2015年1月14日水曜日

宝生会月並能1月公演 Part2 

狂言《三本柱》は囃子が入ってシャギリ留で終わる、ほのぼのとした舞台だった。


能 《鶴亀・曲入》
真ノ来序の囃子で、大臣・従臣とともに皇帝が登場。



三島元太郎先生が広大な宮殿に鳴り響く銅鑼のような金属的で重々しい打音を奏で、
一噌庸二師の笛のうねりが、大陸風の荘厳な雰囲気を醸し出す。


 

唐冠に袷狩衣姿の武田孝史師。
この人ほど直面の皇帝役が似合う人もそういないと思う。
まさに、はまり役。
簡易の引立大宮も、シテが座っただけで龍の彫刻が施された絢爛豪華な玉座に変貌する。


この日は「曲入(くせいり)」という小書付きなので、クリ・サシ・クセが挿入され、
シテはクセで引立大宮から一旦出て、舞を舞う。

舞い終わってシテが引立大宮に戻ると、
池のほとりにいた鶴亀に舞を舞わせることになり、鶴亀役の子方さん2人が登場。
この2人が背格好も同じくらいで、とっても可愛い!!
2人の相舞(中ノ舞)は短縮ヴァージョンだったけれど、
子方さんたちが出てくると新春らしい華やいだ舞台になる。


興に乗った皇帝も再び正中に出て、国土繁栄を願い「楽」を舞う。
武田師の「楽」には優雅で悠然とした趣があり、王者の威厳と風格がにじみ出ている。

お正月らしい祝言性に満ちた良い舞台でした。




能《東北》
面は宝生流らしい節木増。

この女面はほんとうに不思議な面で、正面から見ると現代的な美女。
左右が微妙に違っていて、斜め右から見るとやや古風な顔立ち。
左から見ると、目の焦点の定まらない精神の不安定な表情になる。
照明の加減や顔の角度でも変わるため、血の通った生身の女のように見える。
前シテ・後シテに同じ面が使われたけど、
装束を変えただけで顔(面)映りが変化し、まったく別の面のように思えた。

この日、九皐会と掛け持ちの松田さんの笛とワキの森常好師の謡にうっとり聞き入る。
節木増は目の保養、笛の音とワキの謡は耳の御馳走。


ところで先日、
国立能楽堂に行った際に公演記録《東北》(シテ三川淳雄、1987年)をデジタルライブラリーで観た。
シテの姿は凛然と美しく、おそらく全盛期だった中谷明師の笛も最高。
そして何といっても、謡がたまらない!
この頃の宝生流は「謡宝生」の名の通り、惚れ惚れするような艶やかな謡だったのだ、
と当時の能楽界を知らない私はちょっと感動。
特に最後の「色こそ見えね、香やは隠るる香やは隠るる」「今はこれまでぞ華は根に、鳥は旧巣に帰るぞとて、方丈のともし火を、火宅とやなほ人は見ん……」の、宝生流独特の謡の節が美酒のような芳醇な香りを添えていた。

あの頃の宝生流はどこ行ったんだ?と思うけれど、
今の宝生流でも中堅や若手の中には謡の上手い人も少なくないし、
宗家和英さんが地頭に入った地謡はとても好き。
「謡宝生」復活の兆しは十分にある。 今後に期待します!







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