2016年9月3日(土) 14時~17時15分 曇りのち雨 喜多能楽堂
お話 柳桜をこきまぜて 金子直樹
狂言《鐘の音》 シテ 山本則俊 アド 山本泰太郎 山本則重
能《遊行柳》 老人/朽木の柳の精 香川靖嗣
ワキ 遊行上人 宝生欣哉
ワキツレ 大日方寛 御厨誠吾
アイ 里人 山本東次郎
一噌幸弘 鵜澤洋太郎 國川純 観世元伯
後見 塩津哲生 中村邦生
地謡 友枝昭世 粟谷能夫 粟谷明生 長島茂
金子敬一郎 狩野了一 友枝雄人 大島輝久
働キ 友枝真也 塩津圭介
今年7月の喜香会・番外仕舞《羽衣キリ》で初めて拝見した香川靖嗣師の舞。
仕舞冒頭で立ち上がったカマエの瞬間から、「おおっ!これは!」と、
心のなかで前のめりになり、そのまま目が吸いついたように離せない。
終了後、天女に魂を抜き取られたように、ポワンとなってしまった。
幸せな出会いと感動!
そんなわけで香川靖嗣師の《遊行柳》、楽しみにしていました。
(太鼓も1か月ぶりの元伯さんだし。禁断症状が出ていたから嬉しい!)
まずは、金子直樹先生のお話「柳桜をこきまぜて」から。
ごく普通の初歩的な解説なのだけど、語り口がソフトで癒し系。
開演前にロビーでおやつを食べたばかりなので、心地良い眠気に誘われる。
朗読CD向けの声と話し方。
以前拝見した時も感じたけれど、
喜多流の解説って能舞台に上がらずに、脇柱前の見所で話すのですね。
神聖な能舞台に対する敬意が感じられて好感が持てる。
狂言《鐘の音》
初めて拝見する狂言。
主人が「(刀の)付け金の値」と言ったのを、太郎冠者が「撞き鐘の音」と聞きちがえて、鎌倉の寺々の鐘を撞き、その音を聴いてまわるというお話。
シテの太郎冠者は、最近わたしが注目している山本則俊さん。
東次郎さんが太陽だとすれば、則俊さんは月のような存在。
まばゆい華やかさはないけれど、
奥座敷の暗がりで底光りのする金蒔絵のような陰翳がこの方にはある。
(by『陰翳礼讃』)
《月見座頭》のような作品ではそれが生きてくる。
この日の《鐘の音》では、諸寺の鐘を撞いてまわった太郎冠者が、最後に訪れた建長寺で鐘を撞きながら、鐘の音を擬音で表現するのが見事。
「ジャンモンモ~ン」と、鐘の振動や音の反響、ドップラー効果をあらわす声の強弱・高低・抑揚が素晴らしかった。
好きだな、山本家の噛めば噛むほど味が出る狂言。
第十一回 香川靖嗣の会~秋 能《遊行柳》につづく
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