2016年3月26日(土) 10時~17時 矢来能楽堂
番外仕舞《猩々》 林喜右衛門
地謡 林宗一郎 河村晴久 河村晴道 味方團
田茂井廣道 松野浩行 河村浩太郎 樹下千慧
(ほかに仕舞、素謡、独吟、独調など盛りだくさん)
2時ごろの仕舞《定家》から拝見しました。
こういう社中会は東京で林一門の芸を拝見できる貴重な機会。
社中会にうかがうのはこれで3度目くらいなので、
ようやく門下の方々のお顔とお名前が一致してきたかも。
(人の顔と名前を覚えるのが不得手なのです……。)
リニューアルした矢来は初めて。座席のあいだが広くなってスッキリ。
こども教室の発表もあってチビッコたちが元気に走り回っていたのですが、わたしの席の前をお子さんたちが追いかけっこをしながら通り抜けても、こちらが足先をひょいと座席の下に引っ込めれば、ぶつかることなくスルリと通れるくらい。
矢来のシックでレトロな雰囲気はそのままで心地良く鑑賞できるので、うまく設計されているなーと感心したものです。
で、肝心の社中会。
社中の方々、皆さんレベルが高くて、曲に集中しつつ楽しみながら舞っていらっしゃるのが伝わってきました。
そして何よりも、林一門の地謡が味わい深い。
矢来なので音響の良さも相まって、その清澄で華やかな謡いに
うっとりと聴き惚れる、聴き惚れる……。
同じ京観世でも、片山家とは少し趣きが異なるのですね。
幽雪師時代の片山家の謡は存じ上げないのですが、
当代九郎右衛門さんの謡はどちらかというと幽雪師よりも、
(CDなどで聴く)八世銕之丞の謡いに近いようにわたしには感じられます。
それに九郎右衛門さんは東京で地謡に入る機会も多いので、
東京観世流の謡が大分混じっているように思うのですが、
林一門の謡は、わたしがイメージする「ザ・京観世」の謡い。
祇園白川の宵桜、水面に花びらがはらはらと舞う風情なのです。
(あくまで京都の観世流のことをあまり知らない人間の独断と偏見ですので、
トンチンカンな感想でもご容赦を。)
そんなわけで林一門の香しい謡を存分に堪能したあとは、
お待ちかねの喜右衛門師の番外仕舞。
肩の力が抜けた、洗練の極みのような舞姿はどこか万三郎師を思わせる。
もちろんそれぞれ芸風は異なるけれど、
喜右衛門師も万三郎師と同様、
感情を過剰に表現したり、物語を説明的に演じたりするようなクドさがない。
純度の高い抽象的な舞。
世阿弥のいう、閑花風に入る芸境といえばいいのか。
銀の椀に雪を積む、白雪のような輝き。
喜右衛門師のお能は拝見したことがないので、ぜひ観てみたい。
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