。

最後は、青みがかったスモークホワイトの長絹と白々と明けゆく東雲が溶け合って、シテは半蔀のなかへ消えていった。



仕舞三番
橋本光史さんははじめて拝見する。もう少しじっくり観てみたい。
浦田保親さんは要チェック! 
4月にこちらに来てから九郎右衛門さん一辺倒だった気がするから、来年はもう少し視野を広げて、浦田定期能をはじめ、いろんな定期能も観てみよう。



能《雷電・替装束》
こちらも、見事なシテの出。
シテは、いつの間にか現われたという感じで、気がつけば、一の松まで出てきていて、「一本、やられた!」という感じ(笑)。

前シテの出立は「替装束」なので、面は童子or慈童だろうか。
美童の顔立ちなのに、老成した雰囲気で、じつに妖しげ。見惚れるほどきれいな姿。

「重ねて扉を敲きけり」で、閉じた扇でシテ柱を打つ所作。
お辞儀をする所作や、謡の息遣い、煙遁の術のようにタ―ッと走り去る中入など、ところどころに、師匠である九郎右衛門さんの芸風を思わせる。

間狂言の立シャベリのあと、一畳台が運び込まれ、後シテ登場。

雷神の面は、顰(シカミ)。怒りを表すように真っ赤な赤頭をつけているが、後頭部の一房だけが白くて、ふわふわしたキツネのしっぽのよう。
《賀茂・素働》の後シテと同じ、金ぴか&ジグザグの稲妻アクセサリーを赤頭から垂らしている。
なんとなく、キュートでおちゃめ、遊び心あふれる出立だ。

最後はワキの小林努さんとの一畳台でのバトルで(《葵上》のときも思ったけれど、小林努さんは数珠揉みがうまい!)見所を沸かせ、華やかな会にふさわしい締めくくり。
森田保美さんの笛もよかった。


観客もそれぞれ満足げな表情で、能楽堂をあとにしていた。









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